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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メルクーリ王国編

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120.花のイリス

 賭場からだいぶ離れた所で見守ってると、少し離れた建物から逃げ出す連中がいた。

 建物は繋がってないが。

「あれだな」

「行動がいかにもすぎる。また地下道か」

「頼むぞ、カケル」

 イリスと二人で尾行した。

 おれの耳を頼りに尾行して、街外れの建物にやってきた。

 そこそこ立派な屋敷で、表に強面の門番もいる。

「そこなのか?」

「間違いなくそこにはいった。今も中は慌ただしい。それに」

「それに?」

「暴力の匂いがする」

「鼻……ではないのだな」

 静かにうなずく。どっちかって言うと雰囲気的なものだ。

「どうする?」

 イリスに聞く。

「……突入しよう。証拠を隠滅されないうちに」

「よし」

「カケルは正面から頼む。わたしはは裏からいく」

「わかった。一人で大丈夫か?」

「大丈夫だ。……わたしはただ守られてるだけの女ではない」

「そうか」

 意地っ張りなのは相変わらずだな。

 イリスが大きく回り込んで、屋敷の裏に向かって行くのを確認してから、おれも正面に向かった。

「止まれ! 何者だ!」

 強面の門番が誰何してきた。

 エレノアとひかりを抜き放ち、男を十字に四分割した。

 屋敷の奥からぞろぞろと出てきた。

(さて、やるか)

(ひかりがんばるね!)

 楽しげに笑うエレノアと、すっかり魔剣らしく育ったひかり。

 二人とともに、オーラの黒衣を纏って切り進んでいく。

「て、敵襲!」

「待て、こいつは多分……」

「漆黒の双剣……魔剣使いか?」

「ひ、ひいいいい!」

 勇んでかかってくるものもいれば、腰を抜かして這って逃げ出すものもいる。

 そいつらを、おれは容赦なく切り捨てる。

(過保護だな)

「なんのことやら」

(くくく)

 エレノアは愉快そうに笑い続ける。

 おれは盛大に魔剣使いだとアピールして、敵を引き寄せて、切り進んでいった。

 死体の花道を進んで屋敷の中に入る。

(さて、どうする?)

「あっちから音がする」

 耳を澄ませて、屋敷の奥に進んでいく。

 やってきたのは。

(あれー、いきどまりだよ?)

(役に立たない耳だな)

「いや、この下だ」

 地面にエレノアを突き立てる。

 実体ではない、空洞の音がした。

 剣を引き抜き、手探りでまわりを触って回る。

 レバーの様なものがあった、それを一気に引いた。

(隠し階段か。この感じだと地下牢って所か)

「いくぞ」

 階段を降りていく。

 おりきったところに部屋があった。

 魔法の照明が部屋を照らし出す中、一人の男の子がいた。

 男の子はメルクーリ紙幣らしきものに魔法を使っている。

 紋章を刻んでる最中だ。

「なるほど、ここが偽造の現場か」

(まちがいないだろうな。問題はなぜあの子が魔法を使えるかだ)

「おいお前、なんでここ――」

「来ないで!」

 踏み出した一歩が男の子の声で止った。

 必死な、切羽詰まった声だ。

「こわがらないで」

 ひかりは人型に戻って、優しく話しかけた。

「おとーさん、悪い人じゃないよ」

「そうじゃない、そうじゃないの。これ!」

 男の子が自分の首を指した。そこに首輪がある。

 首輪の中心は妖しい光が明滅を繰り返している。

「これ、知らない人が近づいたら爆発する魔法があるって!」

「そう言うものがあるのか」

(ある)

 エレノアがきっぱりいう。

「だから近づかないで」

 ひかりは困った顔でおれを見あげた。

「剣に戻ってひかり。おれがなんとかする」

「うん!」

 ひかりは魔剣の姿に戻った。

 さて、どうするか。

「考えても無駄だ」

 後ろから男の声がした。

 振り向くと、商人風の格好をした、やせぎすの中年男が階段を降りてきた。

 笑顔を浮かべているが、左目を縦断する刀傷のあとが、笑顔通りの人間じゃないことを主張している。

「お前が黒幕か」

「いかにも。ガラシモス・サイチだ」

「この子はなんだ?」

「どっちの答えが欲しいのかな。我らの打ち出の小槌であるのか、それとも国王の隠し子であるのか」

 ニヤニヤするガラシモス。

「国王の隠し子? ……なるほど、それで王家の魔法を」

(くくく。娘が把握出来んわけだ)

 エレノアは楽しそうに笑った。

「そういうことだ」

「今すぐに首輪の魔法を解除しろ」

 ガラシモスの後ろから声がして、同時に首筋に剣が突きつけられた。

 現われたのは、イリス。

 彼女は珍しく怒りの顔で男を後ろから睨んでる。話を聞いてたんだな。

「解除?」

「命が惜しければ早くしろ」

「いいだろう」

 ガラシモスはニヤリと笑いながら、手をかざす。

「変なまねはするなよ?」

「解除すればいいのだろう?」

 そういって、ガラシモスは魔法を使った。

 次の瞬間、男の子の首輪が光り出した。

 ……明滅の感覚が早くなって、光もよりまがまがしくなった。

 解除、という言葉のイメージからは程遠い現象だ。

「何をした」

 イリスも気づいたのか、男に強く問い質す。

「解除と言われたからな。あれは一度つけたら絶対に爆発する代物だ。結果は二つしかない、設定されてない人間が誰かが近づいて爆発するか、前倒しに作動させて爆発させるか」

