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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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189.外堀を埋める

 メリナ・ヴェ・テリオス。
 アイギナ建国に携わったテリオス家の現当主である。
 そのテリオス家はかつてお家断絶の危機があり、王家から養子を迎えて存続したという歴史をもつ。

 そのためメリナはアイギナ王家の血を引き、本人は王族だと自認している。
 王家の血を引き、公爵位でもあるメリナはアイギナ王国の中でもかなり高位の存在だが、権力欲が並外れて強いかれはその地位で満足してはいない。

 公爵位で満足しない人間、目指せるものは限られている。
 メリナの野心は自然と、アイギナの頂点に向けられた。
 野心という名の獣は国王が倒れ、王太子が斃れたことで檻から解き放たれた。

 メリナはアンニス、ゲートの二人を巻き込んで、いにしえの制度・三公摂政というものを持ちだして、政権を奪い取ろうとした。
 奪い取った後、アンニス、ゲートの両公爵をそれとなく排除する算段もつけていた。

 念入りな下準備で、彼の静かなるクーデターは成功するはずだった。

 魔剣使いさえいなければ。

     ☆

「おのれ! アンニスもゲートも、このわたしをコケにしおって!」

 王都レティム。
 権力の中心地、国王の正宮殿である冬の宮殿の一番立派な部屋の中で、メリナは読み終えた二通の手紙を床にたたきつけた。

 それだけじゃ腹が収まらなくて、投げつけた手紙を何度も何度も踏みつけた。
 顔が真っ赤になって、権力と財宝が醜い形ででた肥満体はそれだけぜーぜーと息をあげて、大粒の汗をだらだらたらす事になった。

 ガチャ。
 ドアが開いて、一人の男がメリナの元をたずねた。
 かつてセレーネを補佐した男、アブラアムだ。

 彼は今、三公摂政という正当な形で権力の中枢に入ったメリナの元で働いている。

「どうかしたのですか、公爵様」
「どうしたもこうしたもあるか! それを読んでみろ。あの二人……ふざけたマネをしおって!」

 アブラアムは静かに二通の手紙を拾い上げて、順に読んでいった。
 途中から表情が険しくなったが、それでも冷静に最後まで読み終えた。

「ゲート公爵は病のため休養、アンニス公爵はご長男に家督を譲る、ですか」
「このタイミングでふざけた事を! なにが病気だ! 何が家督を譲るだ! あれしきの事でひるむとはなんたる軟弱さか!」
「お言葉ですが、陛下が向こうにいらっしゃいます」
「偽物だ!」
「しかしそれを民は――」
「偽物は偽物だ!」
「……セレーネ殿下がいらっしゃいます」
「王女一人なんかよりも三公摂政の方が正統性がある!」
「…………クシフォスもあります」
「あんなものただのカビの生えた鉄の塊だ!」
「……」

 アブラアムは口をつぐんだ。
 メリナに何を言っても意味がない、そう悟ったのだ。

 いや失望した、見限ったといった方が正しい。
 逆上し、全てをあしざまに言って非論理的に否定する目の前の男を見限ったのだ。

 もっとも彼はそれを顔に出さない程度の分別がある、メリナに対する失望をおくびにも出さず、話を合わせてやった。

「公爵様のおっしゃる通り、偽物やただの王女、過去の遺物であれば、正統性は公爵様にございます。となれば問題はただ一つ」
「なんだ! 問題というのは?」
「敵軍です。これが唯一にして最大の問題です。こうして戦という形になってしまった以上、どの道殲滅しなければ終わりません」
「そんなもの! 兵を集めろ、民に動員をかけるのだ」
「残念ですが――」

 アブラアムは言葉を選んだ。
 メリナが好きそうな、受け入れそうな言葉を選らんで口にした。

「民は愚かで、見たものをそのまま信じるだけです。偽でもただの王女でも過去の遺物でも、ここまで組み合わせれば民はそれを本物にしか見えなくなります。今から兵を集めるのは至難さの技かと」
「そんな事はしらん! とにかく動員しろ、かき集めろ!」
「……はい」

 メリナはアブラアムの想像以上にカッカしてて、話が通じなかった。
 ますます失望するアブラアムである。
 彼は自分の主君運のなさを嘆きつつも、何とかしようと色々考える。

「そうだ、方法があったぞ」
「公爵様?」
「シナイを知ってるか?」
「はい……国境にある要衝で、コモトリアと長年――まさか!」
「あれをコモトリアにくれてやる条件で兵を借りるのだ」
「公爵様考え直してくください! シナイを渡してしまったら我が国第二の都市、タボルが丸裸になります。さらに――」
「このままでは偽者に国を奪われかねん。タボルの一つや二つ、わたしのこの国を守れるのなら安いものだ」
「なっ……」

