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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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110.銃後の備え

 シラクーザ王都アドリア。

 最後の拠点は――無血開城した。

 シラクーザ領を統一寸前まで持っていったチオザがいなくなって、主な幹部もそれより前に倒されてた状況とあって、統率する人間をうしなった兵に抵抗する意思はなかった。

 おれがいつも通り「噂の魔剣使い」の格好で単身迫ると白旗がすぐにあげられた。

     ☆

 アドリア王宮、玉座の間。

 フィオナとマリーの姉妹がそこに座っている。

 もとは国王と王妃が使ってたであろう玉座、右にフィオナ、左にマリーという並びで座ってる。

 そんな二人の前に感想を聞いてみた。

「どうだ? 気分は」

「えっと……よくわかりません」

「なんかすごく立派で……ここにいるだけで落ち着かない感じです」

 フィオナもマリーも自己申告とおり、見るからに落ち着かない感じだ。

 そわそわして、いかにも居心地わるそうだ。

 気持ちはわかる。

 このアドリアの宮殿、おれが今までみてきた中で一番豪華な宮殿だ。

 カランバのものよりもコモトリアのものよりも数ランクは上。

 広大な空間、立派な装飾柱、ふかふかのじゅうたんに鏡のように磨かれた地面。

 どれくらい金をかけてるのか想像もつかないくらいの豪華さ。

 少しずつ「女王の力」を振る舞うことになれてきた姉妹だが、この豪華さに圧倒されて元に戻りかけてた。

 いや、下手したら前より悪い。

 三歩進んで四歩下がる状態だ。

「これから毎日ここでお仕事するんですね……」

 マリーがつぶやく。不安そうだ。

 それを取り除くことにした。

「そうだが、そうじゃなくてもいい」

「え?」

「どういう事ですかカケルさん」

 姉妹が同時におれを見つめる。

「前も言ったが、お前達は女王だ。女王なんだから好きな様にすれば良い。ここが落ち着かないんだったら落ち着く場所に移動すれば良いし、なんだったら取り壊して落ち着く場所に作り替えらせるのもいい」

「い、いいんですか」

「一家の主がリビングをリフォームして何が悪い」

 規模が違うが、根本的にはそう言う話だ。

 おれがいうと、フィオナもマリーもハッとなった。

「そっか、そうしてもいいんだ」

「リフォーム……そういう考えがなかったです」

「ああそうだ」

 頷くおれ、ふと、あるアイデアが頭に浮かんだから、にやりと笑ってそれを話す。

「なんだったらプロス亭をそのまま運ばせてこの中に持ってきてもいい」

「お店を?」

「この中にですか?」

「ああ、これくらい広かったら店ごと入るだろ?」

「たしかに……うちの店よりも広いですね」

「まるごと入っちゃいます」

「入れればいい。それが一番落ち着くんならな。でもって謁見は一階の客席でやる。使者の謁見は女王様の接客つきって感じでやればいい」

「……ふむふむ、そっかー」

「あ、お姉ちゃんのその顔……本気でやるときの顔だ」

「へえ」

 マリーの言葉をきいて、フィオナを見た。

 おれの話をきいて表情が明るくなったフィオナ。

 さっきまで落ち着かなかった彼女のその笑顔は、妹によると「悪企み」する時の顔らしい。

「カケルさん。本当にそれを――好きにしてもいい?」

「ああ、好きにすればいい」

「さすがに反対されない?」

「女王の権力で黙らせろ。物理的な力が必要ならおれにいえ」

「女王と……カケルさん」

 最強じゃない。

 フィオナが小さくつぶやいた。

「ねえお姉ちゃん」

 フィオナの悪い笑顔が妹にまで伝染して、マリーは姉に耳打ちした。

 緊張が完全にほぐれたみたいだ。

     ☆

 玉座の間をでて、廊下を歩くおれ。

(前代未聞の女王になりそうだな。いや、女王が二人もいるという時点で前代未聞だな)

「歴史上いなかったのか?」

(貴様の知識に前例はあったのか?)

 逆に聞かれた。

 おれは考える。

「女王二人はいないけど、大統領と総理とか、天皇と総理とか。トップが同時に存在する国はかなり多い」

(ふむ、ならばその貴様の発想にも納得がいく。我の記憶の中にはないな。最高権力者が同時に存在する国など)

(そうなの? おかーさん)

(うむ、ああいや、そうでもないか)

 頭の中で、エレノアがにやりと笑ったような、そんな感情が伝わってきた。

(この国の最高権力者はやはり一人なのだからな)

「ふむ? 最終意思決定がどっちにあるかって事か? 姉の方か、それとも実際に握ってるのは気弱そうな妹ってパターンか。まあどっちでもいいか」

(そういうことではないわ)

「うん?」

 エレノアに否定された。どういうことだ?

 最高権力者が一人の意味が微妙にわからない。指摘するエレノアも半笑いって感じだったし、ますますわからん。

「カケル」

 向こうからリカがやってきた。

 やってきた彼女の腰に手を回して、ちゅっ、ってキスをして聞いた。

「どうした」

「女王に会いたいって人が来てる。多分面倒臭い人」

 頬を染めるも、普通に答えるリカ。

「面倒臭い?」

「うん。面倒臭い人」

「……わかった、少し待ってもらえ」

 とにかく「面倒臭い人」を、眉をひそめて繰り返すリカ。

 それを聞いて、対策は必要だなとおれは思ったのだった。

     ☆

 応接間の中に一人のじいさんがいた。

 おれが部屋の中に入るとじいさんは立ち上がったが、おれの顔をみて落胆した。

「あなた様は?」

「あー、おれは……」

 少し考えて、今もってる役職を名乗った。

「シラクーザ男爵、兼、王国反攻軍大将軍。結城カケルだ」

「男爵閣下でいらっしゃいましたか。お目にかかれて光栄です」

「そういうあんたは?」

 聞くと、じいさんは咳払いしてから、偉そうに――自慢げに名乗った。

「わしの名はコンスタン・カラマン・モ・シラクーザ。七代前まではシラクーザ王家の本流にあったものだ」

 名前は前もって聞いたけど、元王族は今はじめて知った。

 というかそれは偉いのか?

