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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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164.存在感

 アイギナ王国正規軍。
 千騎・飛鷹将軍イシゴニス率いる総勢五千の兵がとある砦を攻めていた。
 その砦は少し前から山賊の集団に占拠されていた。
 名前は「赤いクチバシ団」。
 さほど悪さをするでもなく、100人程度という小勢であることから放置されていた集団だが、そこにアイギナ正規軍の五千名が押しかけた。
 5000人に守られたテントの中で、そのイシゴニスがつぶやいた。

「この兵力差で戦うことになるとはな」
「なにかいった?」

 イシゴニスのつぶやきに反応したのはこの場にふさわしくない妙齢の少女。
 アイギナ王女、セレーネ・ミ・アイギナ。
 彼女は武尉として従軍していた。
 ……名目上は。
 こんなことさせられる羽目になったわがまま王女を、イシゴニスが極力感情を抑えた口調で答えた。

「いいえ、そろそろ斥候が戻ってくる頃かと、と」
「ふうーん」

 興味なさげなセレーネ。
 しばらくして、イシゴニスのいい訳通り、斥候が報告のためにやってきた。
 潜伏したためにあっちこっち体が汚れている男に、セレーネは眉をひそめて見ないようにし、イシゴニスは普通に接した。

「どうだった」
「確認してきました。数は約二百、全員が砦の中にはいってます」
「前情報よりふえたか。まあそれでも二百だが」
「バシリオス」

 イシゴニスが大声で呼んだ、外から一人の青年が駆け込んできた。

「はっ」
「全軍に攻撃を開始させた」
「全軍ですか」

 若い兵士は「正気ですか」という目をした。
 イシゴニスはちらっと(相手には分からない様に)セレーネをみて。

「勝利だ、とにかく勝利だ」

 バシリオスが苦笑いした。
 将軍様も大変ですね、という表情をした後。

「わかりました。全軍進撃させます」

 といって出ていった。

「イシゴニス」
「はい」
「あたしは何をすればいいの?」
「ここにいらしてくださるだけでよろしいかと。わたくしもここにいます。指揮官たるもの、勝ってる時はでーんと構えて。負ける時はさっさと逃げるものです」
「逃げるの?」
「ええ。総指揮官はつかまっても殺されても大事です。全ての権限を譲渡して、さっさと逃げるのも仕事です」
「ふーん」

 セレーネはいかにも興味なさそうに言った。
 今の話もきっと理解されてないんだろうな、とイシゴニスは思った。
 それでもいい、どうせ王族の出世ごっこだ。
 大軍をだしたのも、そのごっこに付き合って兵を死なせたくないという思いから来るもの。
 5000対100――200になったが、この兵力差なら犠牲をほとんど出さずにすむだろう。
 遠距離射撃に徹せば無傷もあり得ない話ではない。
(さっさとこんなことは終わらせたいものだ)
 そう思い、勝利の報告を待っていたイシゴニスだった。
 勝利の報告はいつまで経っても来なかった。
 戦闘の音が続いている――戦いが続いている。
 イシゴニスの予想を遥かに上回って戦いが続く。
 どうしたんだ? と、訝しみはじめたその時。

「報告!?」

 バシリオスが慌てて、転がるようにテントに駆け込んできた。

「どうした」
「第一陣の五百人隊、壊滅!」
「なんだと!?」
「なに? なにが起きたの?」

 セレーネを無視して、バシリオスに聞く。

「どういう事だ、壊滅って何があった。何をされた。魔法か? 罠か?」
「いえ、それが真っ向からぶつかって……壊滅させられました」
「真っ向から……? まさか!」

 イシゴニスが血相を変えて、聞く。

「あ、相手は? 男か? に、二刀流の男か?」
「わかりません」
「それを探れ! もし二刀流の男ならすぐに全軍撤退命令だ! これは確認を必要としてない最上級命令だ!」
「え? し、しかし相手は二百――」
「この状況で二刀流の男ときいて連想も出来ないのか!」

 怒鳴るイシゴニス。
 さっきまでの余裕がもうなかった。
 そんなイシゴニスの形相に、青年バシリオスも顔が強ばった。

「――魔剣使い!」
「そうだ」
「わかりました!」

 バシリオスがテントから飛び出る。
 しばらくして、報告に戻ってきた。

「将軍! 二刀流の男ではありませんでした。賊のリーダーじゃ長い髪の女とのこと」
「そ、そうか……」

 見るからにほっとするイシゴニス。
 魔剣使いの男ではなかった、女というからには変装でもないのだろう。
 それで彼はホット胸をなで下ろした。

「いったいどういう事なのよ!」

 さっきからわめき続けてるセレーネ。
 魔剣使いじゃないとしって、わがまま王女に対応する余裕も出来た。

「すみませんでした殿下。最悪の事態かもしれなかったので」
「最悪の事態ってなんなのよ」
「相手が魔剣使いかもしれなかったのです。つまり我が国の子爵閣下でもあらせられられます、カケル・ユウキ様がお見えになられたのかと」
「子爵? なんでそいつが。ってかそいつがいたらどうなるのよ」
「全滅します」

