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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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178.倍返し

 マロネイのデルフィナ商会の中、二つある応接間の一つ。
 おれはデルフィナと向き合っていた。

 おれ達の他に、この部屋にはもう一人の女がいる、セレーネだ。

 彼女はおれとデルフィナの真横にいる。
 眠り姫の様な姿で、漆黒のオーラに包まれて空中に浮かんでいる。
 オーラはもちろんおれが出してるもの、おれが浮かばせている。


「魔王に囚われた姫君、そのようですわね」
「今は夢を見せてる、真実の夢をな」
「ということは洗脳。やはり魔王ではありませんか」

 楽しげなデルフィナの軽口。
 彼女は豊かな胸を揺らしながら身を乗り出し、おれに聞いてきた。

「どのような真実を見せてますの?」
「アイギナ建国の父、パウロスの真実だ」
「実はダメ男だったという、あの?」
「知ってたのか?」

 セレーネの口ぶりだとパウロスはかなりの偉人になってるらしく、それを聞いたエレノアは「歴史は勝者がつくる」って楽しげにいった。
 つまり歴史的に、パウロスは英雄クラスの人間にされてるはずだ。

 それをデルフィナはあっさりと逆の事を言い放った。

「アイギナの大本営発表をそのまま信じる程愚かではありませんわ。もちろん当時アイギナと争った国の歴史も」
「うん?」
「アイギナはパウロスを英雄だという、当時敵対していたメルクーリはとにかく運がよかっただけの無能だといった。直接的な利害の関係にない、中立のカランバとシラクーザは揃ってダメ男だけど人望はあったと史書にのこした」
「大分違うな、それぞれが」

「味方と、敵と、関係のない第三者。一番歪曲されず真実に近いのは……」
「関係のない第三者だな」

 デルフィナは頷いた。

「歴史は直接利害のない第三者の意見が一番客観的になるものですわ」
「……肝に銘じておく」

 いろいろと思い当たる節がある。
 そういえばエレノアはやたらと直接関わってた英雄や覇王達をこき下ろしてたっけな。
 これからは話半分に聞いとこ。

(安心しろ、後世の人間には貴様が神・魔・人の三界殺しだったといいふらしてやる)
「もうお前の語る歴史は何一つ信じないことにする」
(くくく)
「仲むつまじくて何よりですわ」

 デルフィナは呆れたように肩をすくめた。
 しばらく世間話してから、セレーネのオーラに迷彩効果をつけてデルフィナに見えなくして、二人きり、って状態をつくってから本題を切り出した。

「そろそろ反攻をはじめようと思う。アイギナの現状、三公摂政はどうなってる」
「安定しつつありますわ。三公摂政とは本来王族が政を執り行う事ができなくなったときの緊急処置。国王と王女が誘拐されて行方不明になった現状ではそうするしかないと国民のほとんどが納得してますわ」
「そうか」

「それに加えて」

 デルフィナはおれをじろりと見た、呆れた目だ。

「カランバ女王をはじめ、各国の首脳が何故か同時に、国王が戻るまでの三公摂政は歓迎すると表明してますわ。何故か同時に」

 デルフィナは同じ言葉を二度繰り返した。

 それはおれがリカとヘレネーに頼んだやつだ。
 三公摂政の正統性を補強してやれと、セレーネのハードルになるような状況にしてやれと。
 リカとヘレネーに言ったのがアウラやフィオナ、マリにも伝わって、全員が一斉にやり出したんだ。

「さらには何故か、誘拐は実はセレーネ王女が主犯だという噂も流れてますわ。出所は三公とは違うどこかから」
「へえ」
「そのせいで例えセレーネ王女が三公摂政を否定したとしても民はすぐにはついて来ない、大義はまだあちら側にある――さすがにやり過ぎですわ」
「そうか?」
「まあ、わたくしは儲かりましたのでいいのですけれど」
「もうかった? なにでだ? また情報か」

 シラクーザの時の事を思い出した。
 あの時も、デルフィナは儲けるといって、蛮族軍におれの情報を流した。

 詳しくは知らないけど、あの後しばらくデルフィナが上機嫌だったから、かなり儲かったんだろう。
 今回もそうしたのか? って思ったが。

「国王陛下のベッド。あなたがワープで一緒に運んできたベッド、あれを差し出しましたわ」
「うん? ああそういえばベッドで一緒に運んできたっけ」
「何者かが秘密裏に国王陛下の行方を探っておりましたの」
「何者か、ねぇ」

