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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

魔剣エレノア編

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15.姫を助ける

 昼、山ウシ狩りのノルマをクリアした後、おれは屋敷の部屋で扇子を眺めていた。

 ヘレネー姫の扇子。もらってからずっとベルトにさしてた扇子。

(なんだそれは)

 魔剣が頭の中で聞いてきた。

 最初は我を手放せってうるさかったこいつも、くじ引きの後何を思ってかあまりそれを言わなくなった。

「ある人を助けたときにもらったもの」

(一目惚れか)

「うっ」

 言葉に詰まった。そうかもしれない。

 一目見たときからその綺麗さに目を奪われた。

 金色の長い髪、穏やかな物腰と、気品のある振る舞い。

 全てが「お姫様」の様な人。

「彼女、大丈夫かな」

(心配なのか? なら会いに行けばいいではないか。羽を使って)

「どこに居るのかわからないから」

 念のために羽を出して、ヘレネー姫の所ってワープを念じてみたけど、ウンともスンとも言わない。

 多分はっきり「場所」を決めないとダメなんだろう。

「ご主人様」

 ドアをノックする音とミウの声が聞こえた。

「どうした」

「失礼します。あの、ご主人様にお客様が」

「客? どんな人?」

「えっと……お姫様? なのかな」

「えっ」

 胸が高鳴った。

 お姫様って、まさか。

 魔剣をひったくって、部屋の外に出る。ミウが後ろを慌ててついてきて、言った。

「応接間に通してます」

 早足で応接間に向かう。

 中に入ると。

「あっ……」

 思わず声が出た。

 そこに居るのはヘレネー姫じゃなかった。

 その妹、イリス・テレシア・メルクーリ、イリス姫だった。

 ちょっと肩すかしを食らった気分――だったが。

「カケル」

 イリス姫の困った表情を見て、それが吹き飛んだ。

「姉上を助けにいってほしい」

 おれがソファーに座るなり、イリス姫がそんな事をいってきた。

「姉上ってヘレネー姫のことか? 何があった」

「姉上は今前線に赴いておられる」

「ああ、確か慰問とか言ってたっけ」

 ヘレネー姫を助けた時の事を思い出す。

「そうだ、蛮族の討伐戦、その前線だ。ほとんど平定されているので、王族の誰かが出向いて慰問ついでに戦後処理をする話になっていたのだ。それで姉上が出向いたのだが……」

「だが?」

「現地の指揮官が蛮族に寝返ったのだ。それで一気に話がひっくり返った」

「寝返ったって、じゃあヘレネー姫は!?」

「守護騎士のフォティスがぎりぎりで異変を察し、逃がした。今は寡兵で近くの砦に籠城しているようだ――そこに行ってほしい」

「おれが?」

「そうだ。無論増援の軍を差し向けるが、編成に時間がかかっている。その前に姉上だけでも救い出してほしい」

 姉上だけでも、という言葉は切実だった。

 行間を読み切ると、籠城してる兵士達を全員見殺しにしてもヘレネー姫だけは助け出してほしい。そんな切迫感がイリスから感じる。

 強い思い、間違いない。だからある疑問を感じた。

「いいのか? おれなんかに頼んで。裏切られたばかりだから、もっと信用のおける人に頼むのが普通じゃないのか?」

「その扇子」

 イリスはおれの腰の辺りを指す。そこに肌身離さず持っているヘレネーの扇子がある。

「姉上のものだろう? カケルと最初にあったときも、そして今も。ずっとその扇子を腰に差していた。大事そうに。そのカケルならば、と思ったのだ」

「そっか」

 扇子に触れる。確かにこれは大事だ、そしてこれの持ち主――ヘレネー姫はもっと大事だ。

 助けろと言われたら、もちろん命をかけてても助けにいく。

 そういうことならとおれは納得した。

「それに」

「うん?」

 首をかしげてイリス姫を見る。

 それに――なんだろう?

