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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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145.デルフィナの過去(中)~10クレの奴隷

 デルフィナ、13歳の秋。

 彼女に訪れた変化はいくつかある。

 一つ、少し背が伸びて、胸が膨らんだ。体つきが徐々に丸みを帯びて女らしくなっていった。

 一つ、首輪が変わった。

 アイギナ王国では、一度主をもって何らかの理由で下取りに出された奴隷は中古となり、その表記を強く義務づけられる。

 首輪の変更がその証だ。

 そしてそういう奴隷は、往々にしてやすく買いたたかれるもの。

 デルフィナについた値段は10クレ。はじめて買われたときの10分の1だ。

 彼女だけではない、同じ時期に買われて、同じ時期にまた売り物になったペトリナも同じだ。

     ☆

 奴隷部屋。

 横になったら足も伸ばせる、出入り口と申し訳程度の小窓一つの劣悪な環境の中に、デルフィナとペトリナは押し込まれていた。

 大人でもなければ手が届かない高さにあって、子供じゃなきゃ抜けられない小さな窓。

 それを眺めて、ペトリナはため息を吐いていた。

「はあ……もっと勉強したかったなあ。アダマンディオス様のお屋敷の蔵書、今頃どうなってるんだろう。15歳までに全部勉強して頭にいれるって約束したのに、果たせなかったなあ……」

「……」

「ねえデルフィナ、あなたもそう思わない」

「え?」

 顔をあげるデルフィナ。話しかけられるまで、彼女はじっと床を見つめていた。

「アダマンディオス様のところでもっと勉強したかったよね、って聞いてるの」

「ううん、そうでもない」

 デルフィナはほぼ即答した。

「なっ。あなた、そんなだからわたしにいつもテストで負けるのよ。アダマンディオス様のメガネにかなった人間なんだからもっと真面目に……っていいわ」

 ペトリナはため息を吐いて、やれやれと首を振った。

「それより何をしてたの?」

「考えてた」

「何を?」

「何故、わたしたちが売られたのか」

「何故って、アダマンディオス様が亡くなったからでしょう」

「何故」

「へ?」

「何故アダマンディオス様が亡くなると、わたし達が売られるの?」

「それは、だって……」

 一回目の「何故」でつまってしまうペトリナ。答えられなくなった彼女をしばし見つめていたが、デルフィナはやがて興味を失い、また視線を落とした。

 ちなみに同じ何故をデルフィナ自身がかなり前にやった。

 一度目の何故で「アダマンディオスが財産を残さなかった」、何故財産を残さなかったかという疑問に「奴隷だから」、何故特別扱いしてる勉強奴隷になにも処置しなかったのという疑問に……。

 それをとっくにやっていた、やった後だ。

 だから、彼女の興味はとっくに次のところに向けられていた。

「何故……査収が? 廃爵だから。何故ほとんど聞かない廃爵というのに? ミスをしたから? 誰かに恨まれたから?」

 デルフィナは、主の言いつけを守ったまま、何故、をくりかえし続けていた。

     ☆

 程なくして彼女は売れた。

 10クレの格安奴隷は手垢がついてたり、()がついてたりといやがる人間も多いが、その安さと割り切って買っていく小金持ちは少なくない。

 この辺は他の中古商品と同じで、デルフィナは売りに出されてからわずか三日で売れた。

 彼女を買ったのは、初陣で戦功を立てた若い騎士だった。

     ☆

 マロネイの住宅街にある、まわりよりも少し目立つ新しい建物。

 そこがパウロス・プトレモスの新居だった。

 成人男性にしては小柄なかれは新しくかった奴隷をつれて、意気揚々と戻ってきた。

 玄関に入り、買ってきたばかりのデルフィナと新居をみて、鼻息を荒くさせる。

「家、奴隷、そして身分! これでおれも晴れて一人前の男だ」

 と、なにやら感動している様子だった。

「おい、お前」

「はい」

「今日からおれがお前のご主人様だ」

「その通りです」

「おれがご主人様だからな、お前は奴隷だ。おれの命令には絶対服従だぞ、いいな」

「……。何故、絶対服従なの?」

「おれがご主人様だからだ」

「何故、ご主人様だと絶対服従なの?」

「ご主人様はそういうものだ」

「……。何故、ご主人様はそう言うものなの?」

「それはご主人様だからだ」

「……、な」

 言いかけて、途中でやめるデルフィナ。

 何故、を五回繰り返す事ができなかった。

 パウロスは自分に絶対的な自信を持っているようだった。

 ご主人様と奴隷とはこうあるべしという自信が。

 その根拠が「ご主人様と奴隷だから」の一点につきた。

 何を聞いても、何を言われてもそうしか答えない。

 だから、デルフィナは聞くのをやめた。

 なるほどここまで答えがはっきりしていれば「何故」を繰り替えさなくてもいいんだ、と思った。

「ご主人様、ご命令を」

 この日を境に、彼女は強烈なパウロスに影響され、徐々に普通の奴隷になっていった。

     ☆

 若い騎士、パウロス・プトレモスの元にいたデルフィナは普通の奴隷だった。

 召使いとして家の事も、たまに下される主の命令も忠実にこなした。

 特別扱いされることはないが、かといって別段悪い待遇を受ける訳でもない。

 パウロスは「奴隷とはこうあるべし」という確固たる信念を持っていた男だったから、彼女は奴隷としてきわめて平均な生活をおくった。

 人生を四季に例えると、秋。

 デルフィナは考えることをせず流れに身を任せたまま、奴隷として二年が過ぎた。

 やがて「騎士とはこうあるべし」という確固たる信念をもったパウロスは戦場で主君をかばい、華々しく戦死した。

 ご主人様の戦死によってまだ後継者も、妻さえもいないプトレモス家は自然消滅し、彼女は、一山いくらの1クレ奴隷として売りに出されるのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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