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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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190.さらなる進化

 快進撃を続ける王国軍は次々と相手の負傷兵を吸収して大きくなっていった。
 もともとが同じ国の国民である、そしてカケルのしかけで国王と聖剣という二つの大義名分を持った軍である。
 兵達はほとんどなんの抵抗もなく、すんなりと王国軍に編入された。

 一部では交戦する前から白旗を振って降るなどもあった。
 やがて双方の兵力が逆転する。王国軍の兵力が公爵軍を上回った。

 この頃になると、もはやセレーネ隊の戦いだけで交戦の勝敗が決するような規模ではなくなった。
 セレーネは相変わらず勇戦していたが、それだけになった。

 戦局は、セレーネの成長よりも早く、坂道を転がり落ちる雪玉のように膨らんで、クライマックスへ向かって進んでいった。

     ☆

「ショウ、ちょっといい?」

 野営の陣地、魔法コテージの中。
 ヘネレーに次の戦いの作戦を聞いてるときに、セレーネが訪ねてきた。

 ドアを開けて中に入れてやった――がどうも様子がおかしい。
 いつになく沈んだ表情をしてる。

「どうした」
「あの……その……」
「言いたい事があったら遠慮なくいえ。だめならだめって言ってやるから」
「そ、そうね。あのねショウ、ショウがあたしに使ってくれたあの傷を癒やす玉」
「魔法の玉か」
「うん、それ、一つもらえないかな」
「別にいいけど……怪我でもしたのか?」

 セレーネを見る、特に怪我をしている様には見えない。
 というかネオラには常に魔法の玉を預けてる、セレーネが怪我をしたらネオラが使うはずだ。

 そうじゃなくて、おれに直接頼みにきた。
 なんかあるな。

「つ、使いたい人がいるの。助けたい人が!」
「ふむ」
(どうする?)

 エレノアが聞く、おれは考えた。
 セレーネが望むなら魔法の玉くらい別にいくらでもいいんだが、彼女がこうして頼んでくる事態に興味がある。

「わかった、一つでたりるか?」
「うん! ありがとうショウ!」

 セレーネは大喜びで――そしてホッとした顔で魔法の玉を受け取って、魔法コテージから出た。
 おれはヘネレーをその場に待たせて、オーラで見えない様に身を隠して、セレーネの後をつけた。

 だいぶ兵が増えた陣地の中を進むセレーネ、両手で大事そうに魔法の玉を抱えている。

「姫様! どこに行くんですか? 護衛します」
「姫様夜は寒いです、上着を」
「姫様――」

 進むセレーネ、途中で兵達に次々と話しかけられた。
 全員が親しげに、そしてあきらかに尊敬してる感じで彼女に話しかけた。

(だいぶ慕われたようだな)
「いいことだ、この先の事を考えれば兵、そして民に慕われてた方が絶対にいい」
(嫉妬はしないのか?)
「こんな事で嫉妬してどうする」
(ふむ。そういえば屋敷の近くに住んでる少年がひかりに熱烈な視線をおくっているようだが)
「……あとでそいつの名前を顔を教えろ」

 エレノアが「くくく」と笑った。
 そのままセレーネの後をつけていくと、あるテントにやってきた。

 セレーネと一緒にテントの中に入った。
 何人もの負傷兵がいる。大半が軽傷者で手当てをしてもらってて、セレーネはそいつらをスルーして、一直線に一番奥に向かった。

 そこに一人の重傷者がいた。
 地面に横たわってて、胸が不規則に上下して、息が荒い。

 兵を見つめるセレーネに、軍医がやってきて、横から声をかけた。

「姫様」
「かれはどうなの?」
「……」

 軍医は首を振った、だいぶよくないのか。

「姫様がご無事なのです、それだけで身を挺した彼は報われるでしょう」

(ふむ、どうやら彼女をかばって負傷した兵らしいな)
「そういえば今日、セレーネ隊の撤退が遅れたっけ」
(いつもの突撃で突出しすぎて、結果的に孤立したはずだ)
「その時にかばって怪我したって事か」
(そろそろ彼女の動かし方を改めねばな)
「そうだな」

 セレーネは負傷した兵の元でひざまづいた、そしてさっきから家宝の如く大事に抱えている魔法の玉を兵の胸に押し当てる。

「姫様! 血で汚れます――」

 軍医は止めたが、魔法の玉が発動した。
 癒やしの光が重傷の兵を包み込んで、テントの中にあふれた。

 最初にあったときと違って、いい顔をするセレーネの表情に満足しつつ。
 おれは兵士が治癒されていくのを尻目に、姿を隠したまま密かにテントを離れた。

     ☆

 翌日、王国軍は編成を変えてから出発した。
 セレーネ隊が単独で突出しないように、それでいて両軍が交戦したとき「王女と聖剣」が敵軍からも見える様。
 そうするように編成を変えてから、次の街に向かって軍をすすめた。