 これには流石に絶句するアブラアムである。
 タボルは決して敵の手に渡してはならない場所である。

 タボルは単なる大都市ではない。
 万が一に備えて、王族が逃げ延びれるように王都レティムとタボルの街道は整備され、その上で王族が逃げ込んだあと街道ごと砦・要塞化する事ができる作りになっている。

 レティムからタボルを攻め落とすのは困難極まる、事実上不可能というつくりなのだ。

 シナイを渡せばタボルも渡すことになる、タボルをわたせばこの国の半分は事実上献上してしまうことになる。

 アイギナの人間としてそれはあり得ない事だ。
 だからかれは必死に抵抗、反論を試みたが。

 怒ったメリナは兵士を呼び込んで、アブラアムを拘束して、投獄させてしまった。だ。
 アブラアムの一件は氷山の一角である。

 王国軍が徐々に押し迫るのにつれて、メリナの元からまともな人間が一人また一人、消されていくのであった。

     ☆

 コモトリア王国、王都クラデス。
 きらびやかな大浴場の中央で、おれ真っ裸で椅子に座って、同じメイド服のアウラに体を洗われていた。

 まわりにメイドが何人もいる、しかしそいつらは直接動く事はなく、アウラがおれを洗うのをフォローしているだけ。
 アウラは丹精込めて、おれの体を洗っている。

「どう? カケル」
「気持ち良いぞ。洗うのうまいな、お前」
「普段はメイドに洗ってもらってるんだけど、されるの気持ち良いから、カケルにしてあげられるように覚えたの」
「そうか、嬉しいぞ」

 首だけ振り向き、アウラのあごを摘まんで、肩越しに軽めのキスをした。
 大浴場の中、アウラは赤面しつつ、更におれを洗う。
 なすがままにされて、おれはここに来た本題を切り出した。

「お前に頼みがある」
「セレーネの教育以外にも?」
「そうだ」
「わかった、言って」
「近いうちにテリオス公爵の使いとやらがこの国に来るはずだ」
「どうしてここに来るって?」
「消去法だ。メルクーリは硬貨におれを使ってるほどおれの関わりが表にで過ぎてる。シラクーザとカランバはすでに他の二人が接触したから、そこも避けられる。となるとテリオスが接触できるのはここだけだ」
「そっか」
「九割方領土の割譲を条件に兵を借りようとする、あの手のヤツはな。時点で金か女を差し出すだろう」
「それって」

 アウラはごしごし背中を洗いながら楽しげにいった。

「カケルがそうすることしか出来なくしたからだよね」
「微妙に違う、したのはヘレネーだ。おれは今の状況でそうなるだろうって判断しただけだ」
「そっか」
「ヘネレーがいうには、シナイってところを条件に兵を借りようとするはずだって」
「……それが本当ならすごい条件を出してくるもんだわ」

 アウラの手が一瞬止まって、真剣な口調でいった。
 そんなにすごいのか、シナイを渡すってのは。

「もらうか? シナイ」
「カケルはセレーネをハーレムに加えるつもりなんでしょ」
「ああ、そのために色々やってる」
「だったらコモトリアがもらってもアイギナのままでも一緒だよ」
「そうか。なら改めて頼む。交渉を適当に引き延ばしてくれ。セレーネにテリオスを討たせたいからな」
「分かった。任せて」

 あっさり承諾しつつ、アウラは更にごしごしおれを洗った。

 しばらくして入り口から別のメイドが入ってきて、アウラのそばに駆けよって耳打ちした。
 777倍の聴力がそれを捕らえる。

「アイギナのテリオス公爵の使者を名乗る者が陛下に謁見をもとめてきました」

 アウラは頷き、メイドを下がらせた。

「カケルの予想通りだったよ」
「頼めるか」
「一つお願いを聞いてくれたら」
「なんだ、言ってみろ」

「あそこにいるメイド達、働き者のいい子達なの」

 アウラに言われて、同席しているメイド達を見る。

「わたしの後に、彼女達も可愛がってあげたら」
「ご褒美におれを使うか」
「わたしが与えられる最高の褒美だから。カケルに引き合わせて、可愛がってもらうのって」
「そうか」

 そこまで言われたら断る訳にはいかないな。
 おれはまずアウラを可愛がってから、メイド全員の心を開かせて。
 全員、希望する初めての形にしてやった。

     ☆

 こうして、テリオスの外堀が全部埋められた。
 この戦いの終わりは近い。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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