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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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111.女王の寝室

 王都アドリア。

 国を挙げての盛大な即位式を、おれは人混みの中に紛れて見ていた。

 お祭り騒ぎの城下町、露天の酒場。

 そこで遠くの――普通なら望遠鏡じゃないと見えない距離にいるフィオナとマリを眺める。

 王宮のバルコニーに姿を現わして、民衆に手を振る二人。

 瞬間、街全体に歓声が巻き起こった。

(様になってきたな。あの二人)

「そうだな。綺麗になった」

(最初にあったときと見違えるほどだ。あれほど気が弱くて、どこにでもいるありふれた娘だったのにな)

 エレノアは話してるのはマリーの方だ。

 かつてマリーに取り憑いた事があって、それで何か感じるものがあるんだろう。

「まっ、成功しそうでよかった。助かったぞ、デルフィナ」

 そう言って、先からおれの向かいに黙って座ってるデルフィナを見つめた。

 女物のロングハットに、黒い薄絹のドレス。

 知性と色気が高いレベルで同居しているいい女だ。

「こちらこそ、カケル様に感謝をしなければなりませんわ。この即位式で二重に儲けさせていただけましたもの」

(抜け目がないな。金を貸しただけではなく、その金が使われた先まで手を伸ばしたということだな)

 エレノアがいう。

 そう、金を貸したのだ。

 この即位式に使われた金は、シラクーザ王国がデルフィナから借りたもの。

 長い戦いの中で国庫がほぼ底をつきてて、かといって即位式をしないわけには行かない、しょぼいものにする訳にはいかない。

 って事で金が必要になったところで、デルフィナが貸すと申し出た。

「おれが言うのもなんだが――よかったのか? 貸したりして」

「あの額なら普段の半分以下の金利でもかなりの儲けになりますわ。それに、カケル様が担保になってくださいましたし」

 デルフィナは抜け目ない笑顔をした。

「流石だな」

「恐縮ですわ」

 国が一商人に金を借りるなんて前代未聞だが、この形が一番無難にうまく収まるらしい。

 デルフィナから調達した資金でこうして大々的に即位式が開かれた。

 豪華な式典、そして民間からシラクーザの姫が舞い戻って女王になるという事実が民衆を沸かせた。

 空に打ち上げられた礼砲が鳴り響いた。

 シラクーザゆかりの、神聖なる数字17になぞらえた十七発の礼砲。

 直後、バルコニーに続く花道が出来た。

 花道はおれの前まで伸びてきた。

 おれに注目が集まる。デルフィナはいつの間にかいない。

 如才のない、いい女だ。

(いくか)

(いこう!)

 魔剣の母娘の声がした。

 おれは立ち上がって、花道を進む。

 ただ進むだけじゃない、魔剣の力――オーラの黒衣を纏って、女王達の下に向かって行く。

 それまでお祭り騒ぎだった城下町が一気に静まりかえる。

 ごくり、と誰かが息を飲んだ音が聞こえるくらい静かになった。

 時間をたっぷりかけて王宮に辿りついて、バルコニーに上がる。

 そこにいる女王姿のフィオナとマリーと向き合う。

「カケルさ――」

 おれの名前を呼ぼうとしたフィオナに、こっそり「しー」ってジェスチャーをする。

 フィオナはハッとして、言い換えた。

 そして、よく通る声で言った。

「大将軍カケル」

「大儀であった」

 姉の後に続いて、マリーも言った。

 こっちは柔らかめで、しかし聞く者を穏やかにさせる声。

 タイプの違う二人、共通しているのは――女王としての威厳が出てきたこと。

 おれはそんな二人にひざまづき、持ってきたものを掲げて、差し出した。

「ご命令により、奪還して参りました」

 差し出したのは指輪、サイズの大きい二つの指輪。

 王家の指輪。

 近くで確認できた民衆がざわつき、それが一瞬にして広まっていく。

「これを、あるべき主の元へ」

「大儀である、大将軍カケル」

「そなたの功績を称えて、我らにつける栄誉をあたえよう」

「――。ありがとうございます」

 ちょっと驚いた。その話は知らなかった。

 ここで渡して、二人が自分ではめるという話だった。

 アドリブだろうか。

(自分で考えて動いてるな)

