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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

アイギナ王国編

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135.風雲再起

 たいまつだけが頼りなく照らし出す、石畳の地下空間。

 よどんだ空気以上に、空間そのものを満たす邪悪な気配。

 魔の者が好みそうな空間に、一人の男が立っていた。

 アイギナ王国第一王子・総理王大臣、キモン・モ・アイギナ。

 次期アイギナ王であるその男はでっぷり太っていて、だらしなくたるんでいる。

 唯一ぎらついている目つきだけが、生まれ持った力を振るうことをためらわない強烈な性格をよく表している。

 かれは本来いるべきではない場所に立って、唱えるはずのない呪文を唱えている。

 目の前に地面に魔法陣が展開されている。魔法陣は不規則に明滅を繰り返している。

 それは徐々に間隔が短くなり、漂う魔力も濃さを増す。

 いよいよその時か! といやが上にも期待を持たせる光景。

 ――が、そう(、、)はならなかった。

 明滅は途中で勢いを失い、高まった魔力もパン、と割れた風船のようにはじけ飛ぶ。

「くそっ! またか。なぜだ、何故召喚できない!」

 キモンは悪態をついた。

「前はこれで連中を召喚出来たではないか! 何故出来ないのだ! 生け贄も用意したぞ」

 キモンの目の前、魔法陣の中央に裸の女が倒れている。

 拘束されていないのにもかかわらず、女はぐったりして動かない。

「条件が変わったのか? 仕方ない、上位の連中を諦めて下位の奴らを呼び出そう。そいつらなら力づくで呼べるはずだ」

 そう言って、再び呪文を唱える。

 ともすれば歌にも聞こえるリズミカルな呪文。

 魔法陣が再び明滅の勢いを取り戻し、空気に緊張感が戻ってきた。

「うぅ……」

 女が呻いた、それを見たキモンの口の端がつり上がった。

 ――そして。

「うっせえなあ、誰だよ!」

 魔法陣の中から一人の男が現われた。

 それは確かに男だが、人間ではない。

 身体のサイズや四肢などは人間とまったく同じだが、青と黒の中間にあるような肌に、鋭い牙と側頭部から生えてる角は人間じゃないことを強く主張している。

「てめえか、おれ様を呼び出したのは」

「そうだ。わたしアイギナ王国第一王子、キモン・モ・アイギナ」

「へえ、王子様ってことか。おっさんの王子もいるものなのか」

 キモンの眉がぴくっと跳ねた。

 あきらかに不愉快そうな表情をする。年かさの王子、というのは彼にとっての禁句だ。

 四十年目の王太子、それを揶揄する者もいて、うっかり本人の耳に入ったら私刑で殺される程のタブーである。

 それをキモンはガマンした。

 目の前の魔の者に頼みごとがあるからだ。

「単刀直入に聞く、召喚の条件が変わったのか?」

「ああん? 王子サマあれか? 上の連中を呼び出そうとしてるのか?」

「ああ」

「やめとけやめとけ。今上の連中は人間界に関わらないようにって方針変えてんだ。いくら呼び出しても応じやしねえよ」

「関わらない? 何故だ」

「そりゃあおめえ、例の魔剣使い――おっと」

 魔の者は慌てて手で口を塞いだ。

「なんだ、言いかけるのはよせ」

「なんでもねえよ。とにかく、おれ様たちはしばらく人間界に関わらねえ。上の連中が決めたことだからな」

「しばらくってどれくらいだ。そうだな……野郎が今二十代くらいだから寿命で死ぬ……まあ五・六十年ってところだな」

「ふざけるな! そんなに待てるか!」

 激怒するキモン。

「五・六十年くらいあっという間だぜ、けけけ」

 魔の者は笑った。

 当たり前だが、彼らは人間よりは遙かに長生きだ。

 数十年などあっという間に過ぎていくわずかな時、という程度にしか思っていない。

「って事だから、おれ様はかえるぜ。言っとくけど無理矢理呼び出すのはいいけど、協力はできねえぜ。それじゃあな」

「待て!」

「ああん? 協力はできねえっていま」

「それでいいのか?」

「なに?」

「数十年間人間と関わらずに、腹が持つのか(、、、、、、)と聞いている」

「……」

 魔の者が押し黙った。キモンがにやりとした。

 彼らは人間に関わっては、代償として生命力や精力、場合によっては魂をもらっている。

 それをどうするのかというと、空腹を満たすために使っている。

 つまりは食事だ。

「上の連中は数十年間人と関わらずとも食事(、、)する当てはあるのだろうが、お前達はそうも行かないのだろう? 数十年間食べないでいるのはつらかろう?」

「……ああ」

「わたしに協力してくれ。なあに、こっそりやればいい。こっそりやって、多少食うための代償をもらうのだ。こっそりやればバレはしないさ。それとも上が腹一杯食ってるのを見てるだけでいいのか?」

「……本当にばれないんだろうな」

「それはそっちの方が詳しかろう? 上にばれないようにこっそり色々やるのはどこの世界にもある事じゃないのか?」

「……おっさんも苦労してるな」

 魔の者はにやりと笑った、キモンも笑った。

「度が過ぎなければ見逃してやるのも上に立つ者のつとめだ」

「よっしゃ、そこまでいうんなら手を貸してやる。その代わり代償はきっちりもらうぜ」

「相場の倍を用意してやる」

「ケケ」

「ふふふ」

 こうして契約が交わされた。

 魔剣使いを避けたいという思惑を台無しにする契約が、誰知らず交わされたのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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