挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

魔剣エレノア編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

17/288

16.気持ちのままに

「殿下!」

 フォティスが叫んだ、かなり切羽詰まった声だ。

 ヘレネーが上を見た。

 微笑みが消え、顔が青ざめる。

 おれも頭上を見た。

 矢が雨の様にふってきてる。砦の外に弓を構えた敵兵の部隊が見える。

 あきらかにこの一点を集中攻撃している。ヘレネー姫がの姿が見えたからしこたま射かけてきたんだろう。

「ふっ!」

 魔剣を振って、ヘレネーにあたりそうな矢を全部はじいた。

 次々と飛んできたけど、一本残さず打ち落とす。

 あきらかに外れてる矢は放置した。

 そいつらが地面に刺さる。ヘレネーとおれのまわりだけ、ミステリーサークルの様な安全地帯が出来た。

「すごい……」

「なんという剣捌きだ」

 ヘレネーとフォティスが舌を巻く。

 矢は更に飛んできたけど、今度はヘレネー姫を向いて――矢に背中を向けて、来たものを同じように全部叩き落とす。

「おれが来たから、もう大丈夫」

「はい……」

 ヘレネーは微笑みを取り戻した。

 うん、それでいい。

 が、今度はおれを見て顔色を変えた。

「その剣……もしやエレノア?」

「なんと!?」

 ヘレネー姫が言って、フォティスが目をカッと見開かせた。

 二人はおれが持ってる魔剣をじっと見つめる。

 エレノア……ってこいつのことか?」

「魔剣エレノア。心を喰らい、精神をむしばむ伝説の魔剣」

「あの形、そしてまがまがしいオーラ。間違いない、エレノア。お下がり下さい殿下!」

 フォティスがおれとヘレネーの間に割り込んできた。

 ……うん、正しい。知識も正しいし、フォティスの行動も姫を守る騎士として正しい。

 でもちょっと悲しくなる。おれがこいつを持ってても大丈夫なのは知らないからしょうがないけど、こうされるとちょっと悲しくなる。

 説明して誤解を解こうとすると。

「フォティス様!」

 今度は兵士の叫び声が割り込んできた。高いところに登って物見をしてる兵士だ。

「どうした!?」

「砦正面より敵兵の増援きました」

「これ以上くるのか……数は?」

「1000人はいるものと思われます!」

「1000! 裏切り者のキリルめ、ほぼ全ての兵力をこっちに差し向けたか。そこまでして殿下の命がほしいか」

 フォティスは忌々しく吐き捨てた。

 おれは提案した。

「とにかくここから離れよう」

「ああ、そうだな。わたしが残ってしんがりをつとめる、貴殿は殿下を連れて逃げ――」

「それよりもこっちの兵士はどれくらい残ってる?」

 フォティスの言葉に割り込んで聞く。

「約50だが……」

 50人か、それくらいならいけそうかもしれない。ダメなら何回かに分けてやればいいだけだ。

「全員をここに集めてくれ」

「何をするつもりだ」

「いいから、早く」

 おれは急かした。けど、フォティスは動こうとしない。

 迷ってるのか。まったく、そんな時間なんてないだろうに。

「フォ――」

「フォティス。カケル様の言うとおりに」

「……はっ」

 ヘレネー姫がいった。するとフォティスは渋々従って、兵士に集合を命じた。

 砦の門にかんぬきをして、ダッシュしてきた最後の兵士で全員そろった。

 おれはワープの羽を取り出した。

「じゃあ、行きます」

「何を――」

 聞いてくるフォティス。時間がないので無視した。

 ここにつくまでの途中の事を思いおこす。敵がいない中で一番近い街、エウボイにまとめて飛ぶよう念じた。

 景色が切り替わって、ちゃんとエウボイについた。

 まわりを見た。

 ヘレネー姫がいる、フォティスがいる、満身創痍の兵士達がいる。

 全員連れてきてる、成功だ。

「なっ、ここは……エウボイだと!?」

「一体何が……?」

「後でゆっくり説明する。それよりいったんはここに飛んだけど、ここは安全なのか?」

 念の為フォティスに聞く。

「あ、ああ。ここなら大丈夫のはずだ」

「そうか。じゃあここは任せる」

「任せる? 貴殿はどうするのか」

「ヘレネー姫。ちょっといってきます」

「ご武運を」

 ヘレネー姫は即答した。

 おれが何をしようとしているのかわかっているみたいだ。

 ワープの羽を使って、砦に戻った。

「だれもいないぞ、どうなってる!」

「こっちも死体だけだ!」

「ばかな、さっきまでいたはずだぞ」

 念の為、あらかじめ見繕っといた物陰にワープした。

 そこら中から男達のがなり声が聞こえる。

 守る兵士が居なくなった砦の中になだれ込んだはいいけど、生きてる人間が一人も居ない事にビックリしてるみたいだ。

「さて、やるか」

(何をだ?)

「ヘレネー姫を無事逃がしたし、こいつらをここで叩こうと思って」

(一人でか)

「ああ。フォティスは疲れてたっぽいし、部下の兵士達も満身創痍だ。おれ一人でやった方がいいだろう」

 というのは口実で、本音は――。

(とかなんとか言って、ヘレネー姫にいいところを見せたいのだろう?)

