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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

魔剣エレノア編

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12.魔剣とくじ引き券

 食堂の看板娘を外に待たせて、玄関でミウと向き合う。

「じゃあみう、留守番を頼むな」

「はい。行ってらっしゃいご主人様」

「ああ」

 振り向いて、外に出ようとする。

「あっ……」

「ん?」

 ミウの声が聞こえて、振り向く。

「どうしたんだ?」

「う、ううん。その」

「うん」

「あの……」

「なんだ」

「いって、らっしゃい」

「ああ、行ってくる」

 ミウに見送られて、外に出た。

 立ち止まる、あることを思い出す。

 急いで引き返して、屋敷の中に入る。

「ミウ!」

「ひゃい!」

 屋敷の奥に入ろうとしていた所を呼ばれて、声が裏返ってしまうミウ。

「ど、どうしたんですかご主人様」

「もふもふだ。行ってらっしゃいのもふもふだ」

「あっ……」

 ミウの瞳が輝く。でもちょっと恥ずかしそうにうつむく。

 手を引いて、抱き寄せる。

 もふもふ、もふもふ。

 さっきうやむやになったお帰りなさいのもふもふも取り返すくらいもふもふすると、ミウのしっぽがぱたぱたしてるのが見えた。かわいかった。

「じゃあ、今度こそいってくる」

「はい! 行ってらっしゃいませ」

     ☆

 食堂・プロス亭の看板娘、フィオナと並んで歩く。 

 街を出て、彼女の先導で街道を歩く。

「それで、助けて欲しいってどういう事なんだ?」

「妹を助けて欲しいんです」

「妹さんか。腕利きを紹介しておれの所に来たって事は腕っ節で解決出来ることなんだな」

「多分……」

「多分?」

 フィオナの歯切れが悪かった。

 今ひとつ話がかみ合わない感じがする。

 だけど、助けて欲しいのは本当みたいだ。

 フィオナは店にいるときと違って、ものすごく焦ってる。早足で、下手したらおれを置き去りにしそうなくらいの早足で歩いてる。

 だからおれは何もきかないで、フィオナについて行った。

「妹がつかまってるんです」

 しばらく歩いて、途中で街道から外れ、獣道しかないような森に入る。

 森の奥に小さな洞窟が見えた。

 見えた瞬間、洞窟からよどんだ空気のようなものが漏れてるのが見えた。

「あれはなんだ? 煙なのか?」

「煙って、どこですか?」

「あれ」

 洞窟の入り口を指す、フィオナはしばらくそこをみて、不安そうにおれを見た。

「煙なんて見えませんけど……」

「えっ? じゃああれは……」

 言いかけて、はっとした。

 そのよどんだ空気が漂ってきて、触れた瞬間寒気がしたから。

 屋敷で、幽霊と戦ったときに感じたものと非常に近い感覚。

「妖気とかそういうそういうやつか」

「それが見えるんですか!」

 フィオナは大きな声を出した。

「それがってことは、妖気を放つ何かがその中にあるって事だな?」

「はい……」

 フィオナが頷き、洞窟に向かっていく。

 おれはついていった。数歩歩いて、洞窟の中が完全に見えてきた。

 洞窟と言っても、よく見たら奥に二・三メートル入っただけの小さなほらあなだ。

 さっきの妖気が漂ってたから奥が見えなくて、深そうな洞窟に見えてただけだ。

 その奥に、壁際に一人の女の子が座っている。

 歳はミウよりちょっと上で、フィオナより少し下ってところか。

 整った顔立ちはフィオナとすごく似てる。

「この子、フィオナの……?」

「妹の、マリです」

 だろうな。顔の作りがすごく似てて、誰が見ても姉妹って言うくらい似てる。

「お姉ちゃんっ」

 おれたちに気づいたマリが顔を上げて、悲鳴に近い声でフィオナを呼んだ。

 声がかすれている、立ち上がらない。

 顔は涙が乾いたあとが見えるくらい悲しそうにしてるのに、フィオナを呼ぶだけでそれ以上動く気配はない。

 さすがにおかしい。おれは改めてマリをよく見た。

 すると、彼女が何かを抱きかかえているのが見えた。

「棒……? いや柄がある、それに鞘……剣なのか?」

「はい、マリはアレに憑かれてるんです」

「憑かれてる……魔剣か」

「はい」

「なんでまたそんな事に」

「分かりません。マリは普段からよくこの森で遊んでるんですけど、一昨日の夜になっても帰ってこないから探しにきたら……こんなことになってて……。この穴も、前はこんな所にこんなものなかったはずなのに」