「か、解除と言ったのは……」

「爆発を止めていたストッパーの解除だ」

「今すぐに止めろ!」

「無駄だ、言ったはずだぞ。爆発する結果しかない魔法なのだと」

「貴様! そんなものをあの子につけたのか」

「無論。あれが一番の証拠になる、いざとなったら消すのは当然だろう?」

「くっ」

 呻くイリス。

 ガラシモスは嫌らしい笑顔でおれを見て、慇懃な言葉使いで言ってきた。

「離れた方がいいぞ、魔剣使い。子供の首輪の光ってる箇所を中心にあたり一体を丸ごと消し飛ばす魔法だ。お前が立っている場所だと巻き添えを食らう」

「お前のいる場所が安全圏ってことか」

 男は口の端をゆがめた。

「まあ、最後のふれあいをしたいのなら止めないがね。カウントダウン中は近づくことでの爆発はしないのだからな」

「そうか」

 おれは男の子に近づいた。

 男の子はすっかり怯えて、地面にへたり込んで、お漏らしをしていた。

 おれが近づいても、まともに反応すらしない。それほど怯えてるんだ。

「言っておく、破壊したら即爆発だからな」

「即、か」

(やるのか?)

「やれると思うか?」

(貴様なら)

(おとーさん、がんばって)

 母娘が頭のなかで声援を送ってきた。

 おれは首輪に手をかけて、魔剣姿のひかりを突きつけた。

「……せーの!」

 首輪を切った――瞬間にワープの羽で飛んだ。

 飛んだ先はオリクトの谷。

 谷の主、オリクトがおれの姿にぎょっとした。

「あー、悪いな。まあお前なら死なないだろ」

 そう言った次の瞬間、持っていた首輪が爆発した。

 凝縮された、密度の高い爆発。

 半径二メートル内は猛烈な爆風と轟炎が渦巻いたが、そこから外は何事もなかった。

 爆発が収まる。

「げほ、げほ」

 巻き起こった砂が口の中に入って、咳き込んだ。

 それだけだ。

(無傷か)

「おかげ様で」

 爆発した瞬間、おれはオーラの黒衣を纏った。

 二人分のオーラを全部防御に回した。

 それに専念したため、無傷ですんだ。

 一方、オリクトは粉々に吹っ飛ばされていた。

 再生はしてるものの、粉々だ。

「巻き込んで済まないな」

 一言謝って、ワープの羽で屋敷に戻る。

「な、な……」

 男は唖然としていた。

 何が起きたのかわからない様子だ。

「カケル! 大丈夫なのか?」

「かなりの威力だった。おれじゃなかったら即死だろうな」

 イリスは一瞬ほっとして、それからガラシモスを睨んだ。

「そんなものを何の罪もない子供にっ」

 激高して、裏拳を放った。ガラシモスがまともにそれを食らって、吹っ飛んで壁にたたきつけられる。

「ば、ばかな。こうなったら――」

 ガラシモスは更に男の子に手をかざした。

 何かをしようとした、証拠隠滅のために何かを。

 予想してたおれはすぅと間に割り込んだ。

 母娘のオーラを纏って、無言で、もう何もさせない、と主張する。

「……くっ、くそ」

 悪態をつくガラシモス。その横でイリスが冷ややかな目で見下ろした。

「覚悟しろ、必ずお前を死刑にするからな」

「裁判にかけるのか」

「うむ」

 頷くイリス。

 イリスが必ず死刑にすると言ってるのに、それでも裁判か。まだるっこしいことをするんだな。

(彼女らしいではないか。国政にたずさわるものとして、手続き的な正義を踏まねばならんのだ)

 ふむ。

 なるほど国政に携わるものか。

 イリスを見た。目から火を噴きそうなくらい怒ってる。

「イリス」

「なんだ」

 おれはおもむろにひかりでガラシモスの首を刎ねた。

 首が飛んで、血が泉の様に噴き出す。

 男の子は悲鳴を上げて気絶した。イリスは眉をひそめておれを見つめた。

「なにをする」

「おれは悪党を見つけたら殺すことにしてる」

 そういうと、イリスは複雑そうなしながらも、どこか、すっとした表情になったのだった。

     ☆

 イリスと共に外に出た。

 まだ気絶してる男の子を地面に寝かせた。

 イリスはおれの前に立ち、まっすぐ見つめて来た。

「ありがとう、カケル。おかげで事件が解決した」

「これで解決か」

「ああ」

 振り向くイリス。追いついてきた彼女の部下がぞろぞろと中に入る。

 後のことは任せてもいい、って思った。

「本当に、ありがとう」

「気にするな」

「それと……ありがとう」

「うん?」

 なんか違うトーンのありがとうを言われた。

 彼女の表情が変わった。

 イリス姫ではなく、イリスがそこにいた。

 頬を染める、一人の少女。

 口調が、ものすごく柔らかくなった。

「もう一つ、お願いしてもいい?」

「ああ」

 何を言われるのか予想はついた。

「わたしの縁談を……壊してくれ」

 おれをたよってきたイリスは可愛かった。

 彼女を抱き寄せて、唇を奪う。

「任せろ」

 おれは最初からそのつもりだ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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