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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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188.剛速球と魔球

 カランバ王国、王都メテオラ。
 王宮の謁見の間で、女王リカは玉座にいた。

 正面に一人の中年男がいた。身なりがよく、上品な物腰の男だ。
 リカは家紋のすかし印が入った手紙を最後まで読んでから、男に話しかけた。

「つまり、アンニス公爵は兵を借りたい、と」
「端的に申し上げれば」
「そう。どころで一つ聞きたい事がある」

 玉座の上から、リカは居丈高に言い放った。
 秀麗にして怜悧な美貌、聡明さをうかがわせる眼光。
 それらは以前からあったものだが、近頃は威厳まで備わってきたともっぱらの評判である。

 アイギナ王国公爵、アンニスの使者としてやってきた男はわずかに気圧された。
 彼の名はモリス、アンニスの部下として様々な交渉の場に出続けたベテランだが、それでもわずかにリカに気圧されたようである。

「敵軍を率いているのが国王だという話はあるのだけど?」
「あれは偽物でございます。国王は不治の病に倒れている、ソロンの奇跡で何とか命をつないでおりますが、大司教によれば意識の回復は絶望。あれが何者なのかはしらないが、真っ赤な偽物でございます」
「そう。それを民は?」
「うっ……」

 モリスは言葉を詰まらせた。
 リカの言葉は短かったが、クリティカルな一撃だった。

「国王の病症を今まで民には教えなかった」
「それは国の安定を思えばこそで……」
「国王が表に出てきたから、後出し(、、、)で実はこうだったと発表して、民は果たして受け入れるのか」
「それは……」
「更に」

 リカは真顔で続けた。
 威厳――プレッシャーが一層強まった。

「戦場を駆け、兵を率いてるのがセレーネ王女と聞く。王女が手にしているのはアイギナ護国の宝、官位の由来にもなった聖剣クシフォス。この二つも偽物なの?」
「それは……」
「アイギナの聖剣を知る人間はおおい。またクシフォスは実際に目の当たりにすれば本物だと納得する存在感がある。本物の王女が本物の聖剣を持って守る国王も、また本物だということになる」

 民にとって、とはあえて言わなかったリカ。
 こうした場の、互いに知ってる(、、、、)人間同士のやりとりにおいて、主語を何にでもくっつけるのは無粋だという風潮がある。

 また、省いた方が言葉の力が増す場合もある。
 リカはそれをよく知っている、だからそうした。

 モリスはやり込められ、何を言えばいいのか分からなかった。

 主導権は、リカが握ることとなった。

「三公摂政とはいえ、事の始まりはテリオス公爵だときく。他のお二人は騙されたという噂もある」
「――え?」

 モリスは目を見開かせる程驚いた。
 そんな事はない、彼はアンニスの腹心だから知っている、三公摂政はテリオス、アンニス、ゲートの三人が共同して謀ったもので、決してテリオス一人がはじめた事ではない。

「そして今、国王軍と交戦しているのもテリオス公爵の手勢だけだと聞く」
「それは……そうです」
「民は国王軍に味方するだろう、国王が本物(、、、、、)である限り、三公摂政に正統性はない。騙された(、、、、)のなら、今が引き返し時では?」
「……わたしの一存では決めかねます」
「それはそう。この事をアンニス公爵に話すといい。必要ならわたしが取り持ってやってもいい」
「陛下が?」
「セレーネ王女とは個人的な付き合いがある。個人的な(、、、、)

 リカがいい、モリスの表情は険しくなってしまった。

 リカは暗にこう言ってるのだ。セレーネと繋がってるから全部知ってるぞ、と。
 その上で今手を引くのなら協力をする、という事だ。

「……時間をいただきたく。我が主に伝えます」
「早いほうがいい。完全に劣勢になってから降ってはただの敗軍の将。降るのなら優勢、最悪でもまだ互角のうち」
「承知しておりますが――」
「ちなみに」

