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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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143.1クレのデルフィナ

 マロネイに向かう馬車の中。

 おれとデルフィナが向かいあって座ってる。

 隣にネオラをのせている、ネオラは姿勢を正して行儀よく座っている。

「マロネイまでどれくらいだ?」

「アリ」

 馬車の外から返事がした。

「このペースだと昼過ぎにつきます」

「だ、そうですわ」

「そうか」

「もうすこしだけの辛抱ですわ。申し訳ありません、行くとは知らせておりませんので、大した歓待は」

「気にするな、もとから遊びにいくわけじゃない」

「そう言って頂けるとたすかりますわ」

 馬車の中で、デルフィナと適当に雑談した。

 商人だからだろうか、こいつはどうでもいいネタでのおしゃべりになれてる感じがする。

 いくらでも、時間がつぶせそうな気がした。

「そういえば、おまえ、持ってる街はマロネイ一つか?」

「ええ、今の所は」

「他のをもつ予定は?」

「ございませんわ。街を持つことが予想外に大変で、それ以上の事考えられませんわ」

「……」

(奇妙な話だ)

 腰の間にあるエレノアがつぶやく。同感だ。

 デルフィナ・ホメーロス・ラマンリ。

 広く商売の手を伸ばして、その財力は一国にも匹敵すると言われている。

 そこまでやれる人間が、買った物のの維持費を見誤るって事はあるのか?