 そうみたいだ。

 まったく、いい女だ、二人とも。

 おれは恭しく女王の手を取って、指輪をはめていく。

 二人の親指に。

 権威の象徴である親指に。

 王家の指輪は、王家の縁の者の手に触れ、聖なる光を放つ。

 あたり一体を包み込む二つの光。

 次の瞬間、民衆が――王都アドリアは地鳴りが刷るほどの勢いで沸き上がった。

     ☆

 静まりかえった深夜、女王の寝室。

 フィオナとマリの二人が立っていた。

 女王のドレス姿のままの二人の元におれがやって来た。

 追いついた暖色系の照明、雰囲気――ムードがあった。

「カケルさん」

「いらっしゃいませ」

「そのセリフはおかしいだろ」

「いいえ、おかしくありません」

「さあ、こちらへ」

 マリはおれの手を引いて、ベッドに座らせた。

 フィオナは部屋の片隅に用意してた台車を押してきた。

 二人のキビキビした動きはプロス亭にいた頃を思い出す。それを女王のドレス姿でやってるのがギャップで面白かった。

 フィオナが押してきた台の上に料理が載ってる。

 見た事のある料理だ。

「これは……もしかして」

「はい、山ウシの焼きめし、大盛りです」

「なつかしいな。最初に店に行ったときに出してもらったのがこれだっけ」

「覚えてたんですね」

「当然だ」

 おれは焼きめしを見て、マリーを見た。

「そういえばあの時マリーは何をしてたんだ?」

「わたしは店の奥に。あの時はカケルさんの事全然知らなかったから」

「なるほど。まあただの客だったからな、しかも一見の。知らなくて当然だ」

「この山ウシをカケルさんが狩りまくってるのをしって、マリーの事を助けてって頼みに行ったんですよね」

「そうだったな」

 おれは山ウシの焼きめしを見つめる。

 プロス亭の二人、看板娘の美人姉妹。

 シラクーザの落とし胤、掟破りの双女王。

「よく考えたら、お前達とおれをつなげたのがこの山ウシなんだな」

「はい」

「うん」

 面白い縁だ。

 おれは焼きめしの皿に手をのばした。

 フィオナがそれをやんわり止めて、かわりに皿を手に取る。

「ダメです。わたしたちが食べさせてあげます」

「カケルさん。あーん」

「あーん」

 二人の好きな様にさせた。

 女王姿のまま給仕してもらうのは結構面白かった。

 皿いっぱいの焼きめしはあっという間に平らげられた。

「ごちそう様、おいしかった」

 二人は頬を染めて、おれを見つめた。

 おれの前に佇んだまま、赤い顔で見つめてくる。

 その顔におれはぴんときた。

「何かしてほしい事があるのか」

「「え?」」

 二人は同時に声を上げた。

 おれの言葉に驚いたって表情が顔を上書きする。

「どうしてわかるの?」

 フィオナが聞く。

「理由は知らん。そう言う顔をお前達はしてた、ってしか言いようが無いな」

「カケルさん……」

 マリーは感動した。目がうるうるしだした。

「で、なんだ?」

「あの、お願いがあるんだけど」

 フィオナとマリー、二人は同時に親指の指輪をはずした。

 権威の象徴である親指の指輪。

 それをはずして、おれに差し出した。

「これを、もう一度はめて欲しいんです」

「カケルさんに」

「ふむ」

(おい貴様……)

「わかってる」

 エレノアが何か言おうとしたが、途中で遮った。

 まったく、無粋にも程がある。

 それくらいわかってる。

 おれは指輪を受け取って、二人の手を取った。

 迷うことなく指輪をはめた。

 二人の薬指に。

 サイズの合わないプカプカの指輪が光る。

 それを、二人は愛おしげに見つめた。

 これを望んだ二人。

 権威の親指ではなく、愛情を示す薬指にはめる事をのぞんだ。

 おれはフィオナの手を取った。

「カケルさん」

「綺麗だった、今日のフィオナはまさしく女王そのものだった」

 褒めて、キスをする。

 骨抜きになったフィオナはおれの腕に体重を預けてきた。

 フィオナを抱き留めたままマリーの手を取る。

「か、カケルさん」

「可愛かった。あんな可愛い女王ならおれ頑張れる。って声があっちこっちから上がってる」

 褒めて、キスをする。

 マリーも骨抜きになって、おれに体重を預けてきた。

 二人の息使いとぬくもりを漢字ながら、おれはドレスを脱がせていく。

「か、カケルさん」

「これ着たままの方――」

 何かいおうとする二人を、またキスで口を塞いで黙らせる。

 最後の権威の象徴である、女王のドレスを脱がせた。

 生まれたままの姿で、指輪だけをつけている二人。

「綺麗だ」

 おれはそう言って、二人をベッドに押し倒して、体を重ねていった。

 女王を務め、演じた二人を、ただの女に戻してやった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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