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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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173/288

172.マイナスからのスタート

 くじ引き券一枚で適当に引いた、残念賞の魔法の玉(白)だった。

 エレノアとひかりの母娘団らんを見守った。
 しばらくしてエレノアが元に戻ったから、戻るぞっていった。

「い、今のは」
「うん?」

「今の事は誰にもいうな、いいな」
「お前が幼児退化したことか?」

「幼児退化いうな! われは退化などしていない! ちょっとばかり口調が幼くなっただけだ!」

「でもかわいかったよおかーさん」
「うっ――」

 おれに無遠慮で突っ込めても、娘の無邪気な笑顔を無下にすることは出来ないみたいだ。
 エレノアは困り果てた様子でおれとひかりを交互に見比べてから。

「――貴様が全て悪い!」

 と、腹に渾身の右ストレートを放ってきた。
 もちろんいたくない上に、照れ隠しだからむしろ可愛い。

「おとーさんとおかーさん、なかよしだね」
「だから家族の団らんを持ち込まないでくださいよ……」

 エレノアを適当になだめながらくじ引き所をでた。
 デルフィナの部屋に戻ってきた。

 デルフィナが机の前で何か書類を処理してて、おれをみて立ち上がった。

「おそかったですわね」
「わるい、ちょっと野暮用が」

「カケル様の場合、ただの野暮用でも世界を揺るがしかねないから恐ろしいですわ」
「そんな事はない」

 エレノアをいじってただけだ。

「あのね、おとーさんがおかーさんをすごくかわいくしたんだよ」
「やっぱり世界を揺るがしていたではありませんか。魔剣エレノアが可愛くなどと、なにがどうなのか想像すらできませんわ」

 ちょっとだけあきれ顔になるデルフィナ。
 恐怖の象徴として歴史にその名を刻むくらいの存在、エレノアが可愛くなったと知れば世界が揺れるか。

 まあでも、可愛いものはかわいいんだからしょうがない。

「それよりもアイギナ王とセレーネはどうした」
「アイギナ王はこの建物で安置しましたわ。可能な限り護衛を配置し、魔法探索の対策も施しましたわ。直接目視しない限りはここにいる事がわからないでしょう」

 デルフィナは真顔に――雑談モードから仕事モードに変わった。
 魔法対策は出来ても物理的な対策は出来ないって事か。

「セレーネは?」
「やかましくわめき立ててますわ」

 デルフィナが静かに首を振った。

「またか」
「セレーネ・ミ・アイギナ。一人娘でワガママに育ち放題だと聞きましたけど、噂に勝るワガママぶりですわ」
「……どこにいる」

 デルフィナにセレーネの居場所を聞いた。

     ☆

 廊下を一人で歩いた。
 一人と言ってもエレノアは一緒だ。

 最初は悪さをさせないためにおれがエレノアを持ち続けているんだけど、最近はもう大丈夫なんじゃないか、って思う様になってきた。

(何かよからぬ事を考えていないか貴様)
「お前を常時持ち歩かなくてもいいかもしれないって思っただけだ」

(貴様の手を離れればまだ人間を操って世界をかき回すだけだ)
「最近すっかり大人しくなったのに?」

(貴様といた方が楽しいからそうしているだけだ。ごちそうがなくなればエサを食べに戻るだけの話)
「楽しいって思ってるのか」

(うむ、われの生涯でもっとも、な)
「小さく可愛くされたのもか」
(あれはわすれろおおお!)

 絶叫するエレノア、気のせいか耳鳴りがした。

 そういうことならずっともってよう。
 おれもエレノアがいた方がいろいろ楽しいからな。

 ……楽しい事が立て続けに増えるしな。

(またよからぬ事を考えてる顔だ)
「そんなことないぞ」

(まあいい。それよりあの娘……セレーヌをどうするのだ?)
「話を聞いてみる」

(到底『いい女』だとはおもえんぞ)
「そうかも知れないな。デルフィナの人を見る目は確かだろうし」

(われや……貴様も実際にみているしな)
「……最終テストってところだ」
(それなら異論はない)

 廊下を歩き続けて、セレーネが実質軟禁されてる部屋の前にやってきた。
 表にデルフィナの部下が二人ドアを守ってる。二人はおれを見るなり敬礼してきた。

 二人に会釈程度に頷き返して、ドアを開けて中に入った。

 中にセレーネがいた。
 窓際の椅子にすわってて、足を組んでふてくされて外を眺めている。

 まるっきりワガママ娘な感じだが、おれを見た瞬間満面の笑顔で立ち上がって駆け寄ってきた。

「ショウ!」
「それは偽名だ、本当の名前はカケルだ」

「ううん、あなたはショウ。あたしにはショウよ」
「そうか」

 まあ、それはどうでもいい。
 それよりも――部屋の中を見回した。

 暴れた後だからか、彼女が座っていた椅子以外の家具が散乱して、倒れたり壊れたりしてる。
 壁に掛けられてる絵画も思いっきり破られてる。

「あばれたな」
「あいつらが悪いんだよ。あたしはアイギナ第一王女セレーネ・ミ・アイギナなんだよ? あんな1クレ奴隷に舐められる筋合いはないわよ」

「状況を理解してないのか?」
「そんなのしらないもん。あたしは王女、あっちは奴隷。それが全て」

 相変わらず、わがまま放題の言い放題だ。
 理屈はわかる、ダメなワガママ娘にありがちな理屈として分かる。それが分かる分――

(テストは?)
「残念だな」

 おれはため息つきつつ、きびすを返して部屋の外に向かって歩き出した。

「あっ、ちょっとショウ? どこにいくの?」
「……用事を思い出した」

 これ以上関わっていたくなくて、適当にいって、部屋をでた。
 表に出ると、守ってる二人がまた敬礼してきた。

「しっかり見張ってろ。何があっても外にはだすな」
「「はい!」」

 おれとデルフィナの関係をよく知っているのか、二人は主人の命令に従うように返事した。

 エレノアと一緒に、来た道を引き返す。

(真性のワガママ娘だったな)
「まあ、そういうのもあるだろ」

(違うな)
「うん?」

(王族としてはあっちが普通なのだ。貴様のまわりがむしろ異常なのだよ)
「そういうものなのか」
(そういうものなのだ)

