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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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149.魔王

 街の中心部になだれ込んできたアイギナ軍。

 それを率いる中年男、アイギナ王国第一王子・総理王大臣、キモン・モ・アイギナ。

 そいつが馬の上に乗って、半ギレで指示を飛ばしてる。

 兵があっちこっちに飛んでは、報告に戻ってきてそいつに殴り飛ばされてる。

 777倍の聴覚が拾った会話は全部、暴動が起きてません、ふざけるなもっとよく探せ。だった。

 荒れ狂ってるキモンとアイギナ軍に怯えて、街の住民はほとんど建物の中に引きこもってる。

 おかげで町中アイギナ兵だらけだ。

 しかし、訳のわからん肩書きもってるヤツだな。

(貴様ほどではない。魔剣使いの五爵様)

「あれは別にこっちが名乗った訳じゃない」

 魔剣使いの五爵様。

 エレノアの使い手にして、この世界にある五大国全部から爵位をもらってるおれにいつの間にかついた呼び名だ。

(貴様ももっと肩書きをつけてみるか?)

「いらん」

(名乗った時かっこいいぞ?)

「かっこいいのか? それ」

 よく分からん。

「そういうのは本当にいらん。百歩譲って魔剣使いだけでいい」

 ひかりがいるからな。

 エレノアとどうでもいいおしゃべりをしながら、しばらく様子見した。

 マロネイにある感染者はおれが一人残らずレイウースに移動したから、この街にはそういうのはもう一人もいない。

 いくら探しても、暴動は出てこない。多少の乱闘の痕跡はあるが、やってる人間はもういない。

 兵が戻って報告する度に、キモンの顔が怒りにゆがんでいくのが分かる。

 そんなはずがない、もっとよく探せ。ってその度にわめいてる。

「そんなはずはない、か」

(しかけた張本人だものな)

「ああ、デルフィナの話を聞いた時は半信半疑だったけど、あの反応ならそうだろうな」

(間違いないだろうな)

「エレノア。あれは人間か?」

 コモトリアの一件があって、おれはそれが気になった。

 アウラの父親、コモトリア王の側室に化けていたトカゲ女。

 今回の人間に取り憑いてた黒い物はあのトカゲ女が使ってた物と似てる、そしてしかけたのはキモンでほぼ間違いない。

 もしかしてこいつも人間じゃない、って思った。

(見ただけじゃわからん)

「やってみないとってことか。ま、そうだな」

(やるのか?)

「ああ」

 見つめる先にデルフィナが現われて、交渉でキモンをやり込めてるのが見えた。

     ☆

 キモン率いるアイギナ軍はすごすごとマロネイから退散した。

 2000人という兵を動かしてマロネイ入りしたが、そもそもが戦争ではなく政治である。

 そこに暴動がなければキモンにはなにも出来ない、引き上げざるを得ないのだ。

 そのままそこにいればデルフィナにつけ込まれる口実を与えてしまうし、何よりも――。

「くそっ! これではいい笑いものだ!」

 軍勢の中程に守られてる、馬上のキモンが忌々しく吐き捨てた。

 そう、キモンが気にしているのは何よりもそれだ
 アイギナ王国第一王子、総理王大臣。

 老齢の国王に代わって政務を取り仕切る第一王子、実務上それだけで充分だった。

 しかしそこに「総理」、更には将来の「王」とつけたのは本人の見栄っ張りな性格かくるものに他ならない。

 それだけであればまだ野心家として一種の傑物にもなり得たのだが、生来の小心ぶりが高じて、国王に異心がないことを示すため最後にあくまで臣下である事を示す「大臣」とつけた。