「一昨日……結構経ってるな」

 声が枯れてるのもうなずける。

「マリちゃん、動けないのか」

「はい……」

 弱々しい口調で返事した。

「……目の下にクマが出来てる。ただの寝不足、って訳じゃないだろうなそれ」

 持ってるのが魔剣、そして顔がやつれてると来ればまずい想像しか思い浮かばない。

 大体の状況は把握出来た。

「で、どうすればいいんだ?」

「こうなった後、いつもお世話になってるアンドレウ商会の人に助けを求めました。それで言われたのがその刀を取り上げればいいって。でも街の誰に聞いても、倒すのはできるかも知れないけど、マリを傷つけないで刀だけを取り上げるのは無理って」

「なるほど、それで腕利き――おれを紹介されたわけか」

 フィオナ、そしてマリを見る。

 フィオナはもう半泣きだ。マリはやつれきって、涙すら乾いてしまった様子だ。

 魔剣に取り憑かれた少女。こりゃ早く何とかしないと。

「フィオナは外にでてて」

「えっ、その――」

「傷をつけないで刀を取り上げればいいんだよな」

「う、うん」

「何とかする」

 力強く言いきると、フィオナはおずおずと頷いて、洞窟の外に出た。

 マリを二人っきりで向き合う。

 向こうから向かってこない。刀を抱えたまま、壁を背にして座って動かないでいる。

 一歩、踏み込んだ。

 チャキ。

 マリはとても少女とは思えない反応の早さで抜刀し、斬りかかってきた。

 反応して、躱す。マリは更に斬りかかってきた。

 鋭い斬撃が全方位で飛んでくる。

 よく見て、躱す。刀から漏れる妖気は躱しようがなく、ピリピリと肌に突き刺さってくる。

 反撃を――と思ったその時。

「痛い……腕が……痛いよぉ」

「マリ!」

 マリが苦しそうに呻いた、それを聞いて洞窟の外でフィオナが叫んだ。

「魔剣に操れて……体の方が限界か。ちっ」

 ますます長引かせるわけにはいかなくなった、それどころかこれ以上動かせる事さえも良くない。

 ならば――動く前に叩く。

 いったん大きく下がって距離を取った。

 利き足で地面をぐいっと踏み込んで、力を溜める。

(全力でッ)

 異世界に来てからはじめての全力で、おれは突っ込んでいった。

 空気の壁をぶち破った感覚がした。魔剣=マリは反応できてない。

 一瞬で距離をつめたおれは、魔剣が反応する前にそれをひったくった。

 マリの手から取り上げた。

「よし!」

 強奪成功だ。

(なにぃ?)

 声が聞こえてきた。それは脳内に直接響いてくるような声。女っぽい声だ。

 魔剣を見た。握ってるところがドクンドクンと、まるで脈を打っているのを感じる。

 多分こいつの声だな。

 どうしようかとちょっと考えた。魔剣だしこのまま持ってたら危ないかなあ……って思ってた所にまた声がした。

(ならばお前に取り憑くまでよ)

「ちょっと待て」

 止めようとしたが、脳裏にそいつの高笑いが響く。

 何かをしたみたいだ、止め方もわからないまま何かをされたみたいだ。

 だけど何も起きなかった。

(なんだと? 何故だ、何故取り憑けない!)

 魔剣の声が響く、焦っている様に聞こえる。

 その後も何回か何かをしたみたいだけど、おれの方はまったく変化がないし、魔剣の声はますます焦るばかりだ。

 理由はわからないけど、おれをマリのように出来ないって事だな。

「よし、なら放置だ」

 そう決めて、おれは魔剣を握ったままフィオナを見た。

 フィオナは洞窟の中に入ってきて、魔剣を奪った後、そのまま気絶したマリを抱き起こした。

「どうだ、大丈夫か?」

「はい、多分ですけど……」

 マリの顔をのぞき込んだ。気を失ってて大分やつれてもいるけど、呼吸が規則正しいから、フィオナの言うとおり多分大丈夫に見える。

「念のために街に戻ったら医者に診せよう」

「はい」

 フィオナはマリを抱き起こして、おれを見つめた。

 また泣きそうになってる、だけど今回のは――きっとうれし泣きだ。

「本当に、ありがとうございます! カケルさんのおかげで、マリが……マリを……」

「いいから、そういうのは後。フィオナはマリを医者に連れてって」

「え? カケルさんは?」

「おれはこいつを何とかしてからいく」

 と言って、魔剣を見せた。

 フィオナはわかりましたと言って、更に繰り返しお礼を言ってから、マリを抱いて先に洞窟をら出た。

 魔剣を持ったおれは、さてこいつをどうしようかと思ってなんとなく洞窟の中を見回す。

 このままたたき割ってやったほうがいいかもな。

 そんな事を思っていると、マリが座っている所に何かが光っているのが見えた。

 近づいて見ると、そこに一枚のくじ引き券が落ちていたのが見えた。

 拾い上げる。これで二枚になった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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