 モリスのいい訳を途中で遮るリカ。

「今ならアンニス公爵の公爵位を保証、次男に男爵位を与える用意がある、そう聞いてる」
「そこまで――ああいえ、なんでも」

 モリスの口から悲鳴の様な声があがった。

「わかりました、すぐにつたえます」
「それと」
「え?」

 まだあるの? って顔をするモリス。
 リカはわずかに口調を和らげた。

「これはセレーネ王女の同意を得てるのだけど、アンニス公爵の三女、アリスはとても聡明な娘だと聞いてるわ」
「は、はあ……」
「その子、わたしが預かってやってもいいわ。人質じゃない。薔薇の園、聞いた事くらいあるよね?」
「なんと……」

 絶句するモリス。
 王族・貴族同士で娘をやりとりするのは、人質か、純粋に姻戚として家のつながりを強化するか、この二つしかない。
 人質でないのが本当なら、アンニス公爵家はカランバ王国を太いパイプを持つ事になる。
 本来アイギナの貴族であるアンニスがカランバと直接繋がるのは問題ありだが、女王と王女、トップが決めたことなら何の問題もない。

 そしてリカの「薔薇の園」、女王のハーレムは貴族のあいだでは有名である。
 彼女が賢い女をかき集めてるともっぱらの噂だ。

 爵位の保証、更なる爵位の確約、そして女王とのつながり。
 アンニスからすれば、勝つかどうかも分からない戦よりも、これに飛びついた方がいいのは誰の目にも明かだ。

 飴と鞭を同時に使いこなし、選択肢を事実上一つしかないように仕向けた。
 それをしたのはカランバ女王、リカ・カランバその人である。

     ☆

 シラクーザ王国、王都アドリア。
 王宮の中庭にある、迎賓館・プロス亭。

 きらびやかな王宮の中にあって、ちぐはぐさを隠せない庶民的な小料理屋、という作りの建物。
 がらんとした店の中、ゲート公爵の使者、カリサルが一つの席に座っていた。

 そこに、エプロンに頭巾という、看板娘姿のフィオナが料理を運んできた。

「お待たせしました、山ウシの焼きめしです。この店一番のオススメですよ」
「……これは何の冗談だ?」
「あれ? 山ウシお嫌いですか? 野菜の方がすきでした?」
「違う。なんでこんなところにつれてこられたのかと聞いてる。わたしは迎賓館で一休みして、その後女王陛下と会食をすると聞いたのだ」
「そうですよ。ここがその迎賓館です。プロス亭ともいいます」
「まったく何の冗談だか。これだから平民の出は……」
「あはは」

 フィオナは屈託なく笑った。

「お客さん、何しにきたんですか?」
「お前のような娘に話すことじゃない」
「いいじゃないですか。あっ、お客さんお酒とか好きですか? 教えてくれたらいいお酒出してあげますよ」
「いい酒?」

「はい。こう見えてここちゃんと迎賓館です。女王様も食べる料理ですから、食材とかはちゃんといいものを使ってるんです。もちろんお酒も。たとえばあれ……なんだっけ、発酵と蒸留を四回繰り返したお酒とか?」
「四回!?」
「すっごい代物らしいですよ? 国賓を迎えるときにしか出さないものらしいです。興味あります?」
「……まあ、少しくらいはいいだろう」
「はーい。マリ、あれ出してあれ」

 店の奥からマリが出てきた。
 いかにも高そうな瓶を持って、親指くらいの小さなグラスを置いて、そこに瓶の酒を注いだ。

 瞬く間に酒の芳醇な香りが店の中を充満した。
 酒好きならこの時点で心身ともにくらくらするほどの芳香だ。

「お客様、どうぞ」
「う、うむ」

 カリサルが軽く咳払いして、仕方なさそうな顔をして酒をのんだ。

「どうですか」
「ま、まあまあだな」

 カリサルはそういうが、顔は正直だ。
 美酒に身も心も酔いしれ、目尻がだらしなく下がっている。

「それじゃあ教えて下さい、ちょっとだけでいいから、ね」
「そうだな……まあこれくらいはいいだろ。おれの主人、ゲート公爵は国王陛下と接触を望んでる」
「え? 何のために?」
「円満に戦いを収めるためだ。国王陛下が向こうにいる以上、こっちに民がつくことはない、勝つことは不可能だ」
「そっか。でもなんでそれをシラクーザの女王に?」
「それはいえ――」
「そだ、せっかく開けたんだし、もっと飲んでってよ」