 そうして出来たのが、総理王大臣という前代未聞のワードである。

 つまりそれは彼の複雑な心理をひとまとめにしたものでもある。

 自分を実力以上に見せたがる人間は往々にして大仰な肩書きをつけるものだ。キモンも例に漏れずそういう人間である。

「おい! これはどういうことだ!」

 キモンが叫ぶと、まわりの空気が一変した。

 男が現われた。

 青と黒の中間にある肌の色、鋭い牙に側頭部から生える角。

 あきらかに人間ではないものが、人間ではあり得ない現れ方をした。

「けけけ、荒れてるなあおい」

「ごまかすな! これはどういう事なのかと聞いてる」

「まあそういきり立つな、匂いは残ってたんだ。それに騒ぎの跡もあったんだろ?」

「ああ。兵から報告を受けた」

「なら誰かが片付けたってこった。騒ぎの原因は片付けたはいいけど後始末まで手が回らなかった。要するにギリギリだったんだよ、むこうもよお」

ホメーロス(金の亡者)か。ふん、豪腕のヤツが無理矢理片付けたのか」

「そういうこった。次はもっと早くかけつければいいだけのこった」

「次の大量感染はいつ頃になる」

「けけけ、種はまいてるんだ、次はもっとはええ。三日後ってところだな」

「前もって兵を動かしとくか」

「それがいいんじゃねえか。けけけ」

 キモンは馬にのって考え込んだ。

 確かに空振りをしたことは腹がたつが、状況からして相手もぎりぎりだ、次は早めに動けば今度こそ目的を達成できるだろう。

 彼が思考に耽っている間、呼び出したものは横を歩いていた。

 召喚された人間ではない者が並走しているのにもかかわらず、兵士は誰一人としてそのものを見ない。

 見て見ぬ振りではない、そうする人間は逆にわざと意識をそらすものだ。

 兵士達はいたって普通に、集中力が自然とばらけている。

 そこに何もない、異質なものなど何も見えない、と言わんばかりの反応である。

 その反応は、しかし別の物に破られる。

 進軍が止った、前方から騒ぎが起きる。

「なんだ、どうした?」

「ご、ご報告申し上げます!」

 一人の兵が慌てて、半ば這うようにして前方からキモンのところにやってきた。

「敵襲です!」

「敵襲だと? 賊か? 数はどれくらいだ」

「ひ、一人です」

「はあ? 何を言ってる」

「一人です! 敵は一人です!」

 狂ったかのように一人だと繰り返す兵士。

 キモンは前線を見た。

 馬に乗ってる高さから見下ろす。

 見えたのは、一つの異質な存在。

 漆黒のオーラを立ちこめらせる存在。

「なんだあれは」

「けけけ、まじいなこりゃ」

「知ってるのか?」

「ありゃあ魔剣使いだ」

「魔剣使いだと!?」

 驚愕し、さらに前線を凝視。

 血風に舞う漆黒。おぼろげに見える男の手に、まがまがしい程の魔剣があった。

 魔剣エレノア。この世界でおそらくもっとも有名な造形物。

 もともと有名だったのが、近頃そのレプリカが出回って、ますます有名になっていった。

「本物……なのか?」

「間違いねえ、ありゃあ本物だ」

「くっ、なんで魔剣使いがっ。いや待て、一人だと? 魔剣使い一人だというのか!」

 兵士に怒鳴りつけるようにきく。

「は、はい!」

「つぶせ! こっちは二千人いるのだ、魔剣使いといえど相手は一人、ならば数で押しつぶせ。全軍に伝えろ、魔剣使いの首を取ったものに男爵……いや子爵を与えるとな」

「――はい!」

 兵士が伝令に走った。

 公侯伯子男。爵位は五等級にわかれてて、キモンはいきなり下から二つ目の爵位を褒賞にした。

 それが瞬く間に広がる、士気が一気にあがった。

 さっきまで徐々に広まっていた動揺が吹き飛び、兵が我先にと魔剣使いに殺到する。

「……」

「どうした、いきなり黙り込んだ」

「けけけ、ここでおさらばだな」

「は?」

「魔剣使いがでてきたんじゃもう潮時だ。おれ様はここで手を引くぜぇ」

「何をいってる。魔剣使いがなんだというのだ。あんな剣士一人、この兵力の前ではひとたまりもない」

「わりいな、流石に魔剣使いが出てきたんじゃもうかかわれねえ。力は引き上げる、悪く思うな」

「なっ、待――」

「じゃあな」

 キモンに虚脱感が襲う、体の中から何か大事な物が抜き出された、そんな感覚だ。

 思わず馬から落ちそうになる。

「けけけ、じゃな――」

 後始末(、、、)を終えた人外の者が姿を消そうとした。

 その、瞬間。

「なっ!」

 その目の前に一人の男が現われた。

 自信に満ちた瞳、全身に漆黒のオーラを纏い。

 ついさっきまで血風を巻き起こしていた、両手に魔剣を持つ男。

 男はいつの間にかアイギナ軍のど真ん中に出現した。

「ビンゴだな」

 にやりと嗤う男、その姿は。

「ま、おう……さま?」

 人外の者を圧倒を圧倒するほどだった。

「違う、魔剣使い! くそ! 逃げねえと」

「逃がすわけないだろ」

 オーラが腕のように伸び、人外の者の頭をまわしづかみにする。

「洗いざらい、喋ってもらうぞ」

 敵軍の中心で、男は全てを圧倒していた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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