挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

185/288

184.おれを信じろ

 アイギナ国王軍、セレーネ隊。
 もともと200人だったのが、ハニアの負傷兵から動ける人間を吸収して、500人近くの規模になった。

 セレーネはその500人を率いて出撃した。
 相手は三公爵のうちの一人、テリオス公爵の旗印を掲げた2000人。

 兵力差は四倍、穴の開いた要塞を攻めるのには妥当な数だ。
 それにセレーネは真っ向から迎え撃った。

 先頭を切って突撃するセレーネ、そばにつけたネオラの技で敵兵の流れをコントロールして集めてるから、自然と彼女の前に屍の山が積み上がる。
 それをおれは神輿の上から眺めていた。

(そろそろ変わるぞ)
「……」

 エレノアが指摘した直後、またセレーネの動きが変わった。
 何度も練習を繰り返して身につけた型にはまった動きから、脱力した彼女が一番理想だと思う動きに。
 おれとまったく同じ動きに。

 遠目に見てると、そこにもう一人の自分がいるかって錯覚するくらい動きが似ていた。
 セレーネの動きが変わってから程なくして。

(士気があがったな)
「ああ」

 部隊長の動きが変わったことで、兵の士気がものすごい勢いであがった。
 中央のセレーネだけじゃなくて、兵までもが相手を圧倒しはじめた。

 おれとエレノアは完全に観戦モードになっていた。

(そういえば)
「ん?」
(捕らえた負傷兵の一部で彼女をどう呼んでるかしってるか?)
「セレーネを? どう呼んでる」
(魔王のしもべ、だ)

 エレノアはいつものように楽しげに、くつくつと喉の奥から出てくるような笑い声を頭の中に響かせた。

「魔王のしもべ? なんだそりゃ」
(貴様と戦場で遭遇した事のある人間から広まった呼び名らしい)
「おれとそっくりだから魔王のしもべ。……おれは魔王ってか?」
(くく、いやか?)

「魔王って、いつの間にとんでもない進化をしたもんだなおれは」
(一人で3000人を残らず殲滅する人間には妥当な二つ名だ、魔剣を持っていればなおのことそうなる)
「ふーん」
(まあ貴様のは魔剣使いが浸透しているからこの先変わらんがもしれんが――くくく、気の毒に、あの娘はの二つ名は魔王のしもべで固定されるだろうな)
「後で本人に教えてやろう、素直に喜びそうだ」

(しかし……変われば変わるものだな)
「うん?」
(あれ、少し前まではワガママ放題の小娘だったのに、今はもういっぱしの剣士だ)
「素質があったんだ」
(運もあった)
「本人の意思が強さもあった。それがが一番大きい」
(後は自信をつけさせるだけだな)

 核心を突いてくるエレノア、その通りだ。

 壊滅的な打撃を受けて敗走をはじめたテリオス軍を眺めて、おれはその通りだと思ったのだった。

     ☆

 魔法コテージの中、おれとヘレネーとセレーネ。
 嫋やかに、穏やかな表情を浮かべるヘレネー。
 対照的に小さくなってて、自信なさげにおどおどするセレーネ。

 昔のワガママがなくなったのはいいけど、ここまで自信を無くされても困る。
 なにかないかと考えながら、ヘレネーの話を聞いていた。

「アイギナ国王が逆賊を討つために立ち上がった、兵を率いるのはセレーネ姫である。この二つの噂がアイギナ全土に広まっていて、王族が相手ということで三公摂政の大義名分が消えてしまい、兵が激しく動揺しているようです」
「ってことはもう戦いは終わりそうか」
「いえ、三公爵たちは国王も王女も偽物であると主張しているようです」

「最後まで抗うつもりか」
「お父様が偽物だって確信してるから」
「ふむ」

 アイギナ国王は生きている、しかし実質死んでいるようなものだ。
 直る見込みがないところか、意識を取り戻す見込みすらない。
 オルティアに聞いたけど、そういう病気で誰にもどうしようもないらしい。

 それを三人の公爵は知っている、だから戦場に現われた国王が偽物だと分かる。

「彼らが何をどう主張しようと、王都に国王――」

 ヘレネーはおれをちらっと見る。

「――が戻って、バルコニーから民に姿を見せれば全てがおわります」
「そうだな……王都?」
「どうしましたかカケル様」
「……」

 なんか引っかかる、という何か思い出しそうだ。
 王都って聞いて、おれは何かを思い出しそうだった。

 必死に考えて、喉のそこまででかかった事を思い出そうとする。

(我の協力が必要か?)
「魔剣が忘れ物を思い出すのにやくだつのか――魔剣!」
「カケル様?」
「ヘレネー、イリスの事を覚えてるか」
「イリス?」
「魔剣クシフォス」
「ええ、元は一つだったけど二つにわかれた魔剣。メルクーリとアイギナがそれぞれ半分ずつ所有しているあれの事ですわね」
「あれはどこにある」
「確か国王の後宮にありましたわ」
「王の後宮はどこだ?」

 今度はセレーネに聞く。

「それなら知ってる! お父様のハーレムでしょ? 最後にあったのは『夏の宮殿』だよ」
「あそこか……」

 前にいったことのある場所だ。
 よし、行こう。
 夏の宮殿へ、クシフォスを取りに。

「どうするのですか、クシフォスを」
「取りに行って、セレーネに持たせる。今なら似合うだろ」

 ヘネレーはハッとした。魔王のしもべ、って二つ名をしってる反応だ。
 そうして、真顔で言う。

「賛成です。魔剣とは言え、クシフォスはアイギナの国宝。戦場で兵を率いる王女が持てばますますの象徴になりましょう」
「なるほど、そこまでは考えてなかった」

 おれが考えてるのはセレーネに自信をつけさせるため、魔王のしもべという二つ名にふさわしいどうぐだからだ。
 言われてみれば象徴としてもかなり強力だ、ますます取ってこないといけないな。

「あの……ショウ」
「うん?」
「バカのあたしでも分かるけど、クシフォスは危ないよ? 人の心を乗っ取るってきいた。あたしなんかじゃ――」
「今のお前ならできる」
「でも……」
「セレーネ」

 名前を呼んで、まっすぐ目をのぞき込む。
 セレーネは息を飲んだ身がすくんだ。

 そんな彼女に、おれは言った。
 強く、有無を言わさない口調で言い放った。

「お前を信じるおれを信じろ」

 セレーネは息を飲んだまま目を見開かせてから、やがて、おずおずと頷いたのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