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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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187.箱庭の犬

 出撃前、おれはセレーネに稽古をつけてやった。
 兵が見ている前で、彼女を動き回らせるように稽古をつけた。

 セレーネの息があがって、そろそろ動きがかわる(体力切れ)頃でやめた。

「よし、ここまで。後は出撃するまで休んでていいぞ」
「はあ……はあ……分かった」

 セレーネはふらふらと、変身したネオラに支えられて、離れたところで言われた通り休んだ。
 それを見送ったおれに、ヘレネーがそっと近づいてくる。

「あれでよかったのか?」
「はい、出撃前に体力をほどよく削いでそく。流石カケル様です」
「セレーネの体力を削っとく理由は?」
「セレーネ殿下は有名になりました」

 ヘレネーは扇子を持ったまま、セレーネに視線を向けて、静かに語る。

「魔王のしもべ、聖剣の戦姫。どちらにせよ有名になりました。そういう人間が戦場に出た場合、二種類の反応をされます」
「一つは?」
「畏怖。カケル様がもっともよくご存じの反応かと」

 頷く。確かにそういうのは目にする。

「もう一つは?」
「功名心。そのものを討って名をあげるというもの。ロポギスの守将、トト・サイサリスは功名心の強い男、また剣の腕に自負がある男と聞いてます」
「怯えることなくまっすぐセレーネに突っ込んできそうなタイプだな。体力を減らすのは危険じゃないのか?」

 ヘレネーは静かに手を伸ばし、持ってる扇子で遠方をさした。

「あちらのヤコレ谷に、吸収した兵で新編した魔道士隊を伏せます。セレーネ殿下には一度交戦していただき、敗走と偽らせ、ヤコレ谷に誘い込んでいただきます」
「そこに集中砲火をぶっかけるってことか」

 頷くヘレネー。

「セレーネ殿下は不器用な方です。撤退すると進言すれば素直に撤退するでしょうけれど、元気なまま撤退したのでは怪しまれます」
「それで体力を削っておけってことか」
「情報では、殿下の戦闘スタイルも名前と共に広まりつつあります。疲労が蓄積されると動きがかわる、と」
「わかりやすく弱るのも筒抜け……なるほど全部わかった」
「誘い込んだら魔道士隊による一斉射撃、後にカケル様が持つ魔法の玉で殿下を回復させ、逆襲をしかけます」
「そうか」

 おれはネオラを呼びつけた。
 ヘレネーから聞いた話を丸ごと伝えて、それをセレーネには教えるなと口止めしつつ、異次元倉庫から魔法の玉を取り出して渡す。

 ネオラがセレーネの元にかけていくのを見送る。
 こういう作戦はするのは珍しい。いままでなら、おれがメインなら力づくで突破すればよかったからだ。

 メインがセレーネになったから、いろいろ手を尽くす必要がある。
 セレーネを育てて、自信をつけさせるためだったが。
 瓢箪から駒がでて、テレシアの双花が一人、軍師・ヘレネーが輝くのを見ることが出来た。
 嬉しい誤算ってヤツだ。

 そのヘレネーは、更におれに言った。

「もう一つ。カケル様にしかできないことを頼みたいのです」
「言ってみろ」

 扇子を両手で持ち、婉然と微笑むヘレネーはますます輝いて見えるのだった。

     ☆

 両軍が激闘する。

 聖剣の戦姫率いるセレーネ隊と、ロポギスの守将、メテオラ公爵の部下トト・サイサリス率いるメテオラ軍。

 兵力差は1:3、相変わらずセレーネは数の上では劣る戦いをしていた。
 序盤、ネオラの補助がついたセレーネの突破力が遺憾なく発揮され、数的不利を帳消しにする互角の戦いを繰り広げた。

 互角なのはトトが登場するまで。
 彼は最前線にでるなり、クシフォスを見つけて、まっすぐセレーネに襲いかかった。

 カケルの稽古、そしてそれまでの戦いで消耗したセレーネは動きがかわった。
 普段の稽古で身につけた型にはまった動きから、カケル生き写しの動きになる。

 トトは笑みを浮かべた。セレーネが弱まると動きが代わるという情報を彼は既にキャッチしている。

 ネオラは撤退を提案した、セレーネはいつもの様にノータイムで提案を受け入れ、撤退をはじめた。

 トトは喜び勇んで追撃をはじめた。
 狙い通りヤコレの谷に誘い込まれたトトとメテオラ軍は、崖の上からの魔道士隊の斉射を浴びた。

 空から降り注ぐファイヤボールの雨あられ。
 初歩の魔法だが、連射性に優れるので魔道士隊ではもっとも使われる魔法だ。

 それを喰らったメテオラ軍は混乱した、トトは悪態をつきながら混乱の収拾に追われた。

 そこにセレーネ隊の逆襲が始まる。
 魔法の玉で回復したセレーネは、ネオラの提案――ヘネレーが発案した逆襲でメテオラ軍に襲いかかった。

 勢いは完全にセレーネ隊が上回り、メテオラ軍は更に混乱を極め、潰走をはじめた。
 最後尾からヤコレの谷に殺到し、逃げだそうと試みる。

 それを、魔剣使いが崖の上から見下ろしていた。

     ☆

「やるぞ」
(またあれか)
「なんだ、いやなのか?」
(全力なら文句は言わん)
「そうか」

 おれはエレノアを逆手に持ち替えた、半身になって弓引く体勢で、右腕にオーラと力を込める。
 そしてエレノアを投げた、メテオラ軍が殺到するヤコレの谷の出口に向かって投げつけた。

 山が震えて、敵味方関係なく悲鳴が飛びかった後。
 谷の出口にクレーター、いや崖ができた。

 全力で投げつけたエレノアが地面をえぐって、底が見えない程の崖を作り出した。
 それを見て、脳裏にヘレネーの言葉を思い出す。

『橋があれば橋を落としたいところなのですが、そう言うものがない地形なので、カケル様につくって頂きたいのです。シンプルに土砂崩れをおこして道を塞ぐでもいいのですが』
『金網デスマッチ状態にするってことか。わかった』

 平らな道だった谷に突如出来た底の見えない崖、おれはオーダー通りに出来た事に満足した。
 その間戦場は止まっていた。

 敵味方関係なく、いきなりの地形破壊に驚き、唖然とし、戦闘がほとんど止まっていた。
 止まってないのは、やはり一人。
 言われたとおりのこと、自分が「これしか出来ない」と思った事をひたすらする、セレーネだった。

 彼女は突撃を続けていた。敵味方入り乱れる戦場でただ一人。
 おれが回収したエレノアを楽しげに。

(やはり大物になるな、あの娘)

 と言わせたのだった。
 そして閉じ込められたメテオラ軍は全数が殲滅、または鹵獲されて。

 セレーネはますます名をあげたのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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