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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

メルクーリ王国編

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115.偽札を追う

「そんな事、しなくていい」

 一瞬だけの動揺を見せた後、イリスはきっぱり言い放った。

「ふむ」

 頷くおれ。

 イリスは彼女らしいキリッとした表情でおれを見つめてくる。

 ここだけ見たら本気でやめろと言ってるように見えるが、残念ながらおれは酔っ払ってくだまいてる彼女の姿を見てる。

 強がってるのはあきらかだ。

(指摘するとこじれるぞ)

 だろうな。

 おれはエレノアと同意見だ。

 こういう場合、こっちが強く出るとかえって意固地になるのが目に見えてる。

 となると……ヘレネーかオルティアから情報を得るのが先か。

 そんな事を考えてると、酒場のドアが開いた。

 一人の騎士が姿を見せて、慌てて中に入ってきた。

「殿下! ここにおられましたか」

「どうしたパノス」

 パノスという名の、いかにも謹厳実直そうな青年騎士がイリスの前に立ち、かかとを揃えて一礼した。

「殿下に急ぎご報告したいことが」

「なに?」

「……」

 パノスはちらっとおれを見た。

「ユウキ子爵の事に気にするな。まず報告を」

「はっ」

 パラスが応じて、イリスを見つめて真顔で言った。

「出所不明の紙幣が市中に流通しているのがわかりました」

「なんだって?」

 イリスは眉をひそめた。

「これです」

 パノスが一枚の紙幣を取り出した。

 ぱっと見本物の紙幣だ。イリスが前におれに見せたもの、最近流通しはじめたものと見た目がまったく同じだ。

 だが、イリスはそれを受け取って、ちらっと見ただけで。

「確かに偽物だ」

「え? どこでわかったんだ?」

「ここ」

 イリスは紙幣の真ん中、国王の肖像の横にある小さな字を指した。

 たった一文字だが、これがなんなんだ?

 おれの疑問を見透かしたかのように、イリスは説明をする。

「これは『カ』よ」

「『カ』?」

「そう、カケル・ユウキの『カ』。メルクーリ紙幣のここにはカ・ケ・ル・ユ・ウ・キの六文字のどれかが入ってる。厳密には別ルールがあるが、必ずその六文字のどれかだ」

「なにをしてるんだ勝手に!」

「カケルの功績を称えてこっそり入れてみた」

「硬貨の肖像だけじゃなかったのか……」

 おれは呆れた。

 紙幣と同時に再発行された硬貨にはおれの顔が使われてる。

 それは前に聞いて、知ってることだ。

 紙幣の事はいま初耳だか。

「ここにあるのは六文字以外のもの、つまり偽物ね」

「なるほど」

「これがどうしたの?」

 イリスはパノスに聞いた。

「はっ……じつは……」

 パノスはそう言って、紙幣に魔法をかけた。

 次の瞬間、紙幣にポワァ、と紋章が浮かび上がった。

 魔法に反応して浮かび上がる、メルクーリ王家の紋章。

「バカな!」

 イリスの顔色が変わった。

 おれは腰にずっとつけて、ヘレネーの扇子を取り出して同じように魔法をかけた。

 この世界に来てからはじめたあったヘレネーを助けた時にもらったもの。それに同じ魔法をかけると同じ紋章が浮かび上がった。

 メルクーリ王国は王家の人間だけが使える魔法がある。

 それをものにかけると、特定の魔法に応じて紋章が浮かび上がる。

 王家のものにだけ使える魔法だから、それを利用して偽造不能な紙幣を発行したらどうだ? ってイリスに提案したのはおれ。

 なのに今、紋章がついた偽の紙幣が現われた。

「どういうことだこれ」

「……」

「王家以外の人間にこの魔法が使えたってことか?」

「それはあり得ない!」

 イリスはきっぱり否定した。

「高度な魔法ではない。王族なら三歳児でも使えるが、王族以外はだれもつかうことは出来ない、そう言うものだ」

「つまり……王族の誰かがこれを作った?」

 おれはむかし、知りあいが語った妄想を思い出す。

 現実世界でも大半は国が紙幣を刷ってる、かなり特殊な機械をつかって。

 国が使ってる機械を一台ゲット出来れば、本物の偽札(、、、、、)を刷って一生うはうはな生活が出来るって言う妄想だ。

 この状況はそれに似てる。王族っていうのが特殊が機械で、これは実質本物の偽札だ。

「そんなの……ありえない。王族は全員ちゃんとしている」

「管理しきれないはみ出しものがいるんじゃないのか?」

「だとしてもあり得ない」

 イリスは更に言い切った。

「なんでだ?」

「みんなカケルの事は知ってる。ここにカケルの名前を一文字入れると言うことを、王族は全員。だから王族が悪さをしたとしても、ここにカケル以外の名前を使うはずがない」

(くくく、その通りだな。そこでわざわざ変える必要がない。知っていて魔法が使えるのなら、本物そのまま作ればいい)

