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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メルクーリ王国編

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118.考えるよりも先に体が動いた

「なんでつけてるってわかった」

「質問を質問で返すか。それくらい足音でわかる。尾行してるときの足音は聞いててわかる」

「足音は消した」

「この世に無音は存在しない。次はお前の番だ。なんで回収した」

「答える必要はないな」

「力ずくできくぞ」

「やって見ろ」

 壺振りの口の端がゆがんだ。

 賭場にいるときの慇懃な態度とは裏腹に、凶暴な顔つきになった。

 そして、指がぐにゃりを動く。

「へえ」

 魔剣の柄に手をかけて、そのまま止った。

 目の前に何かが(、、、)見えた。

 目を凝らしてじっとみつめる。

 空中にうっすらと細い何かが見えていた。

「透明の糸……なるほど糸使いか。みた感じ鋭そうだからなにか操るタイプじゃなくて糸でもの切り裂くタイプか」

「……」

「いつの間にまわりを張り巡らせたんだ? 一、二、三……」

 おれは指さし確認しながら数える。

 一本指すごとに壺振りの眉がビクビク動く。

(全部で十二本だな)

「十三だ。あそこの微妙に空いてる空間に一本ものすごく見えにくいヤツがある。包囲網の中にわずかにある隙を見つけて逃げ込んだら本命が待ってました、って二段構えだな」

(むっ)

「なっ!」

 最後の一本を見抜けなくてうめくエレノアと、愕然とする壺振り。

 その表情だと、糸とその意図(、、)の指摘、全部図星みたいだな。

 おれはある事を思い出して、壺振りに聞く。

「一つだけ聞く。お前、デルフィナの部下か?」

「……金の亡者(ホメーロス)のことなどしらん」

 壺振りはまるで親の仇相手かのように吐き捨てた。

 金の亡者か。

 残念ながらおれはそれが好きなんだ。

 戦略を練ってるヘレネとか、魔法を詠唱するイオとか、金儲けの話をするデルフィナとか。

 女が一番本気で生き生きしてるときの姿が好きだ。

 ま、それはともかく。

 デルフィナの命令で偽札を回収してる連中じゃないんなら、容赦はいらないな。

「う、うおおおおお!」

 壺振りが両手を広げて、十本の指をグイッグイとうごめかせた。

 空中に張り巡らされていた糸が波打ってうねりながら、風きり音を出して飛んでくる。

 ただでさえぼろっちいまわりの建物が糸に引き裂かれ、石くずと木片が飛び散る。

 マントの下から二振りの魔剣を抜き放つ。

 唸る糸を上回すスピードで全部切った。

「ばかな、アルマースの粉をまぶした糸がこうも簡単に」

「さ、次は?」

「くっ」

 壺振りは身を翻して逃げ出した。

「逃がさん」

 追いついて、エレノアの「面」で後頭部にフルスイング。

 壺振りは吹っ飛んで地面に顔からツッコミ、そのままぐったりとして動かなくなった。

(ころしちゃったの?)

 ひかりが聞いてきた。

「手加減はした。ちょっとしたら気がつくだろ」

 壺振りに近づき、異次元倉庫を開いて、中から縄を取りだして気絶したそいつを縛り上げた。

(さて、どうする。こやつが関わってるのは間違いないが)

「といっても下っ端だろうな、こいつ」

(それはそうだろうな)

「拷問して吐かすか?」

(あれはあれで高度に繊細な作業だ。貴様が拷問なんてしようものなら大抵の人間は一瞬で廃人だろうよ)

 それはそうかもしれないな。

 さて、となるとどうしたもんか。

「ここにいたのか――って、どうしたんだこれは」

 イリスがやってきた。

 後ろに縛り上げた偽札の男を引きずってる。

 ぐったりして引きずられてる、どうやら意識がないみたいだ。

 イリスはおれの前までやってきて、壺振りを見下ろした。

「この男……さっき賭場にいたものではないか」

「ああ」

「やはり来たんだな」

「やはり?」

「偽札をもったこの男が現われた途端に丁が十一回も連続で、しかもわざと出したのだ。関わってるか知ってるか、そのどっちかだと思った方が妥当だ」

「そうだな」

 おれが思ってることをイリスも思っていたようだ。

「ちなみにデルフィナの手の者じゃなかった」

「そうか」

 イリスは頷き、懐からおもむろに小さい筒状の何かを取り出した。

 それをかざすと、ピュ――って甲高い笛の音を鳴らして何かが空に向かって打ち上げられた。

「信号弾か?」

「この合図でわたしの部下がさっきの賭場を鎮圧する手はずだ」

「いつの間に」

「賭場を出たときにな」

「流石だな」

「一つ頼みたい」

「言ってみろ」

「カケルは目と耳がいい」

「その通りだ」

「賭場が鎮圧されたとわかった時、それを見て奇妙な反応をした人間を切り分けできないか? その先に何かが繋がってるのなら一気に引きずり出したい」

 そう聞くイリスの目は期待に満ちてる。

(二段構えか。やるなこの小娘)

 エレノアが珍しく感心した。

「出来る」

「頼めるか」

「乗りかかった船だ」

「ありがとう。なら行こう。賭場から少し離れた所で見守ろう」

「ああ」

 頷いたおれ。

 瞬間、背筋に凍るものが駆け上った。

 何かがわからない、何も見えないし、聞こえない。

 が、感じる、何かがある。

 そしてちらっと見えたのは、気絶してるはずの男の指がグニャって動いたのを。

「うおおおおお!」

 考えるよりも先に体が動いた。

 二振りの魔剣を抜いて、イリスをかばうようにしてその前に立って、ビュンビュンと剣を舞わせる。

 漆黒の魔剣が織りなす電光の網、そこにプツン、と一回だけ手応えがあった。

 ひかりがそれを切った。

(わー、見えない糸だあ)

(われもみえなかった)

 ……おれもだ。

 こんな奥の手を隠してたのか。

 ひやっとした。

 剣を振るって、壺振りの両手を切りおとす。これで大丈夫だろう。

「ありがとう、さあ行こうか」

 イリスは動じることなくいった。

 何が起きたのかわかってるのに、まるで動じることなかった。

 彼女らしいキリッとした顔。

 考えるよりも先に体が動いた。

 気づけばおれは彼女の唇を奪っていた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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