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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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177.ほっとけないのさ

 マロネイ、デルフィナ商会。
 部屋でくつろぎながら、窓から中庭を眺める。

 セレーネはそこで、一心不乱に剣を振っている。
 最初の頃と見違えるくらい様になっている。

 いや、様になってるなんてレベルじゃないな。
 型に忠実すぎる傾向はあるが、太刀筋はかなり鋭い。

 単独戦闘なら奴隷兵の小隊長クラス――ニキやネオラに匹敵するだろう。
 剣によほどの才能があったんだな。

(こっちの才能があったのだろうな。政も戦術戦略もてんでだめという話ではないか)
「それだけで充分さ」
(で、どうする)
「どうするって?」
(あの娘、今日あたりにも何かを打ち明けてくる雰囲気だぞ)

 エレノアの言うとおりだ。
 あの森から帰ってきた後、セレーネはなにやら決意した顔つきになっていた。

 キリッとして、それでいておれの様子をうかがって。
 おれが視界に入ると深呼吸したり胸を押さえたりして、何か言いたげな空気がある。
 それが少しずつ強くなってる。今夜あたりに「えいや!」って感じで臨界突破して話してくるはずだ。

 なんの話かは、予想してない。
 おれはそれをを聞いて、適切にかなえてやるだけだ。

 この後、セレーネを抱くために。

 実はちょっと前に気づいたことなのだが、はじめてなのかも知れないのだ。
 きにいった女を「いい女」にしてから抱くのは。

 今までにいた、ハーレムの女達はみな抱く前からかなりのいい女で、抱いた後更にいい女になってった。

 ダメな子をいい女に育ててから――ってのはセレーネがはじめてなのかも知れない。

 その事におれはわくわくしていた。
 久しぶりにわくわくしていた。

(結果的にいい女ならなんの違いもあるまいに)
「そうかもしれん、そうじゃないかもしれん」
(それはそうだ)
「だから、わくわくするんだ」
(酔狂な事を)

 そう話すエレノアだが、彼女もまた楽しみにしている。
 そんな感情が伝わってくるのだった。

     ☆

 日がおちて、おれのいる部屋にノックされた。

「ショウ……いる?」

 彼女だけがする呼び方。
 予想通り、セレーネがやってきた。

 いるぞ、って答えてやると、ドアがゆっくりと開かれ、セレーネがおずおずと部屋に入ってきた。

「話があるんだけど……いい?」
「ああ」
「その……」

 おれの前にやってきて、もごもごするセレーネ。
 言いたいけど、言い出せない。
 最後の一歩を踏み出せないでいる、そんな顔だ。

 だから、おれは背中を押してやることにした。

「セレーネにイ勇気を貸し出し」
『セレーネ・ミ・アイギナに勇気を貸し出します。残り59分59秒』

 くじ引きの一等賞、能力一時間の貸し出し。
 セレーネの何かを変える訳ではない、後押しするだけの貸し出し。

 発動の言葉に一瞬戸惑ったが、すぐに表情が変わった。
 決意した人間特有の、凜然とした顔に。

「ショウ」
「うん?」
「あたし、ダメダメなの。剣術以外まるでダメダメなの」
「そうか」
「でもそれじゃダメなの、ダメダメなままじゃお父様の国、アイギナをもっとよくしていく事ができないの。ショウ、あたしどうすればいいと思う?」

 勇気が増幅されたセレーネは一気にまくし立てた、思っていた事をおれに言った。
 自分の弱さを認めた上で助言を求めてきた。

 昔の彼女、ワガママ王女だった頃のセレーネからは想像もつかないようなセリフに驚いた。

「アイギナ王国を戻したいのか」
「ううん、違うの、もっとよくしないとダメなの」
「よくしたい?」

「うん。もっとよくしていかなきゃダメ」
「それはだいぶ欲張りだな。色々と調べてみた。キモンのせいでガタが来てるけど、王の善政でアイギナは最繁栄期を迎えてたってはなしじゃないか。それを戻したいじゃなくて、もっとよくしたい、ってことなのか?」
「うん」

 セレーネははっきり頷いた。
 そこに迷いはまったく無い。

「あたしはお父様の娘。子って、親を超えなきゃダメなの。親が子を産んで、子が親を超えていかなきゃ生き物は発展しないの。だから、あたしはお父様を受け継いで、お父様の国をもっとよくしていかなきゃだめなの!」
「……」

 驚いた、これは驚いた。

「……それは誰に吹き込まれたんだ?」
「お父様に。お父様が実際そうだったから。だからわたしもそうしなきゃって。お父様のために、お父様を超えようって総理王大臣になろうって思ったんだけど……」

 シュン、とうなだれるセレーネ。
 そこから先の事はおれも知ってる。

 ワガママで、一方的にわめき散らして、挙げ句の果てに三公摂政、実質の反乱を招いてしまった。

 その大本で、こんな思いがあったなんて。

(くくく、ひょうたんからコマだな)

 全くだ。

 どうやらおれは願いを叶え損ねたらしい。
 ダメな子をいい女に育ててからという経験ができると思っていたが、セレーネは最初からいい女だったようだ。

 理想に能力が追いつかなくて、現実が見えていなかっただけで、もとからいい女の素質があったみたいだ。

 今すぐ彼女を可愛がりたかった。

(だいなしにするなよ)
「いわれなくても」

「え? い、言っちゃだめだった?」

 おれの方が平常心でいられなかったようだ。
 いい女を目の前にして、エレノアとのやりとりがつい口に出てしまった。

「いやちがう。今のはお前に言ったことじゃない。こいつに言ったんだ」
「魔剣……?」
「だから気にするな。その上で、だ。お前の相談なんだが」
「う、うん!」

 セレーネは身を乗り出して、期待する目でおれを見つめた。
 食い入るように、おれの答えを待ちわびて。

「お前はそのままでいいと思う」
「え? でも」
「エレノア、誰か例になる人物を」
(うむ、パウロス・アイギナなんてどうだ?)
「パウロス・アイギナを目指すといい」

 エレノアが言った名前をそのままセレーネに言った。
 セレーネはびっくりした。

「開国の祖パウロス!? そんな、あたしはそんな立派な人になれないよ」
(くくく、やはり歴史は勝者が作るものだな)

 楽しげに笑うエレノア。
 同時に、おれの頭の中に色々流れ込んできた。

 パウロス・アイギナという男の生涯を。
 エレノアが知っている、その男の真実を。

「なるほど、だから子が親を超えていけ、なんて考えが王族に残ってるんだろうな」
(さもありなん)

「ど、どういうこと?」
「エレノアはいった。パウロスっていうのは何から何までダメな男で、まわりの人間が見かねて色々手助けした男だって」
「えええええ!? 嘘!」
「ふむ、見せてやろう」

 おれはオーラを出した。
 多分出来る、エレノアも太鼓判を押してくれた。

 オーラでセレーネを包み込んだ。
 そして、彼女は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。

 彼女に夢を見せた。
 アイギナ初代国王、開国の祖パウロス・アイギナの真実を。

 セレーネ以上にダメダメなのに、まわりに助けられて王にまで登りつめた男の事績を。

 その間、おれはセレーネを見つめた。
 実はずっといい女だった、セレーネの顔を。

(台無しにするなよ)
「わかってる」

 彼女を今すぐにでも抱きたい衝動を、おれは我慢した。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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