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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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158.たたき上げの王女

 アイギナ王国、首都レティムに「夏の宮殿」と呼ばれる水と緑あふれる王宮がある。
 元々は五代前の国王が愛妃のために立てた離宮だったのだが、国王が愛妃を喜ばせたいが為に増改築を重ねた結果、元の王宮よりも規模も豪華さも上回ってしまった。
 その過ごしやすさもあって、現在ではここを夏の宮殿、元のものを冬の宮殿と呼び、国王が季節ごとに住み替わって国政を執り行っている。
 その夏の宮殿の中の一室に、セレーネ・ミ・アイギナがいた。
 年齢は十六歳、現アイギナ王から生まれたたった一人の王女で、花よ蝶よと育てられた少女である。
 誰にも叱られず、甘やかされ放題で育ったため、王族以外の人間を人間とも思っておらず、それどころか例え王族であっても、長兄である皇太子キモンなどにはわがままの言いたい放題である。
 そのセレーネが側近のアブラアムという男を呼び出した。
 国王の玉座よりも豪華に設えた椅子に座るセレーネと、彼女にかしづくアブラアム。
 セレーネは黙っていればかわいい顔にわがまま娘特有の主張が強い表情を浮かべさせて、言った。

「兄上の事はまだ見つかりませんの?」
「はっ。マロネイ郊外にて皇太子殿下が率いて出撃した2000の兵が全滅しているのが見つかりました」
「ふーん、兄上はその中にいたの?」
「現在確認を急がせておりますが、未だ確認されておりません」
「でもさあ、兵が皆殺しにされたんでしょ、兄上だけ生き残ってるって事はないじゃん」
「それは……その……なんとも」
「何よなんともって」
「その……いえ……」
「もっとはっきり言いなさいよ!」

 セレーネは立ち上がって、前足を振り上げてアブラアムを蹴った。
 つま先が男の下あごにクリーンヒットして、たまらず体ごとのけぞってしまう。
 部屋の入り口に衛兵が立っていたが、いつもの光景なので表情一つ変えずに護衛を続けた。
 セレーネは椅子に座りなおって、アブラアムは血が出るのも構わず再び片膝をつく姿勢で報告をした。

「じょ、常識にかんがえてお亡くなりになったか、捕虜になったものかと思われます」
「ふーん。捕虜になったらどうなるの?」
「その場合犯人から何かしらの要求が来ると思われますが、現時点で何もないため、その可能性はかなり低――」
「だったら言うな!」

 もう一度アブラアムのあごを蹴り上げた。
 鮮血が飛び散って、高価なじゅうたんを汚してしまう。

「兄上は死んだ、そう思っていいんだよね」
「……はっ」
「ふーん。兄上が死んだって事はさ、誰かが代わりに政治をしなきゃいけないのよね。父上は病気で休養してて、兄上に一任してるんだから、その代わりがさ」
「……おっしゃる通りでございます」
「よし、あたしがやろう」
「せ、セレーネ殿下がでございますか」
「何よ、文句あんの?」
「いえ、滅相もございません」

 アブラアムは慌てて手を振った。三回目の前蹴りが飛んで来そうだったからだ。
 だからといってこのままセレーネが国政に手を出すのを見過ごす訳には行かない。アブラアムはアイギナに忠誠を誓った男であり、子守(、、)で理不尽な扱いをうけているが、それで忠誠を損なう事は一切ない。
 かれは必死に頭を回転させて、なんとかセレーネを止める為の方法を、理由を探した。

「……ただ、今すぐにというのは難しいかと存じます。ご存じの通り、キモン殿下は自らを『総理王大臣』と名乗り、その肩書きをもって緒臣民を従わせてきました」
「ふーん、じゃああたしも総理王大臣になればいいんだよね」
「いえ。総理王大臣の『総理』は摂政、鎮国の宝クシフォスになぞらえた官吏十七等級で最上位に位置するものでございます。現在王女殿下は無官、事実上の十八等級。三等級以上の特進は国王陛下のご命令にのみ可能でございますので」

 アブラアムは有能に分類される男だった、頭の回転が速く、王国のあらゆる法律や制度に精通している。
 だからかれは一瞬で、合理かつ合法的にセレーネの思いつきを却下する理由を思いついた。
 普通ならばそれで良かった。

「父上の命令って、父上は今病気で寝たきりで話す事もできないじゃん」
「であれば摂政たるキモン殿下のご命令が」
「兄上死んでんじゃん!」

 またアブラアムを蹴った。彼はそれを甘んじて受けた。
 あごへのケリ一発……何発かで国を守れるなら安いものだ。そう思った。

「申し訳ございません」
「なんとかならないの?」
「国王陛下の命がなければ、なんとも……」
「むぅ……なんかむかつくわねそれ」
「……」

 アブラアムは黙った、このまま引き下がってくれる事を祈った。

(大丈夫だろう。法で決まっているのだ。そして陛下はご命令を出すことはないだろう。いろんな意味で)

 彼はそう思った。
 本来ならば彼の判断はまったく正しい。
 だが、アブラアムは常識人だった。
 そして、セレーネは世間知らずのわがまま王女だった。

「ねえ、例えばさ、あたしが二等官吏を一等にする事はできるの? 一階級の昇進じゃん、それ」
「はあ……それは……まあ、王女殿下でしたら」

 アブラアムは嫌な予感がした。が、まだいいと思った。
 二等官吏の顔ぶれを一瞬で頭の中に思い浮かべた。だれが総理になってもセレーネよりは億万倍ましである。

「三等から二等は? もちろんできるよね」
「そうでございますが」
「むふ」

 アブラアムは嫌な予感がした。ものすごく嫌な予感がした。

「ねえ、一番下っ端の官吏、十七等級のヤツってどんな役職があるの? 適当に一つあげてよ」
「厩番、でしょうか。殿下達の馬を世話する係でございます」
「よし、じゃあ人事を発令しちゃう。セレーネ・ミ・アイギナの名において、セレーネ・ミ・アイギナを厩番に任命しちゃう」
「……はい?」

 何を言われたのかわからなかった、アブラアムの常識を遥かに超えていた。

「だーかーら、あたしの事をその厩番とやらに任命するのよ」
「な、何故にでしょうか」
「昇進するために決まってんじゃん。一番下っ端から一つずつ昇進していけばいいんでしょ。あたし(厩番)がなんか仕事して、あたし(王女)が気に入ったら一階級ずつ昇進させられるじゃん?」
「……」

 唖然と、アブラアム。
 そんなのありか、ありなのか?
 いや理屈としてはアリだ、法的にも問題はない。
 問題なのは、アイギナ王国第一王女、厩番(うまやばん)、セレーネ・ミ・アイギナが誕生するようなあり得ない事態だ。
 アブラアムはついて行けなかった、止められなかった。
 こうして、アイギナ王国第一王女、厩番(うまやばん)、セレーネ・ミ・アイギナは「功績」を積み上げて昇進していき、一ヶ月後には「たたき上げ」としてアイギナ王国第一王女、総理王大臣、セレーネ・ミ・アイギナが誕生するのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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