 そうして進んでいくセレーネ隊に、先行した斥候が慌てて飛んで来た。

「大変です姫様!」
「どうしたの?」
「エバルが! エバルが燃えています!」
「なんだって!」

 驚愕するセレーネ、彼女は斥候が乗ってきた馬を奪い取るや、それを駆ってエバルに向かって行った。

 決して馬術が得意ではないセレーネは無理矢理に馬を走らせた。
 半ば暴れ馬にかわってしまうその馬、振り下ろされそうになりながらも、セレーネは必死にしがみついた。

 そうしてたどりついたのは、変わり果てたエバルの街だった。
 街は焼き払われていた。

「そんな……どうしてこんなことに!」
「姫様!」

 追いついてきたネオラと、セレーネ隊の兵士。
 セレーネはそれに構うことなく、街の中をかけずり回った。

 街の規模から信じられないくらい犠牲者は少なかった。
 それが何を意味するのかも知らないまま、セレーネは必死にかけずり回った。

 やがて、一人の男を見つけた。
 刀傷とやけどがひどい、瀕死の男だ。

「大丈夫!? しっかりして!」
「がふっ……」
「何があったの? ねえ教えて! エバルに何が起きたの」
「て、り、おす……」
「テリオス公爵?」
「むりやり……街のみんなを……兵士にする、ため、に……」
「なんて事を!」
「頼む……みんなを、たすけて、く――」

 セレーネに向かって伸ばされた手は、しかし届く事はなかった。
 途中で力尽きて、男の手ががくっと落ちた。

 セレーネは男の亡骸をおいて、充血しきった目を手のひらで閉じてやった。
 そこに、ネオラとセレーネ隊が追いかけてきた。

「……くわよ」
「え?」
「行くわよ。追いかける。こんな、国をこんな風にするやつなんかに――」
「……いけませんセレーネ様」

 ネオラは男を見て、まわりをみて、セレーネを見た。
 彼女の気持ちはわかる、痛いほどわかる。
 が、ネオラはカケルからの命令を受けている、セレーネの手綱を取るという命令を。

「我々は突出しすぎてます。このまま追いかければ危険です。返り討ちで全滅する可能性があります。セレーネ様について行く兵が全滅するおそれが」
「うっ!」

 うめくセレーネ。
 彼女は迷った、怒りと、ネオラの進言のあいだで揺れた。

 後者がかった。
 カケルの元に引き取られ、様々な教育を受けて、自分の能力を逆に過小評価しすぎるようになったセレーネはまわりのアドバイスをよく聞くようになった。

 自分達が突出しすぎてるのは分かる、それで危険な目に遭うかも知れないのもわかる。
 一人の兵の姿を捕らえた。昨日、突出しすぎた自分をかばって大けがを負った若い兵だ。

 あれが……この全員に広がる。
 ついてきてくれた兵が全員大けがを――いや死ぬかも知れない。

 セレーネは我を貫けなかった。

「分かった……ショウと合流する」

 まるで血反吐を吐くような、喉の奥から搾りだすセレーネの声。
 ネオラは胸が締め付けられた。

 無理矢理納得したセレーネ、強く噛んだ唇と、握り締めた拳から血がにじんでいる。
 が、追わせる訳にはいかない。
 ネオラからすれば、カケルの命令は絶対だ。
 このまま追えばセレーネを危険にさらしてしまう。無事で守り通せる保証がない戦いに突入する。

 彼女はそうさせる訳にはいかなかった。

 そうして、引き返して本隊に合流する命令がセレーネ隊に下された。
 が、命令は遵守させなかった。

「姫様、追いかけましょう!」

 異を唱えたのは、他でもない昨日大けがしたあの兵士である。

「だ、だめだよ、今の話を聞いてなかったの? みんなが危険に――」
「今追いかけないともっと犠牲者がでる。それにおれたち、今の(、、)セレーネ様のためなら危険とかへっちゃらですよ。なあお前ら」
「「「「おおおおお!」」」」

 兵士達が声を上げた。
 心が一つになった、天地に轟く咆哮である。

「あんた達……」
「だから命令をくださいよ姫様、国を守る為に」

 信じられない顔をするセレーネ、なんで自分のためにそうしてくれるのかと。
 それは彼女がカケルの元に来てからする様になった後ろ向きな思考だが――。

 彼女は吹っ切れた。
 ネオラに目をやって、目線で謝って。

 そして、まなじりに混じる涙を――怒りと感激の涙を拭って、兵達に言った。

「みんな、あたしについてきて」
「「「「おおおおお!」」」」

 天まで貫きほどの軍気は、聖剣王女の更なる羽化を祝っているかのようだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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