 魔剣はぴったり言い当ててきた。

「……心が読めるのかお前は」

(こんな行動をすれば誰だってわかる)

 ……ま、それもそうか。

(ええかっこしいめ)

 からかわれた。

 ちょっとむっときたおれは魔剣を担いで物陰を出た。

「! ここに一人居たぞ!」

 探索してる兵士に見つかった、そいつは大声で叫んだ。

 まわりから敵兵がわらわらと集まってくる。

 たしか話だと千人くらいって言ってたっけ。

 はじめて相手をする数だ。今までで最高の数は魔剣が召喚した死霊の軍勢で、あれは百日そこかだから、数的には十倍ってとこか。

 なんとかなるだろう、ならなかったらワープで逃げればいいんだしな。

「ああ、いや」

 おれは思い直した。

 ワープの羽を取り出した。

 目の前にいる敵兵、その後ろにワープした。

 がら空きな背中を袈裟懸けに切った。

 抵抗出来ないまま崩れ落ちる兵士。

 横にもう一人居た。いきなりの出来事にビックリしたそいつも同じように、背後に飛んで背中をばっさりした。

 ワープ&スラッシュ。

(ひどい戦い方だ)

 頭の中に響く魔剣の声、言葉とは裏腹に楽しそうだ。

 おれは口だけで笑い、更に敵兵に向かっていった。

 真っ向から斬った。

 攻撃をはじいてカウンターで斬った。

 ワープして背中を切った。

 魔剣をふるって、手当たり次第に斬った。

 斬って斬って、斬りまくった。

「うおおおお!」

 後ろから兵士に飛びつかれた。いきなりの事で、勢いのまま前のめりで押し倒された。

「こんなこと――ぐおっ!」

 下敷きになったところ起き上がろうとしたが、次から次へと飛びつかれた。

 兵士の上に違う兵士が、その上に更に違う兵士が。

 人が次から次にのしかかってきて、あっという間に小さな山ができあがる。

「いまだ!」

「誰かこいつをやれ」

 完全に地面に押し倒されて、うまく力が入らず、起き上がれない。

 別の兵士が近づいてきた、おれの頭めがけて槍を突き落とす。

 ピンチだ。

 そう、昨日までなら。

 ワープの羽を使った。

 積み上がった兵士達を残して、おれは一メートル横にワープした。

 すっくと立ちあがる。何事もなかったかのように。

 魔剣を握りなおして人の山に振り下ろす。

 山を真っ二つにかち割った。

「な、なんだこいつは……」

「ば、化け物だ」

「こんなのと戦ってられるか」

 それを見て、かなりの兵士が戦意喪失して逃げ出した。

 向かってくるのは切り捨てて、戦意を喪失したのは放っておいた。

「ええい、どけ!」

 しばらくして、兵士を押しのけて一人の男がおれの前に現われた。

 格好が他と違う、鎧がやたら立派だ。こいつらの指揮官か?
「お前は」

「おれはキリル・スラヴ。お前は何者だ! ヘレネーはどこへいった」

 キリルと名乗った男。その名前に聞き覚えがある。

「お前がキリルか。ヘレネー姫を裏切ったっていう」

「それがどうした」

「いや、どうもしない」

 どうもしないけど。

 ザシュ!
 魔剣を横に振った。キリルの首が飛んだ。

「活かしておく理由はもっとない」

 キリルが死んだ。すると兵士達はたちまちパニック状態に陥って、我先に逃げ出した。

 砦の水場で返り血を落とした後、ワープでキリルの首を持ち帰って、フォティスに渡した。

 フォティスはすごくビックリして、どうやったのかと聞いてきた。

 斬って斬って斬りまくった、としか言いようが無いので、その通りに答えた。

 フォティスはメチャクチャビックリした。

 それはどうでもよかった。

 というか、さっきから胸のあたりがムカムカする。なんだこれは。

「わたしは」

「え?」

 いきなり真剣なトーンになるフォティスをみた。

「はじめて戦場から帰ってきた部下によくこういう。心をもてあましたら、女でも抱いてみろ、と」

「……」

 何も答えないでいると、フォティスも何も言わないで去って行った。

 言いたい事はわかった、ついでに胸のムカムカも分かった。

 よく聞く言葉がある。

 たぎりを鎮める。と。

 つまりこの胸のムカムカはそういうことで、鎮めるものなんだと分かった。

 見透かされたのはむかついたけど、分からせてくれたことには感謝する。

 もふもふしよう。

 ミウをもふもふして、もふもふして、朝まで徹底的にもふもふしよう。

 そうすれば収まるはずだ。

 ワープの羽根を取り出して、屋敷に飛ぼうとした。

「カケル様」

 ヘレネーの声が聞こえた。近づいてくる彼女の方を向く。

「ご無事で何よりです」

「うん」

「あら、お顔に傷が」

「え?」

 おれは自分の顔を触った、触ったところがちょっとだけずきってした。

 攻撃なんて一切うけてないはずなのに……もしかして組み敷かれた時に擦ったのかもしれない。

 ヘレネー姫がハンカチのようなものを取り出して、おれの顔をふいた。

 絹のハンカチ越しにぬくもりが伝わってくる。香りが鼻をくすぐる。

 胸がムカムカする――たぎっている。

 ヘレネー姫は拭いたあと、おれの顔をじっと見た。

 じっと見て――目をそっと閉じた。

 その華奢な肩に手をかけて。

 おれは、ヘレネーにキスをした。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