(今は平民かギリギリ貴族か、そんなあたりだろうな)

 エレノアが言う。

 天皇の孫とかそう言う感じなのか。

 そのコンスタンを座らせて、おれも座ってじいさんと向き合った。

 メイドが一人入ってきて、二人分の茶を置いていった。

 高級そうなティーカップ入れられた茶。おれは砂糖をいれて、銀のスプーンでガチャガチャ混ぜた。

 コンスタンも同じようにした。

 互いに茶を一口ずつくちにしてから、おれは切り出した。

「で、用事は?」

「女王殿下はいずこに」

「女王? ああそうか、女王に会いたいって話だっけ」

「さよう」

「それなら問題ない。話はおれが代わりに聞く」

「男爵閣下」

 じいさんがおれを軽く睨んでいった。

「わしは女王陛下にお目通り願ったのですぞ」

「用件をいえ、おれが聞いて伝えてやる」

「……この事を陛下はご存じか」

「どのことだ? お前に会ってることか? それとも話を聞くことか? まあどっちも知らないがな」

 コンスタンは眉をひそめた。

「貴族の専横は亡国の前触れですぞ」

「ふーん?」

 おれは冷ややかな目でじいさん達を見た。

「亡国って、国が滅ぶって意味だよな」

「さよう、古来より――」

「あんた今まで何をしてた」

 偉そうに語り出すコンスタンを遮った。

「なに?」

「亡国、国が滅ぶ。こう言っちゃなんだがシラクーザ王国は滅びかけてた、いや実質滅んだ、チオザ・ストラトスの手によってな。それでクロポリス王国なんてのが出来てただろう」

「あの様な蛮王を我々は認めておらぬ」

「実質の話をしてる。王国反攻軍がなかったら今頃この国は――どの国になってた?」

 コンスタンは黙った。

「で、その間お前は何をしてた」

「反攻の機会を待っておったのだ。時勢というものがある、それに遅れないように絶えず情勢を注視していたのだ」

「ふーん」

 それがこのタイミングか。

 ああ、このタイミングだろうな」

「デルフィナ」

 おれはその名をつぶやいた。

 コンスタンがびくってなった。

「な、何をいきなり」

「デルフィナの事をしらないのか?」

「……なんの事やらさっぱりですな」

「いやあ、おれもびっくりしたよ。あいつの方が色々情報持ってるだろうって聞きに行ったら、まさか直接関わってる人だったなんてな。あんた、だいぶデルフィナに借金があるんだって?」

 そう、借金。

 コンスタンに会いに来る前にワープの羽でデルフィナの所に情報を仕入れにいったらそれを聞かされた。

 貴族としての体裁を維持するためにデルフィナからかなりの金を借りてるらしい。

「で、シラクーザ貴族の大半が死に絶えて、傍流とは言え今や一番近い血筋にあるから、新しい女王に会いに――たかりに来たと」

「――」

 コンスタンの顔が怒りで真っ赤になる。

「まるでハイエナだな」

金の亡者(ホメーロス)め!」

 コンスタンはどん! ってテーブルを拳で叩いた。

「知ったような口を! ハイエナは貴様の方ではないか!」

「逆ギレか」

 なんというか流石だな。

「ええい! とにかく会わせろ! 新しい女王に! そもそも別性貴族が王家に連なるわしにこんな事するなど許されんことだ、女王にあって――」

「これさ」

 おれは銀のスプーンを手に取った。

 装飾がついた銀のスプーン、コンスタンのティーカップにも同じものがあって、さっき一緒にそれを使った。

「王族の人間が触ったら光る特別製なんだ」

「……え?」

「シラクーザにそういうものがある、知らなかったのか?」

「……はっ」

 銀のスプーンをみて、ハットするコンスタン。

 デルフィナにあったあと、おれは急ぎこれを用意させた。

 念の為に本当に王族になのかどうかを判別するためだ。

(よく考えついたものだ。褒めてやる)

 エレノアの言葉を適当に無視して、コンスタンに言う。

「血が薄くなりすぎたか、それともなんか別の理由があるのか。それはわからないけど」

 スプーンを置いて、コンスタンを睨む。

「どっちにしても、お前が王族としてでかい顔をするのは間違いだってことだ」

「――っ!」

 コンスタンは顔を真っ赤にして立ち上がって、部屋から出て行く。

「覚えていろ――必ず後悔させてやるぞ」

 と、捨て台詞を残して立ち去った。

「ばかだな」

 おれはスプーンを置いて、冷ややかにいった。

「ここまでやったおれが、後悔しそうな要素を放置しておくと思ってるのか?」

(そう言う考えに行き着かないオツムなのだろうさ)

 エレノアも冷ややかな声で呆れるように言った。

 それから一週間もしないうちに、コンスタンはデルフィナに追い詰められ破綻した。

 その後の行方をしるものは誰もいなかった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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