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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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147.億万のデルフィナ

 ベッドにデルフィナを寝かせて、オーラの黒衣を纏う。

 オーラの腕を伸ばし、頭をつかんで、引っ張る(、、、、)を意識する。

 ズルッて感じがして、黒いのをデルフィナの中から引っ張り出した。

(手慣れたものだな)

「こんなもんだろ」

(むしろ最初から手慣れてた気もするな。似たような事をやってたのか?)

「ん? ああ、ツマヨウジで巻き貝から中身をほじくり出す、あんな感じか?」

 エレノアに言われて記憶を探ってみた。微妙に違うけど、手応えって言うか感触って言うか、それが一番近そうな気がする。

(くく、ユニークなたとえだ。だが巻き貝に例えられた女はたまったものじゃないな)

「無理矢理例えさせたのはお前だろうに」

 エレノアにデコピンした、澄んだ綺麗な音が部屋に響き渡る。

 黒いもやを離した、そいつは空中にぶかぶか浮かんで、気流にのる風船のように部屋の中を飛び回った。

 デルフィナのそばに近づいたりもしたけど、もう一回取り憑くことなく(しようとしてもその前にとめるが)、またふらふらと飛んでった。

 やがて、空気に溶ける様に徐々に薄くなって、最後は跡形もなく消えてしまった。

(元の宿主に戻るわけではないようだな)

「そうみたいだな」

(男の中からつまみ出したのとほぼ同じ。いままでの連中ともな。分裂ではなく、増殖とみるべきだな、これは)

「何か条件を満たした人間の中で同じものが生まれるってことか?」

(状況的にはな)

「一回綺麗さっぱり根絶させないとダメか」

(あるいはどこかにある根源を絶つか、だな)

「あるのか、根源」

(あるだろう)

 エレノアはちょっと呆れた、まるで鼻で笑ったような反応をした。

(養殖臭がするのだ、自然発生ではない)

「お前がかつてやってた事と同じ、か」

(ふっ)

 エレノアは否定も肯定もしなかったが、そういうことなんだろうな。

 自分もやってたから分かる、というのは説得力がある。

「絶つぞ、根源」

(そう言うと思った)

 エレノアは楽しげな含み笑いをおれの頭の中に響かせた。

 しばらくして、デルフィナが目を覚ました。

 薄目を開けて、焦点の合わない瞳でまわりをきょろきょろして。

「カケル……様」

「気が付いたか。調子はどうだ」

「……生きてるのですね、まだ」

「実は死んでて、ここはあの世かもしれんぞ」

「ご冗談を。あなた様がどうにかなってあの世に行く事はあり得ませんわ。カケル様がいる以上、ここはまだ現世と言うことになりますわ」

「甘いな」

「なにがでしょう?」

「方法が見つかったらあの世に殴り込む事もあるかも知れないぜ?」

「なるほど。そうですわね、その可能性も十二分にありますわね」

 デルフィナは微笑みながら体を起こす。

 顔色があまり良くないけど、そんなに悪くもない。

 軽く風邪を引いて病み上がり、って感じだ。

「……話を」

「ん?」

「話をお聞きになりましたか? あの男から」

「いや。黒いのをつまみ出したあと気を失って、まだ起きてない」

「そうですか……」

「知りあいなのか?」

「過去に一度会ったきり。知りあいと呼べるほどのものでは」

「あいつがわめいてた1クレってなんの話だ。クレってあれだろ、アイギナの金の単位なんだろ」

「ええ」

 デルフィナは笑った。いままでにみた中で一番自虐っぽい笑顔で。

「わたくし、かつては1クレで売りに出されていたこともありますの。しかも売れませんでしたわ」

「なるほど、あの男はその時お前を買いそびれた客の一人だってことか」

「ええ」

「もったいない事をしたな、そいつ。あの頃お前を買ってれば1クレが何百万倍に化けてただろうに」

「どうでしょうか」

 婉然と微笑むデルフィナ。

 彼女は微笑みながらおれをじっと見つめた。

 無言で、ただじっと。

「どうした」

「カケル様」

 おれの名前を呼んだ。

 いつにない真剣な口調、まっすぐとまるで挑む様な目つきで。

「どうして、わたくしを買おうとなさるのですか」

「いい女だからだ」

「買わなくても手に入れられるのに?」

(くく、とうに心は落ちているものなあ)