「何故か崖の下に落ちてたベッドを引き上げて、ぼろぼろになったベッドだけ(、、)を引き渡しました。引き上げた場所も添えて。ものすごく上機嫌で色々頂きましたわ」

 国王が崖の下に突き落とされたと見せかけたのか。

「毎回思うけど、お前の金儲けに対する執念ってすごいな。あんなベッド一つでも儲け話につなげられるとは」
「執念深くもなりますわ。カケル様に買われる事を考えれば、わたくしが自力で儲けた分はそのまま倍になりますもの」
「そうか」

 おれは笑った、デルフィナも婉然と微笑んだ。
 そういう軽口の応酬も楽しかった。

 一通りやり合ってから、話を元にもどした。

「話は大体分かった。デルフィナ、頼みがある」
「どうぞ、おっしゃって下さいな」

 デルフィナはわざとらしく、やれやれって感じでため息をついた。

「マロネイをセレーネに返してやれ」
「わかりましたわ」

 デルフィナは即答した。
 予想ついてたなこいつ。


 マロネイというのはアイギナの領土であると共に、デルフィナに買われた街だ。
 名目上はアイギナのままだが、実質的な統治権はデルフィナにある。

 おれが頼んで、かつ、セレーネの行動に箔をつけるのに最適な場所だ。
 そりゃあ予想もつくってもんか。

 おれはそのまま、デルフィナに色々「注文」した。
 兵士、武器、糧秣。
 セレーネが反攻するために必要最低限のものをデルフィナに注文した。

「すべて用意が調っておりますわ。実質必要なのは引き渡しの日を決めて頂くだけ」
「手際がいいな」
「儲けになりますので」
「そうか」

 さすがデルフィナ、と思ったその時。

 パリーン!
 真横の窓ガラスが割れた。

 窓ガラスを突き破ったものがデルフィナを襲う。
 それを無造作にエレノアで叩き落とした。
 ――が。

「なんだこれは」

 飛んで来たものは叩き落とせなかった、それはエレノアの刀身に吸い付いた。
 吸い付き、そのまま変形して、まるで脈動する血管のようになった。

 浸食、という言葉が頭にうかんだ。

 何者かによる浸食は一時すすんだが、途中でバタリととまった。
 とまっただけじゃなく、まるで植物が枯れるかのように、それは急速に朽ちていき、エレノアの刀身から地面に落ちた。

(我を乗っ取ろうとするなど十万年早い)

 エレノアが楽しげにいう。
 なるほど、そういうタイプの攻撃か。

「ど、どういう事ですの」
「どうやらお前の動きが嗅ぎつかれたようだな」

 窓の方を見る、黒装束の男の姿がみえた。
 黒ずくめで頭を頭巾ですっぽり覆って、目だけ出している出で立ち。
 男はおれを睨みつつも、意識はデルフィナの方に向けられていた。

「わたくしの?」
(今のは相手の心と体を支配するものだ。打ち込まれたものは意のままに操られる。まあ自白剤代わりだな)
「ってことだ」
「エレノアの声など聞こえませんわ……ですが」

 デルフィナは悔しそうに下唇を噛んだ。
 自分の行動が裏目に出たことを悔しがった。

 そのデルフィナを狙った黒ずくめの男は殺気をはなった。

「――っ!」

 あてられた(、、、、、)デルフィナは息をのんだ。

「おーおー、一丁前に殺気を放って――よっ!」

 おれはエレノアを投げた――黒ずくめの反対側に。
 そこにもう一人、魔法だかそういう衣装だかしらないが、カメレオンのように部屋の壁に溶け込んでる男がいた。

 エレノアは男の腹を貫き、壁に釘のように打ち付けた。

(我を適当に投げるなというのに)
「くっ」

 目の前の男は身を翻して逃げ出した。
 おれの意識をそらしてもう一人が本命で襲ってくるつもりだったけど、あっさり見破られたから逃げ出した。

 が、甘い。

「おれが、おれの女を狙ったヤツを逃がすと思うか?」
 例えこっちが先にしかけた上に、ドジを踏んだとしてもだ。

 オーラの腕を伸ばして、エレノアを引き抜いて男を追いかけた。
 途中でエレノアが面白い提案をしてきたから、追いついた後、倍返しでオーラを使って侵食し返して、魂を壊しつつ首謀者を吐かせた。

 サプライズはなかった、男達はメリナ・ヴェ・テリオス公爵の手のものだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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