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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メルクーリ王国編

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116.丁半ばくち

 パクトス。

 メルクーリ領内にある商業都市の一つ。

 たくさんの金と人間とものが集まってくる、雑多な活気にあふれた街。

 そこに、おれとイリスがやってきた。

 イリスは冒険者風の格好で、イリス姫である事を隠してるお忍びな出で立ち。

 おれはマントをかぶって、腰に二振りの魔剣を下げてる。

「ここが偽札の出所か」

「デルフィナの話ではそういうことらしいな」

「しかし、あの女はこのパクトスから出てるとしかつかんでいないが、それでどうやって探すというのだ?」

「心当たりがある」

「本当か」

 イリスが食いつく。

 こういう場合のおきまりのパターンがある。

 偽札のマネーロンダリング、あるいは金を持ってない人間が急に大金を持って行く場所。

 それは――。

     ☆

 見張りに袖の下の小金を握らせて、建物の中に入る。

 一度地下に入って、曲がりくねった地下道を通って、上に上がる。

 すると、別の部屋に出た。

 そこそこ広いが、人が多くて、かえって空気が悪くなった感じの部屋。

 雀荘を数倍煙たくして、数段暗くした、そんな感じの部屋だ。

「ここが賭博場か」

 イリスが鼻と口を押さえながら聞いてきた。

 姫の彼女からしたら経験したことのない劣悪な環境なんだろうな。

「そうらしいな」

 部屋の中に人だかりがいくつかあって、それぞればくちに興じている。

 どこもやってることが同じで、サイコロの丁半を賭けるやつだ。

「こういうのは世界を越えて共通するもんなんだなあ」

「なにかいった?」

「いやなんでもない」

 ちょっと感慨深くなっただけだ。

「それよりも、ここに手がかりがあるのか?」

「ああ。商品という形を介さないで金を流すにはばくちが一番だ。ここなら大金が動くし、動いても足がつきにくい。ばくち自体メルクーリでも取り締まってるだろう?」

「ああ、ここ三年で十二回の禁止令を出してる」

「効果は?」

「……あまりない」

 イリスは悔しそうに言った。

 そりゃそうだ。そんなに頻繁に禁止令を出さざるを得ない状況で、出し続けるってのは効果がないってことだ。

 内政に携わってる双花のイリス姫としては歯がゆいところなんだろう。

「気を落とすな。これもそのうち何とかしてやる。今はこっちの話だ。王国の手が届かない場所だ。正体不明の金を動かすにはうってつけの場所だろ?」

「なるほど、確かに」

 頷き、納得するイリス。

「さて、賭けながら手がかりが現われるのを待つか」

「聞いた方が早いのではないか?」

「それじゃ警戒される」

 おれはそう言って、人だかりの一つに割り込んだ。

 最前列に無理矢理割り込んだ。

 真ん中に壺振りの男と、用心棒らしき男が左右についてる。

 壺振りはおれをちらっと見た。

「やるんですかい」

「ああ、ルールは」

「見てればわかる」

 壺振りはそう言って、木の皮で編み込んだ壺で二つのサイコロをなれた様子ですくい上げて、空中でガラガラとふった。

 そして壺をドン、と床にたたきつけて、またガラガラ、とサイコロが音を立てて落ち着く。

 すると博徒たちが丁半に次々と賭けていった。

 使ってるのは新しく発行されたメルクーリ紙幣。

 壺を開ける。

サンミチ(一・三)の丁」

 半数の客が当たり、半数が悔しがる。

「こういうことでさ」

「大体わかった」

「やるのか?」

 イリスが小声でおれに聞いてきた。

「ああ」

 おれはメルクーリ紙幣を取り出して、博徒に混ざってかけ始めた。

 心の中でひかりの興奮する可愛らしい声が聞こえる。

 おれの心の中でひかりも楽しんでいた。

(ちょう! つぎはちょうだよ)

(つぎは……はん!)

(つぎもはん! やっぱりちょうにする)

 ひかりの声に従って、おれは丁半をかけた。

 そこそこ勝つが、トータルでは負けてる。

(うーん、むつかしいね、これ)

(必ず勝つ方法がないわけでもないがな)

(ほんとうなのおかーさん!?)

(うむ、というかこやつならやろうと思えば勝てるはずだ)

(本当なのおとーさん!?)

 ひかりの興奮した声と、わくわくしてる感情が伝わってきた。

 いやま、勝てるか勝てないかって言えば勝てるけど。

(おー、さすがおとーさん。でもどうやってするの?)

 そうだな、見てな。

 壺がフラれて、サイコロが落ち着く。

 半。

 おれが心の中で予言した。

 賭けは丁だ。

 壺が開けられる、半。

(おー)

 壺がフラれて、サイコロが落ち着く。

 今度は丁。

 実際にも丁を賭ける。

 壺が開けられる、丁。

(わあ! すごーい。お父さんどうしてわかるの?)

 集中してサイコロの音を聞いただけだ。

 サイコロの面は全部違う数の穴が空いてる。どれが床に当たる――つまり上に何が来るのかは聞けばわかる。

 777倍の聴力があれば難しい事じゃない。

 心のなかでは100%言い当てつつ、実際に賭ける時は当てたりはずしたりを繰り返す。

 たまに連続で負けて、ちょっとだけ取り返す。

 トータルでちょっと負けてる事にするフェイクも忘れない。

 とにかく目立たないという方針でかけを続けた。

 隣に男がすわってきた。壺振りがあきれ顔になった。

「また来たんですかい」

「うっせえ、今日こそ勝つぜ」

「それはいいんですけど、ちゃんと金はもってるんで? ここは現金のみですぜ」

「おらよ」

 男が二つ折りにした裸銭を見せびらかすように放り出した。

「文句は?」

「ありやせん」

 壺振りはなれた手つきでサイコロを掬って、ガラガラと降り出した。

(おい)

 わかってる。

 エレノアに言われなくても、既に見えてる。

 男が取り出したメルクーリ紙幣。

 それは『カケル・ユウキ』のどれも入ってない、偽札なのだった。

 見つかったぞ、手がかり。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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