 イシゴニスがシンプルに言い放った。
 それを聞いて、きょとんとするセレーネ。

「は? なに馬鹿な事いってるのよ。こっちは5000人いるのよ」
「一万でも足りません」

 イシゴニスが更にきっぱり言い放った。

「ご存じの通り、相手はレッドドラゴンを単身で討ち滅ぼす程の力の持ち主。戦術を容赦なく踏みにじる戦略的な存ざ――」」
「は? レッドドラゴン? なにそれ」

 そう話すセレーネを、イシゴニスは一瞬だけさげすんだ目になった。一瞬でそれを引っ込めたのはもう慣れたからだろう。
(オリビア事件ところか、レッドドラゴンそのものすら知らないのか)
 心の中で密かにため息をつきつつ、表情と態度を取り繕いつつ、言った。

「とにかく危険な相手という事です。しかしそうでないのならなんの心配もいりません」
「ふーん。でも子爵じゃん? 所詮は」
「……そうでございますね」

 呆れるイシゴニス。これ以上何をいっても仕方ないと思って、何もいわないことにした。
 しばらくして、またバシリオスがやってくる。

「報告。必死の抵抗にあってるますが、こちらがじわじわと押し込んでおります。もうしばらくで殲滅出来るかと」
「そうか。ふむ、そうなるとその女が惜しいな。敵のまま死なせるには惜しい存在」
「同感です」
「そして、可能ならこれ以上の損害は出したくないな。何かないか」
「お人が悪い、将軍様の方がいい方法を思いついてるでしょうに」
「いろいろな意見が聞きたいのだ。経験上、十人の部下に聞けば二回に一回は私よりもいい意見が出る事を知っているのだからな」
「十人いてようやく将軍様と互角ですか」

 バシリオスは苦笑いした。

「それでしたら、雑兵をいたずらに投入するよりも、名誉と地位をエサに腕に自信のある人間を少数投入すべきかと」
「ほう」
「ついでに人材発掘にもなります。今回は特に新兵もつれてきてますので」
「そうだな、それをやってみようか」
「いいのですか?」
「わたしもほぼ同じ考え方をしていたところだ」
「なるほど」

 イシゴニスはセレーネに振り向いた。

「よろしいですな、殿下」
「なにをさ」
「……今の話を。出世をエサに相手を崩せる志願者を募ると言う話」
「出世? じゃああたしが行く」
「お待ちください!」

 慌ててとめるイシゴニス。
 まさかそう来るとは思ってなかったと言う表情で、思わず大声をだした。

「殿下がおいでになられるほどの事ではありません」
「でも出世なんでしょ、あたしはそのために来てるのよ」

 そういえばそうだった、とイシゴニスは苦笑いした。
 さてどういって宥めるか、と思っていると。
 バシリオスが代わりに口を開いた。

「僭越ながら申し上げます。戦功の中には、起用や推挙での戦功があります」
「なにそれ」
「有能な人間を見いだして推薦した者に対する功績です。指揮官、文官ではむしろ重要なことです」
「へえ」

 そう言ったバシリオスと目が合った、イシゴニスはほっとした。
(うまいな)
 そうおもい、その路線で話をすすめた。

「推挙したものが立てた戦功はほとんど推挙した方の者になります。複数人を推挙して、それらが全員戦功を立てれば一人で複数人分の戦功を得ることが出来ます」
「なにそれいいじゃん」
「ですので、何人か候補をつれてきますので、殿下はお眼鏡にかなった人を選んでいただければ」
「そっか、そうね、わかったわ」

 イシゴニスはバシリオスを連れてテントから出た。

「たすかった」
「いえ。なんとかフォローできてこっちもほっとしてます」
「しかし、お守りは想像した以上に大変だ」
「聞かなかったことにします」
「念の為に確認する。本当に魔剣使いではないのか」
「それらしき男の姿はありませんでした、それにわずかですがこちらが押しています」
「そうか。本当に魔剣使いがいたのならほんの少しでも押せるはずがないものな」
「それほどのものなのですか、魔剣使いというのは」
「生涯敵としてまみえたくない相手だよ。あれは……トラウマになる」
「……そうならない様にいのります」

 苦い顔のイシゴニス、ごくりと固唾をのんだバシリオス。
 二人は知らない。
 彼らが敵にしたくないといった魔剣使いは。
 今、まさに。

 真横にいるということを。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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