 エレノアにデコピンをした。空気読めお前は。

「何故、あえてわたくしのルールに付き合って、わたくしを買おうとなさるのですか? 何故力づくで。何故うやむやに手に入れないのですか」

「いい女だからだ」

「え?」

 同じ言葉を返すと、デルフィナはきょとん、と言葉を失った。

「いい女はいい女のまま抱く、だから付き合う。焼けば一番美味しいって分かってる素材を面倒くさいからって生で食べたらもったいないだろうが」

「そのためだけに……あんな面倒くさい条件に付き合って下さるのですか」

(面倒くさい自覚はある――)

 とことん空気読めないエレノアをデコピンで黙らせる。

「ああ、そうだ」

「カケル様……」

 デルフィナはおれを見つめた。

     ☆

 デルフィナ・ホメーロス(金の亡者)・ラマンリ。

 自分の生き方に疑問を持ったことが無い訳ではなかった。

 金こそ全てだとしながらも、「自分を資産ごと買い上げる」相手という条件は意味がないただの意地だと分かってもいる。

 それでもやめられなかった。

 やめようと思った事もあった、魔剣使いと出会い、純潔を心ごと奪われてからはよりそうおもうようになった。

 前言撤回しようと思った事は一度や二度ではない、そんな条件などやめて、他の女と同じように、無条件に一人の女として男に傅くのも幸せなのではと思うこともある。

 それでも、魔剣使いにふさわしい女でいなければと意地を張った。

 意地と本音の狭間で揺れ動いていたデルフィナ。

 その意地と本音が、いま一つになろうとしていた。

     ☆

「カケル様」

「ん?」

「本当に、わたくしを買い上げて下さるのですか?」

「そのつもりだ」

「いくらかかっても?」

「ああ」

「わたくしがそれに抵抗して更に資産を増やしても?」

「いい女になるほど食い甲斐がある」

「わたくし……本気で抵抗しますわよ?」

「いままで本気じゃなかったのか?」

「漠然ともうけていたのと、儲けるために儲けるのとでは違いますわ」

「そうか」

 なんかしらんが、いままでにしてきたのと同じ話なのに、デルフィナから伝わってくる本気度がまるで違っていた。

 高く買われる為に更に儲ける。

 頑張れば頑張るほどそれから遠ざかる、それでも頑張って良いのか? という質問。

 おれの答えは、もちろん。

「本気でやれよ」

「カケル様は本当に不思議なお方」

「そうか? 普通だろ」

「その事で、カケル様にご協力をお願いしても?」

「協力? なんだ、言ってみろ」

「わたくしを買いませんか? 一晩一万クレ、現金で」

 まっすぐ見つめてくるデルフィナ。

 その目は怖いくらい真剣なものだ。

「まるで娼婦みたいな話だな」

「超高級娼婦、ですわね。一晩一万クレ、場末の子なら一万人買えますわ」

「それを現金で払ったらそれもお前の資産になる、ってわけか」

「ええ。ついでにカケル様の資産も削ぐことになりますわ」

「プラスマイナスで更に差が開く訳か」

 面白い。やっぱりデルフィナは面白い。

 それに……いい女だ。

 他の女とは大分違う、でもいい女だ。

 ますます彼女の事をいいとおもった。

「いかが?」

「買ってやる」

「本当に?」

「ああ。売りたいときはいつでもおれのところに来い」

「カケル様は……本当に不思議なお方」

 そうつぶやくデルフィナは、俺にすっかり心酔しきった目をする様になった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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