 ……まあ、商品とか店とかと違って、街一個丸ごとは違う、って事なのかも知れないか。

     ☆

 予定通り、昼過ぎにはマロネイについた。

 問題を解決するために、おれたちはただの旅人として街に入ることにした。

 五爵のカケルでもなく、影のドンデルフィナでもなく。

 ただの旅人として、馬車を降りて、検問所みたいなところを通る。

「名前は」

「ん? ああ、結城カケルだ」

「珍妙な名前だな、どこから来た」

「レイウース」

「そうか。持ち物は? その腰にあるのはなんだ」

「剣だ」

「なんだ流行りの魔剣レプリカか。第何世代のヤツだ?」

「一番古いヤツだ」

「そうか」

 男はふっ、と鼻で笑った。

 その後もいくつかどうでもいい、本当にどうでもいい質問を受けたあと、街の中に入れてくれた。

 立ち止まって街を見た。

 街は賑わっている。

「らっしゃいらっしゃい、トリデカ産のあまーい果物がはいってるよー」

「魚-、魚はいらんかー。お代支払った後に魔法抜いて生きたままお渡しするよ」

「奥さん! 可愛いお子さん連れてるね。どうだい、この新しい魔剣レプリカ『双天の黒翼』は、最新作だよー」

 いろんな人間がいて、いろんな商売がされてる。

 間違いなく発展してて、これからも発展する勢いのある街。

「すごいな」

「恐縮ですわ」

 デルフィナが後ろから声をかけてきた、ちょっと遅れてネオラも検問所をとおる。

 デルフィナはおれの前に立ち。ネオラは少し離れて護衛につとめた。

「いかがしますか」

「例のあれ、あれって取り憑かれたヤツは騒ぎ起こすよな」

「そのようですわ。騒ぎの多そうな……酒場を張ってみますか」

「まどろっこしい、ちょっと待ってろ」

 ゆっくりと目を閉じる……。

 腕を組んで、耳をすませる。

 777倍に引き上げられた、超人的な聴力。

「あまーい、こんなあまい果物はじめて食べた」

 これじゃない、次。

「うわ! さっきまで死んでた魚が急に生き返った」

 これでもない、次。

「ママー、魔剣かってー」

 頑張れ坊主……次。

 聞こえてくる音を選別する。

 例えるのなら音楽の中から、他を無視して特定の楽器の音だけを抜き出す作業。

 そうして、マロネイにあるほぼ全ての人の声を集めて、分別にかける。

 そして。

「やめて! そのお金を、そのお金は生活費なのよ!」

「うるせえ!」

 これだな。

 目を開き、地を蹴って駆け出した。

「カケル様!?」

「ネオラ、護衛して連れてこい!」

「はい!」

 二人の女を置いて、先行する。

 補足した音を三次元的な座標に変換して、そこに向かって突き進んでいく。

 壁を蹴って飛び上がり、屋根を駆ける。住民がざわめく――無視。

 最短距離を突き進んで到着したそこは一件の民家で、ドアを開け放って中に入ると争った現場だった。

 家具が至る所に散乱に、飛び散ったり割れたりしている。

 そんななか、中年の男がダンスから金を持ち出そうとして、中年の女が必死にすがって止めようとしている。

 女の方はおれを見て一瞬ぎょっとしたが、すぐにたすけを求めてきた。

「お願いしますたすけてください! 旦那が、旦那が変なんです」

(家の金を持ち出すってところか)

「ろくでもねえな」

「なんだと!」

 男はいかって向かってくる、途中で落ちてる包丁を拾って、突きつけてくる。

「てめえ、よその家に口――」

 とりあえずはっ倒した。武器を抜くでも無く、適当にはっ倒した。

 男は地面に転がって、目を回した。

     ☆

 男を家の外に引きずり出して、放置した。

 騒ぎを聞きつけてきた野次馬が遠巻きで指さしたり、言い合ったりしてる。

(とっとと黒いのをつまみ出すか?)

「それじゃ今までと同じだろ。元を絶ちたい」

(どうするのだ?)

「そうだなあ……」

「カケル様」

 野次馬の人混みを割って、デルフィナがようやく追いついた。その後ろにちゃんとネオラの姿もある。

 デルフィナは素早くまわりを見回して、一瞬で状況を把握した。

「それが捕まえた相手ですか」

「ああ」

「流石と言うべきか、呆れたと言うべきか……到着間もないと言いますのに」

「ちんたらやっててもしょうがないだろ」

「これをどうなさるのですか」

「それを今考えてる。黒いアレを追い出すのは造作もないが、元を絶ちたい。お前になんかアイデアはないか」

「そうですわね」

 デルフィナが考えていると、男が徐々に目を覚ました。

 こめかみを押さえて頭を振って。ゆっくりと体を起こす。

「うーん」

(起きたか。ふむ、やはり入っているな)

「ああ」

 エレノアとうなずき合う。

 どうやらあの黒いのは落ちてるよりも起きてる時のほうが「入ってる」ってよく分かる。

「ううーん」

 ふらふら起き上がる男。もう一発喰らわせて寝ててもらうか、と思ったその時。

「おお」

 男の視線がデルフィナをとらえた。

「1クレ奴隷の小娘じゃねえか」

「1クレ――なに言ってんだ?」

(……デルフィナの様子が変だぞ)

「え?」

 デルフィナの方を向く。

 いつもおすまし顔の彼女は豹変していた。

 目を見開き、とてつもない恐怖の対象を見るかのように男をみた。

 両手で頭を押さえて、ガタガタふるえだした。

「わりいなあ、あの時は予算が30人までだったんだよ。もう1クレあったらてめえも買えられたんだがなあ」

 男はニヤニヤしながら、続ける。

「ほんとわりいなあ、1クレでも売れない奴隷にしちまってよお、あの後どうなった、売れない奴隷で処分されてもしたか? はは」

 デルフィナの様子がどんどん変わる。

「ざまあああねええええええなあああああああああ! パン一個分の価値もねえ奴隷はよおおお――」

 男の首を刎ねた。黙って聞いてたけど言い方がむかついてきた。

 一方のデルフィナ。顔が青ざめ、髪を振り乱し。

「うわあああああ!」

 しまいには狂ったかのように叫びだした。

 ほんの数秒の間の出来事。叫んだ後のデルフィナは髪を乱したままがっくりとなる。

(……入った、か)

「……ああ」

 デルフィナにも入った、が。

 入る過程、そして人の素質。

 それについて、もっとよく調べる必要がありそうだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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