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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

くじ引きの異世界編

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10.くじ引き

 屋敷が更に矢を放ってきた。ひねりなく、まっすぐ飛んでくる。
 それを全部叩き落とす。
 屋敷の中に入ろうとしたけど。ミウがしがみついたまま離れない。

「ミウ?」

 顔を埋めたままいやいやする。
 よっぽど怖いんだろうな。

「じゃあ一緒に行こうか」
「――っ!」

 びくっと震えた。
 顔を上げておれを見る、ますます涙目だ。
 氷の矢が飛んできた。裏拳で殴り飛ばす。
 それを見たミウが盛大にビックリした。
 ビックリしすぎたせいか、涙が止まってる。

「大丈夫、おれがついてるから。ミウはちゃんと守るから」

 ミウはしばらくおれの顔をじっと見つめてから、うつむき加減になって、言った。

「わたしを置いて……逃げ出さないですか?」
「うん? おれが一人で逃げるかどうかって事? 危なくなったら」
「……はい」
「それはないから。危なくなったらミウを担いで逃げるから」
「本当ですか……?」

 なおも疑ってくるミウ。なんでそんなにそこを心配するんだろう。

「本当だ。まだまだもふもふしたりてないからな」
「まだするんですか!?」

 驚くミウ。
 でもなんだか、驚き方がさっきと違う。
 まあ対象が違うし、幽霊相手とおれ相手じゃ違うのも当然だな。
 ミウは更におれを見つめた(その間二回の氷の矢を叩き落とした)後、おずおずと頷いた。
 しがみつく腕を放し、おれの横に立つ。
 服の裾を摘まんでくる。

「よし、行くぞ」
「はい」

 おれたちは一緒に屋敷の中に入った。
 ドアを開けて中に入るなり冷気が体を襲った。

「むっ、あれは」
「なんですか」
「そこ、さっきそこの曲がり角に人影が」
「えええええ!?」
「行くぞ」
「はいぃ……」

 結局は涙目になってしまうミウだ。
 そんな彼女を連れて、廊下を曲がった。
 今度はよりはっきりと人影が見えた。

「メイド、か?」
「え?」
「今の見ただろ? なんかメイドみたいな格好をした人を」
「み、見えませんでしたけど?」
「……」

 更に追いかける。こっちの方が早いのか、次の角を曲がるとより長い時間姿を確認できた。
 目があう、やっぱりメイドで、若い女の子に見える。

「ミウ、今のは?」
「見えなかった……です」

 服をぎゅっと掴んだ、ますます怯えた。
 今のを見落としてと言うのは考えられない。おれと目が合って、次の角に消えていくまでに数秒間あったはずだ。

「となると、おれだけが見えるのかな」

 つぶやきながら、ミウを連れて追いかける。
 屋敷の中を駆け回った。かなり広い屋敷で、階段を上ったり降りたり。庭にいったん出たりまた中に入ったり。
 それを繰り返した。

 やがて、その幽霊を追い詰めた。
 一階の奥まった所。比較的日に当らない、じめじめとした所。
 小さい、寝るためだけの部屋がいくつもあるところで、おそらくメイドとか使用人達が使ってた部屋だろう。

 そこに幽霊を追い詰めた。
 改めて見る。やっぱりメイド服を着てる若い女の子だ。
 だけど体ごしに向こうの壁が見えるくらい透けてて、表情もものすごく険しい。
 幽霊――それも悪霊っぽいと感じた。

「――!」

 形容しがたい奇声を上げて、幽霊が飛びかかってきた。今まで逃げてたのに、一気に襲ってきた。

「つかまってて!」

 ミウを軽く引き寄せつつ、飛びかかってきた幽霊にカウンターのパンチを見舞ってやる。
 どこまで効くのかわからない、だからかなり本気を出した。
 山ウシでも数十メートル吹っ飛ぶくらいの力加減で殴った。
 が。

「スカッた!? くそそういうことか!」

 パンチが幽霊の体をすり抜けた。幽霊だから物理攻撃が効かない、と言うことなんだろう。
 幽霊はすり抜けて後ろに飛んでいったけど、急ブレーキして、また飛びかかってきた。
 今度は体のまわりに氷の矢をまるで衛星の様に出して、一緒に飛んできた。

「ご主人様!」
「大丈夫だ!」

 氷の矢を確実に打ち払いつつ、幽霊の突進を避けた。パンチがすり抜ける幽体だとわかった以上、不用意に触りたくない。
 どうしたらいいのか。
 ふと、おれはある事を思い出した。
 同時に幽霊がまた飛んできた。
 矢が効かないとわかったのか、今度は単独で突っ込んできた。
 好都合だ、余計な要素が入らずにすむ。
 おれは手をかざして、炎の魔法を使った。
 手のひらの先で炎が渦巻く、大きなたまになった。

「――」

 奇声再び。同時に幽霊の顔色が変わった。
 すれ違いざまに魔法をたたき込む。
 交錯、そして振り向く。
 幽霊の右肩が燃えていた。

「効くとわかれば」

 口元に笑みがこぼれた。

「あとはもう簡単」

 手を前につきだし、魔法をぶっ放したのだった。

「……」

 幽霊が消えた、同時に屋敷に充満していた冷気もみるみるうちに消えていった。

「これで一件落着」

 消える直前、幽霊の女の子が何か言いたげだったのが気になったけど、聞き出しようがないので、忘れることにした。

「大丈夫だったか」

 未だに服の裾をぎゅっと掴んでるミウを見た。
 ミウはおれを見上げて、瞳をキラキラさせていた。

「……ミウ?」
「ご主人様……すごい」
「うん?」
「あんなに怖いモンスターを……あんなに簡単に……。ご主人様ってすごい人だったんですね」「まあな」

 とりあえず威張っておくことにした。ミウのキラキラした目、あこがれの視線がきもちよかったし、あえて裏切る事もないから。

「何かあったら全部おれに任せろ。おれが全部退治してやる」
「はい!」

 はっきり言い切ると、ミウのあこがれの視線がいっそう強くなった。
 よしよし、これでいい。

「そうだ! お仕事」
「うん?」
「お掃除の途中だった……」
「ああ、幽霊に邪魔されたのか。じゃあしっかり仕事しておいで、頼んだよ」
「はい!」

 ミウは大きく頷いて、ぺこりと頭を下げて、小走りで去っていった。
 その後ろ姿、そして残して行った信頼の余韻。おれはしばし、その場にとどまってそれを味わっていた。
 ひとしきり味わった後、おれもこの場を離れようか、と思ったその時。
 幽霊が霧散した辺りに、紙切れが落ちているのが見えた。

「あんなもんあったか?」

 不思議に思って、近づいて拾い上げる。
 まじまじと見た、見覚えがある代物だ。

「くじ引き券……?」

 そう、くじ引き券。買い物をした後によくもらうもの。そして、この異世界にくるきっかけになったもの。
 見れば見るほど、それはくじ引き券だった。
 何故こんな所にくじ引き券が――そう思う一方で。
 くじ引き券――くじ引き。
 おれはとある期待を持ったのだった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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