 フィオナはグラスにさらに酒を注いだ。
 看板娘の酌、国賓用の美酒。

 カリサルの口を開かせるのに充分だった。
 カリサルはグイと飲み干して、美酒の味で上機嫌になって、言った。

「この国の女王は魔剣使いと繋がってるだろ? そしてここだけの話だが、あの国王は魔剣使いが裏で糸を引いてるにせものだ。本物を連れ去ったからな。そして王女殿下は魔剣使いそっくりの剣術を使う」
「ふむふむ」
「だから女王陛下に謁見して、魔剣使いとつないでもらうのだ」
「そかそか。でもどうしてシラクーザ? えっと――」

 フィオナは頭の中で、一瞬で人間関係を整理した。
 表にでている、はっきりと見えている人間関係を。

「メルクーリの王様でもいいんじゃないですか? ほら、メルクーリの新しい硬貨に魔剣使いさんの顔が使われてるでしょ」
「メルクーリはムリだ、ありゃ完全な王族、隙がない」
「ないんですか」
「その点シラクーザの女王はご落胤、民間で生まれ育った娘達だ。まちがいなくこっちの方がやりやすい」
「そうなんだ」

 ニコニコ顔のフィオナ。
 一方でマリはちょっと苦笑いだ。

「まあそんなところだ。ほらもっとついでくれ」
「はいはーい」
「ああお前はもういい、そっちの娘。お前がついでくれ」
「わたしですか?」
「ああ」
「わ、わかりました」

 マリが瓶を受け取って、カリサルのグラスに注ぐ――瞬間、彼に手首を捕まれた。

「料理屋の娘にしてはかわいいじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「今夜、どうだ?」
「え、そのあの……」
「ふふふ、こんなに手がちっちゃくて肌がすべすべして」

 カリサルはマリの手の甲を撫でた。
 ふと、ごり、という感触がした。

 マリが親指につけている指輪に触れたのだ。

「なんだこれは、なんで親指に指輪――親指!?」

 愕然とするカリサル、みるみるうちに顔から血の気が引いていく。

 権力を象徴する親指の指輪、その指輪に刻まれたシラクーザの紋章。
 マリはそれをつけていた、そしてフィオナも。

 カリサルは二人の指輪に気づいて――その身分にも気づいた。
 血の気が引いて、泡を吹いて卒倒してしまうのだった。

     ☆

 夜の魔法コテージ、主寝室の中。
 ベッドの上に三人の女がいた。

 親指から薬指に指輪をつけかえたフィオナとマリ、二人は手を取り合って寝ていた。

 そして、もう一人はリカだ。
 彼女もおきたまま、おれの腕の中で甘えている。

 リカ、フィオナ、マリ。
 三公爵のうち二人を実質無力化した女王達に褒美をやって、可愛がってたのだ。

「ごめんね、カケル」
「どうした」
「あなたのハーレムに勝手に女の子をいれて」
「お前のハーレムだから気にするな。そもそも見込みがあるから入れたんだろ?」

「うん、三女アリス・アンニス。ちょっと気が強くて父親とそりが合わないけど、賢い子だって聞いてる。もし戦う事になって、彼女だけは助けてあげてってお願いするつもりだった」
「お前が気に入った子なら謝る必要はない」
「うん、カケルにふさわしい子かどうか、手元に迎えて確かめてみるね」
「ああ、がんばれ」

 そう応えつつ、考える。
 政治・外交の王道で、問題を解決しただけではなく、自分の望むものを手に入れた。
 はじめて会ったときから賢い女だと思ったが、最近はその切れ味がますます増してきたように思える。

 フィオナとマリもすごかった。
 自分達が持ってるもの、やれる事を最大限に活用して、使者をやり込め、優位にたった。

 三人ともいい女だ。

 そんな事を考えてると、いつの間にかおきていたフィオナとマリが近づいてきた。

「カケルさん……わたしたち」
「カケルさんの役にたてました?」

 おれの役に立つとか関係なく、っておもったが、無粋だと思った。

「ああ、役に立った」

 そう言うと、フィオナもマリも、リカまでもが笑顔になった。
 大輪の花が咲いたような、美しい笑顔に。

 三人とも、可愛すぎるのも程がある。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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