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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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107.チートの男

 キレネトの町。

 町の中心に作られた指揮用の高台に二人の男がいた。

 二人とも鎧姿で、立ち位置からして、片方は指揮官で、片方はその部下といった所だ。

 指揮官の男はヘロドトスといい、タナシにつぐ軍の中の実力者だ。

 彼はは望遠鏡をを使って、外壁の向こうで展開されてる戦いをみていた。

「運がよかったな」

「はい」

 副官の男が返事をした。

「ゲネサレに千刃、キレネトにヤツ(、、)が出現したとの情報がありました」

「そうか、ならばやはりこっちに来てるのは」

「百雷のイオ、と推測されます」

 副官が答えた瞬間、前線に雷が落ちた。

 自然現象じゃない、晴れ渡った空に一瞬で雷雲が出現し、そこから複数の雷が落とされた。

 大規模な雷の魔法だ。

「正解だったようだな」

「はい。我々は運がよかった。シラクーザ軍で最弱の相手を出来るのですからな」

 副官がいい、ヘロドトスがにやりと頷く。

「全軍に知らせ。死力を尽くしてたたかえとな。あの相手ならば勝てる」

「勝つのですか?」

「ここでは、な」

 ヘロドトスがにやりと副官をみた。

蛮族軍(、、、)は終わりだよ、君。わたしは次の身の振り方を考えねばならないのだ」

「それがこの一戦であると?」

「降るにも有利な条件で降りたいものだ、そう思わないか? この絶好機に一勝をさらって即座に降伏を申し出れば有利に降れるというものだ」

「なるほど」

「ヤツが介入してからは負け続きだ、ここで勝てれば唯一の白星になる。そして相手はヤツの部下でも最弱の百雷。チップを張るならここしかない。鬼の居ぬ間になんとやらだ」

「さすがですな」

 ヘロドトスは「ふっ」と笑った。

「さあ一気に片をつけろ、こっちの兵は3000、魔法使いの小娘なぞ一気にすりつぶしてやれ」

「はい」

 ヘロドトスは高台から戦況を見守った。

 彼は前線にでるタイプの指揮官ではない、こうして司令部にあたる場所――安全な場所から指揮を出すタイプの男だ。

 そこから次々に命令をだす。

 戻ってくる――ひっきりなしに入ってくる戦況は自軍優勢のものばかりだ。

 やがて、喜色満面で兵士が飛び込んできた。

「ご報告! 敵軍撤退していきます!」

「勝ちましたな」

「……」

「ヘロドトス様?」

「追撃するべきか……このままでもいいが、もう少し戦果が欲しい」

 迷うヘロドトス。

 相手は百雷のイオ。

 敵軍の重鎮の一人である、一魔法使いとしてはかなりの強者の部類に入る。

 が、戦場においてはこの通りたいしたことはない。

 もしも、そのイオをとらえることが出来るのなら? 更に有利な交渉が出来るのではないか?

 そう思って、決断するヘロドトス。

「よし、全軍に――」

「へ、ヘロドトス様!」

 別の兵士が血相を変えて駆け込んできた。

「どうした」

「て、敵の増援です」

「増援か、規模は」

「ま、魔剣使いです」

 微妙にかみ合わない返事。

「なんだと!」

「落ち着いてくださいヘロドトス様」

 驚くヘロドトス、それを副官がたしなめた。

「キレネトにヤツが現われたとの情報がありました。向こうの戦果(、、)を考えればあっちが本人です。そしてキレネトとこのティベリアと離れております。鳥の如く空を飛んできたとしてもこの速さでつけるはずがありません」

「そ、そうだったな」

 ほっとするヘロドトス。

 副官が気づかせてくれた両地の距離差が彼を安心させた。

「すると偽物、はったりか」

「はい。近頃流行っている魔剣のレプリカを持った何者かでしょう」

「ならば排除させろ。偽物の魔剣使いが率いる部隊などふみつぶしてしまえ」

 命令を下すヘロドトス、が、兵士は動かない。

「どうした、伝令にはしれ」

「そ、それが……」

「どうした」

「部隊では……ないのです」

「は?」

「単独です。魔剣使いは単身でこちらに向かってきてます」

「……は?」

 ヘロドトスが唖然となる。

 慌てて望遠鏡を構えて前線をみる。

 レンズの先で、黒いオーラを立ちこめらせ、二振りの魔剣を持った男が単独で向かってきている。

「単独だと……まさか」

「本物……?」

 副官の言葉にヘロドトスが青ざめた。

 部隊を率いるのではなく、単独で真っ正面から向かってくる。

 戦術を飛び越えて、戦略級の存在になりつつある男。

 本物のエレノアを操り、新たな魔剣を産み出した男。

 魔剣の主、五爵の大将軍。

 現われた男に青ざめたヘロドトスだが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「全軍を前面に集中させろ」

「ヘロドトス様?」

「馬鹿め、一人で来るなどと。いくら強かろうが人間一人で大軍に勝てるものか。全軍突撃してひねりつぶしてやれ」

「は、はい!」

 兵士が慌てて伝令に走った。

 しばらくして兵士が相手に群がっていく。

 それをしばらく見つめた後、ヘロドトスが口を開く。

「さて、行こうか」

「お待ちを、ヘロドトス様自らが前線に出るのは」

「だれが前線に出るといった?」

「え? しかし今『行く』と」

「そうだ、行くのだ。今のうちに逃げるのだよ」

「……え?」

 副官が唖然となった。自分の耳が信じられない、って顔だ。

「魔剣使いが現われた以上もはやここはもたん。兵どもが時間を稼いでるうちに逃げるしかない」

「し、しかし」

「死にたいのならもたもたしていろ。私は死にたくない。兵3000人で稼げる時間の間に逃げおおせることにするよ」

 ヘロドトスは高台をおりて、つなげてある馬を引いて、ひょいととび乗った。

 そしてためらう副官を一瞥して、後方に向かって馬を走らせた。

 町はがらんとしている、戦闘中の町民は家の中にいることが命じられている。

 無人の町中を逆走して駆け抜ける。

「別の方法を考えないとな。わたしが生き残れる方法をな」

 つぶやくヘロドトス、自分の保身の事を考えている。

 彼はこういう男だ。

 即決即断でこれまで生き延びて、出世してきたことで有名な男。

 その判断はいつも正しい。今も魔剣使いの力を把握した上で、3000人を捨て駒にすれば余裕で逃げおおせれると判断した。

 その判断は――はじめて狂った。

 常識では計れない男によって。

 反対側から町を出た直後、正面に一人の男が待っていた。

 黒衣を纏い、魔剣を手にする男。

 ついさっき望遠鏡で見た男だ。

「バカな! なぜここに!」

「……」

「ええい! このままつっきる」

 すれ違いざま、男は無言で魔剣を振った。

 ヘロドトスの視界がぐるりと回転する。

 自分の首が一太刀で刎ねられたことを、彼は最後まで理解することはなかった。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
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