 イリスはおれをまっすぐ見つめた。

 ぴんと伸ばした背筋、迷いのない顔で。

「わたしは、カケルなら信じられる」

 不意打ちだ。その顔は卑怯だ。

 そんな目で見られたら、期待にこたえるしかない。

     ☆

 おれは馬に乗っていた。

 ロイゼーンの街を出発して、馬を全力で次の街・レイウースまで走らせて、そこでイリスが手配した新しい――元気な馬に乗り換えて次の街に行って、また元気な馬に乗り換える――。

 馬を次々と乗り換えて、全速力でヘレネー姫が籠城しているという、エウボイ地方の砦に向かった。

 砦から一番近い街で馬に乗り換え、更に地図をもらう。

 そうして到着した砦。

 小さくて、木の柵で囲んだ簡単な砦だ。

(煙が上がってる、手遅れか?)

 魔剣が頭の中でいう。

 おれは目を凝らした。上がった視力でみえたものは、砦が包囲されてて猛攻撃を受けている光景だ。

 おれはほっとした。

「まだ抵抗が続いてる、間に合ったぞ」

(そうか)

「お前を使わせてもらうぞ」

 魔剣を握り締める。物騒な武器だけど、今はそれが頼もしかった。

(いいだろう。その代わり後で我の望みを一つ聞いてもらうぞ)

「手放したり誰かに危害を加えろとかいうのなら聞かないからな」

 念押しして言う。

(ふっ。我の力、存分にふるうがいい)

 魔剣の刀身から黒いオーラが漏れ出すようになった。

 マリが体を乗っ取られた時と似た見た目。もちろんおれは乗っ取られてない。

 が、何となくわかる。今のこいつはさっきよりも強い。剣としての強さが増している。

 魔剣を握り締め、馬から下りて、敵に突っ込んでいった。

 砦の門に向かって一直線に走った。

 おれを見た兵士が戸惑うが、無視して、邪魔になったヤツを切り伏せて進む。

 「敵襲」の怒鳴り声が聞こえた後、兵士があきらかな敵意を持ってわらわら群がってきた。

「ザコが! どけえ!」

 魔剣をふるって、向かってくるものを切り捨てる。

 斬りまくって、どんどん先に進む。

 100人くらい切り捨てると、砦の門にたどりつく。

 門の向こうに顔見知りが見えた。

「フォティス!」

「貴殿は――っ!」

 ヘレネー姫を助けたときに居た騎士。フォティスは門の向こうでおれの出現に驚いた。

 背後から兵士が迫るのを感じる、あまり余裕はない。

「イリス姫に頼まれてきた! 門を開けてくれ」

「イリス殿下が? し、しかし」

 フォティスは迷った。本当に開けても良いのかと言う感じで。

「くっ」

 背後から敵兵が襲ってきたので、振り向きざま切り捨てた。

 門を背負って戦う形になった。

 元々一番敵兵が群がってくるポイントだ。そこで戦うきつさは、敵の背後を突いて突破した時の比じゃない。

 斬っても斬っても、波のように押し寄せてくる敵兵の圧力がすごかった。

 このまま全滅させるまで戦うしかないのか、と思ったその時。

「フォティス」

 聞き覚えのある声だ。振り返るまでもなく、誰のものなのかわかった。

 ヘレネー姫。無事な声におれはほっとした。

 が、フォティスは焦り出した。

「殿下! ここは危険です、おさがりを――」

「門を開けなさい」

「しかし――」

「あけなさい」

「……御意」

 やりとりのあと、門が開く音がした。

「今のうちに、早く」

「わかった。おおおおおお!」

 魔剣を両手で持って、頭上から真下に――地面にたたきつけた。

 爆音とともに地面が揺れる、たたきつけたとこに大きなクレーターが出来た。

 敵兵が足を取られる、クレーターに戸惑って進めない。

 その間おれは砦に入って、門が無事閉まった。

 そこにヘレネー姫がいた。

「ヘレネー姫」

「カケル様」

 しばし、見つめ合う。

「助けにきた」

 思いの全てを込めて、言った。

 姫は、大輪の花が咲いたかのように微笑んでくれた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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