 エレノアの言葉に頷く。
 まっ、人は育った環境に影響を強く受ける。
 ワガママ放題出来る環境ならワガママにそだって当然か。

(で、アイギナはどうする。このままなら動乱長引きかねん)
「そんな事はないだろ。国王と王女を逆に送り返したら話は終いだ。三公摂政は昔にもあったことなんだろ?」

(うむ。あの娘は反発していたが、強力なトップがいないのであれば、それなりの人間が合議した方がいいのはまちがいない)
「なら、送り返しておわりだ」

 エレノアは何もいわず、同意する感情だけを伝えてきた。
 アイギナの王女は残念だったが、デルフィナの事を深く知れたんだ、今回はこれで良しとしよう。

「……ん?」
(どうした、いきなり立ち止まって)

「……聞こえる」
(なにがだ?)

 聞こえる。
 エレノアには聞こえないけど、おれには聞こえた。

     ☆

 いくら暴れても何も変わらなかった。
 部屋が更に散らかっていくだけで、誰も止めに入ってこないし、ここからでも出られない。

 セレーネは暴れすぎてつかれてしまい、地べたに座り込んでしまった。
 最後の家具の椅子さえも壊して、膝を抱えてそれを見つめる。

 あの男の表情はしってる、出て行った瞬間の横顔を、セレーネはよく知っている。

 呆れて、見限った人間がよくする目だ。
 セレーネはそれをよく知っている、今まで彼女に関わった人間はどれも慇懃な目をするか、怒りの目をするか、その呆れの目をするかのどっちかだ。

「そんなの慣れてるし……たいしたことないし……大した事ないもん……」

 膝を抱えて、顔を埋めて、ブツブツつぶやく。
 腕と膝の下に隠された顔は、誰にも見せた事のない寂しげな顔だった。

「あたしは諦めないもん……父上のよくしていった国をもっとよくするもん。兄上がいなくなった今、それが出来るのはあたししかいないもん。そのためなら……なんだってするもん」

 つぶやいてると気力が戻ってきたのか、セレーネはパッと立ち上がって宣言する。

「絶対に出世して総理王大臣になって、父上の代わりにアイギナをもっとよくしていく!」

 が、それはロウソクの最後のきらめきだったようだ。
 意気込んで宣言した直後、気合は霧散して、彼女はへなへなへたり込んだ。

 彼女はバカだが、状況が見えないわけじゃない。
 大局はわからなくても、おかれている状況から自力で脱出する事は不可能、という事は理解できる。

 逆に言えば手の届く範囲の事しか理解できない、視野が極端に狭窄な子だ。

「こんな事なら……父上の話をもっと聞けばよかった……」

 また膝に顔を埋める。
 鼻をすする声がした、終いには泣き出してしまった。

 が、それを誰も止めるわけでもなく、慰める訳でもない。
 表を守っている人間は忠実に命令に従い、ドアを固めているだけ。

 彼女は怒声も、つぶやきも――嘆きも。
 誰の耳にも届く事はなかった――はずだった。

「更に暴れ回ったな」
「え?」

 顔をあげる、いつの間に入って来たのか、魔剣使いの姿があった。
 いや魔剣使いだけではない、彼以外何人もの女が一緒にいた。

「ショ、ショウ? そいつらは一体……」
「ヘレネーとリカとアウラ、それにオルティアだ」
「ヘレネー……おる……てぃあ?」

 首をひねるセレーネ。
 隣国の王女や女王の名前すら知らないのは無知きわまりないとそしりを受けても仕方ないことだ。

 実際、同じ立場にいる三人は微かに眉をひそめた。
 それを察知したセレーネは、理由はまた分からないが、また「やってしまった」と、いつもの様にやってしまったと理解した。

 そしてあきらめが頭をよぎり、いつも通り強がろうとした――が。

 カケルは違った。
 彼は呆れる事はなかった。

「そういうのも含めて、色々教えてやってくれ」

 女王と王女達が互いをみて、しょうがないとばかりに頷いた。
 オルティアが口を開いた。

「同じ立場のもの達で教育をさせるのはいいけど、わたしはいらなくない?」
「お前がもってる知識を教えてやってくれ」

「わたしはもうただのオルティアなのよ」
「それはおれの前だけだ。人前では大賢者オルティアでいてくれ」
「あなたの前だけ……し、しょうがないわね」

 魔剣使いと、びっくりするくらい身も心も綺麗な女達のやりとりにポカーンとしているセレーネ。
 彼女はまだ、自分の身に何が起きたのか理解していない。

 地上最高の家庭教師陣を用意され、最強の男が味方について。
 将来が光り輝いて、望んでいた父の国を発展させられる未来をかなえられることを。

 その事を、いまの彼女はまだ、何も気づいていなかった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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