挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

145/288

144.デルフィナの過去(上)~100クレの奴隷

 そこそこの調度品が揃えられてて、壁際にぽつんと一つだけ上質なソファーが置かれている部屋。
 部屋の設計によって、昼間でもソファーに座る人間の顔が見えないようになっている。
 そこに一人の男が座ってて、目の前にある五人の少女を品定めしている。
 少女達はいずれも十歳、そういうオーダーを出されて集められてきた商品達だ。
 五人のうち四人まで終わって、最後の少女の番になった。

「キミ、名前は?」
「デルフィナ・ラマンリ」

 短髪の少女ははきはきと答えた。
 体はやせて、頬もこけているが、瞳に力がありあきらかに他の子とは一線を画すなにかがある。
 実際、彼女は男の質問によく答えた。男もいろいろ質問をして、かけた時間はあきらかに他の子の倍近くはあった。
 やがてそれも終わり、五人の少女はいったん部屋の外に出た。
 代わりに入ってきた中年の女が、男に恭しく一礼する。

「お気に召す子はいらっしゃいましたでしょうか」
「うむ」

 男は直接答えず、ゆっくりと煙をふかした。
 それに耐えかねて、商人である女はプッシュに入る。

「いまの五人はどれも知能検査をくくり抜けた子達ばかり。閣下が望む賢い子ばかりですわ。もちろん、お望みの通り、教育はまだ施しておりません」
「うむ」

 男は同じ返事だけをして、ソファーにゆったり背もたれて、天井を仰ぎ見た。
 そして、目を閉じる。まぶたの裏に何かを映し出すかのように。
 その所作にえも言われぬ迫力があった。修羅場をくくり抜けてきた者にだけ纏うことを許される、静かな威厳というものがある。
 普通の人間ならこれで黙っているところだが。

「もしお気に召さないのであれば更に時間をいただければかき集めて参りますわ。このご時世ですから、未教育で地頭のいい10歳の娘はいくらでも見つかりますわ。三日いただければここに一ダース並べてご覧に入れますわ」

 と、ペラペラセールストークをし出した。
 男はあえて遮りもしなかった。彼の美学的に、地位や個人の資質をもって、威圧して他人を黙らせると言うことを下品な振る舞いと考える傾向がある。
 女はうるさかったが、好きな様にさせた。
 彼はただ、黙って少女達の事を考えた。

「閣下はどうして、手のかかる未教育の子を望まれるのですか?」

 会話が続かないからか、女は話をかえて、男に質問した。
 男はゆっくり目を開けて、女に答えた。

「あらゆる物を手に入れられるようになると、物に興味を感じなくなってくるものらしいね」
「はあ」
「そうなると人間に金を使いたくなる。世の資産家が売れない画家や、うらぶれた吟遊詩人のパトロンになるのと一緒でね。わたしはその対象が奴隷にむかった、というだけのことさ」
「なるほど、手垢のついていない奴隷を一から育てるというわけですね」

 男は口を少し上向きにした。

「決めたよ、2番のペトリナと5番のデルフィナをもらおう」
「お買い上げありがとうございます! ちなみにどうしてあの二人なんですか?」
「インテリジェンスと、ウィズダムさ」
「はあ……」

 男に言われても、ちんぷんかんぷんって顔をした女であった。

     ☆

 屋敷の一室、並べられた二つの机に座る、そこそこいい服を着せられた二人の少女。
 首についてる首輪が二人の奴隷身分を表しているが、かといって手や指が重労働で荒れている様子はない。
 二人の仕事はそういう類のものではないからだ。
 ではなにが仕事なのかというと――。
 ガチャってドアが開いて、メガネを掛けた若い男が入ってきた。
 男は少女達の前に――教壇のポジションになって、少女達に話しかけた。

「昨日のテストを返すよ。ペトリナくん」
「はい」
「よくできました、今回は満点です」
「はい!」
「デルフィナくん」
「はい」
「85点です。次も頑張りましょう」
「はい」
「今日はこれだけ。予定通り今日は勉強お休みです。少しなら街に遊びにいっていいと閣下もおっしゃってくれましたけど、あまり羽目を外さないように」

 教師の男はそう言って、部屋を後にした。
 二人の仕事はこれだ。余にも珍しい、勉強奴隷という名目でこの屋敷の主に飼われている。
 ペトリナは自分の解答用紙を上機嫌に見つめて、デルフィナに話かけた。

「今回もわたしの勝ちだったね」
「そうね」
「デルフィナももっと頑張りなさいよ? ぽやっとしてるとおいてっちゃうんだからね」
「おいてっちゃう?」
「そうよ、おいてっちゃうんだから」

 ペトリナはそう言って、上機嫌で部屋から出て行った。

「……おいていくって、おいて、どこに行くの?」

 ぼつりとつぶやくデルフィナ。
 ペトリナが出て行ったドアをみて、テスト用紙をみて、窓の外をみた。

「何故、こんなことをするの? 何故、奴隷を買ってわざわざ教育をさせてるの?」

 誰にともなくつぶやくデルフィナ。
 テスト用紙をじっと見つめる。

「何故、ロドトスの治世は続かなかったの? なぜ、オルガは竜の姿を捨てて竜人という中途半端な存在になったの?」

 テストの問題、答えじゃなくて問題文の事に疑問をもった。
 何故、何故、何故。
 デルフィナはもともとそういう少女だったが、ここ最近そういう傾向が強くなってきた。
 教育を受けさせられてから、何事につけて「何故」と考えるようになった。
 それが通常の勉強やテストの成績に、あまりいいとは言えない影響をだしていた。

     ☆

「何故と考えるのは悪い事じゃないね」

 寝室の中。
 寝間着でベットから体を起こしている屋敷の主、アダマンディオス・マネロイ()爵はデルフィナに優しく言った。

「でもどうせ『何故』をするのなら、五回くらいそれを繰り返しなさい」
「五回?」
「『何故』、をして、答えが出た。その答えにも『何故』と問いかけるんだ。それを五回繰り返す」
「何故そうするの? 何故五回なの?」

 質問を更にぶつけてくるデルフィナに、アダマンディオスは目を細めて、優しい手つきで頭を撫でた。

「そうすることで、真実が見えてくるからだよ」
「真実……」

 デルフィナはその言葉をかみしめるようにつぶやく。

「何故五回なの? 三回とかじゃ真実にたどりつかないの?」
「ふふ」

 頭を撫でる手に優しさが更に込められる。

「デルフィナは本当に賢い子だね」

 答えは与えられなかった。
 これがこの男なりの、ウィズダムと見込んだ子に対する最大限の優しさだった。

     ☆

 100クレで買われた幼いデルフィナは屋敷で様々な勉強をした。
 綿のように、素直に知識を吸収する頭の良いペトリナに比べて、質問を連発するデルフィナは教師達にとって必ずしも覚えのめでたい生徒ではない。
 それでも、廃爵の威光で、彼女は不自由のない、勉強の環境を与えられた。
 人生を四季に例えると、春。
 幼きデルフィナは自覚出来ないまま、人生の春を満喫していた。
 その期間、三年。
 廃爵の病死に伴い、彼女が中古奴隷として10クレで売りに出されるまで続いたのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