「なるほど。つまり」

 おれはちょっと考える。

 状況を整理して、考えた。

「造幣には関わってないが、王家の魔法が使える人間の仕業。って事になるな」

「……」

 イリスは難しい顔をして、頷く。

 そんな人間はいない、だけど状況はそうなってる。そんな顔だ。

 そんな顔をして、考えた込んだ。

 おれはそれを見つめた。

 険しい顔だが、いい顔だ。

 普段のイリスの雰囲気によく似てて、おれが好きな彼女の顔だ。

 酒飲んでくだまいて、しまいには意地を張るよりはずっといい顔だ。

 それをしばらく見つめていたが、イリスは決意した顔でパノスに言った。

「もどるぞ。まずはこれの出所を割り出す。全てはそこからだ」

「はっ」

「まてイリス」

 おれは彼女を引き留めた。

「なんだ?」

「偽札の出所を割り出すんだな? ならおれに心当たりがある」

「心当たり?」

「ああ」

 頷く。

 餅は餅屋だ。

     ☆

 イリスを連れて、ワープでデルフィナの所にやってきた。

 商会の中、デルフィナの部屋。

 ソファーでイリスと肩を並べて、デルフィナと向かい合って座る。

 彼女に偽札を渡して、状況を説明。

「と言うわけだ、調べて欲しい」

「か、カケル」

 横でイリスが会話に割り込んできた。

「なぜ彼女に頼むのだ?」

「餅は餅屋って言ったろ。金の流れをつかむのなら商人だ」

「そ、そうか」

「デルフィナほどの大商人ならすぐにわかるだろ」

「あら、お上手ですのね」

「本気で思ってることを口にしたまでだ」

「ふふ。これの出所を調べればいいのですわね」

「ああ、出来ればすぐに。やれるか」

「すぐに、というのは無理ですわね」

「むっ」

 デルフィナでも難しい事なのか?

 なんとなくイメージだが、彼女なら任せろ、っていって一日もしないうちに割り出してくれるって思ってた。

「すぐに、は無理ですけれど、すでに、なら出来ますわ」

「え?」

「す、すでに?」

 おれとイリスが驚く。

 デルフィナは婉然と微笑んで、パンパン、と手を叩く。

 すぐにドアが開いて、彼女の部下がぞろぞろ入ってきた。

 おれとデルフィナの間にあるテーブルの上にいくつかの札束を置いていった。

「これは?」

「例の偽札ですわ」

「なんだって!」

 いきり立つイリス、札束をとって、まじまじと見て、魔法をかけた。

 紋章が浮かび上がる札束、それをパラパラめくって例の文字を確認するイリス。

「全部偽物だ」

 おれはデルフィナに聞いた。

「これ全部そうなのか?」

「一部ですわ」

 デルフィナは真顔で答えた、イリスの顔が強ばった。

「すこしまえから市中に出回ってました物ですの。こちらはそれを受け取るだけ受け取って、ため込んで、出所をそれとなく探ってましたわ」

「なるほど」

「待て」

 イリスが大声を出した。

「ため込んで調べたって……これが偽物だとわかっていたのか」

 お。

 そういえばそうだ。

 おれも「なんでわかったんだ?」って目でデルフィナを見る。

「ええ」

「なぜだ」

「ここに『カケル・ユウキ』が仕込まれてるのは一目で見ればわかりましたもの。そしてその理由も」

「なっ――」

 イリスが声をあげた。

 ほんの一瞬で顔が真っ赤になった。

 それをあえて指摘することなく、デルフィナは続ける。

「ですので、それじゃないのは偽物だとすぐにわかりますわ」

「なるほど」

「そこから集めるだけ集めて、出所を探らせてましたの」

「だから『すでに』ってわけか」

「はい」

「出所、教えてくれるか?」

「わたくしは商人ですのよ?」

 婉然と微笑むデルフィナ。

 イリスのキリッとした表情と同じ、デルフィナのこういう笑顔をおれは気に入ってる。

「見返りは何が欲しい?」

「こちらが集めた偽札を、十倍の金額で買い取って頂ければ」

「お前らしいな」

(そして大量に集めてる、今もあつめてる最中だな)

 当然だろ。

 それでこそデルフィナだ。

「それでいいな」

 イリスに聞いて、イリスはこくりと頷いた。

 おれ達はデルフィナから手かがりを得た。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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