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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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104.狡い男、ズルイ男

 ヤルコンの先、ユフラテスと言う名前の町。

 戦場で万戸将軍タナシを失った蛮族軍は激しく動揺した。

 それほど大きな存在、ということか。

 残存兵を相当しつつユフラテスまで進軍させると、副将を名乗る男が密使を出してきて、命の保証と引き替えに降伏を申し出た。

 おれは受け入れた。

     ☆

 ユフラテスの町。

 シラクーザの領内でもっとも発展した町で、古くから商業と文化の二つで栄えてきたまちだ。

 商人達のほとんどはここに拠点を作り、多くの文化人もここに住んでる。

 それほどの町。

 そのユフラテスに悠々と立ち入った。

 兵達に守られて、巨大な神輿が町に入る。

 それは一言で言えばキングサイズの天蓋付きベッドという代物だ。

 サイズはベッドだが、作りはソファー。その上にフィオナとマリが乗っている。

 それを兵が前後左右に十人ずつ、総勢四十人で担いでいる。

 最初は馬車に二人を乗せるつもりだったが、アウラにやんわりと却下された。

 ヘレネーよりもリカよりも、一番「民に近い王族」であるアウラ。

「この方が王族らしいの」

 といった。

 過去の大半を軟禁されていたリカにも、軍事方面に才能を特化させたヘレネーにもない発想だ。

 もちろんおれにもない、が言われれば理解はできる。

 車輪に乗せて運ぶよりは人間に担がせた方が「ハクがつく」。

 だからそうした。

 その神輿の上に乗ってるフィオナとマリはシラクーザ王族の衣装を着せてる。

 神輿と相まってかなりそれっぽくなったが。

「き、緊張するわ」

「お姉ちゃんしっかりして」

 自己申告通りめちゃくちゃ緊張してる顔のフィオナ。

 しっかりしてと励ますも、実は同じくらい緊張してるマリ。

 遠目には大丈夫だが、近くで見るとボロが出る。

 そんな二人を乗せた神輿は町に入って、大通りをゆるりと進む。

 ユフラテスの民が道の両横で集まって、歓声で迎え入れた。

 チグリスの時と同じだ。

 シラクーザゆかりの人間が戻ってきた、王族が戻ってきた事を民が喜んでる。

 あの時はなんでなのかって思ったが、タナシの事を見てから何となくわかった。

 蛮族軍、相手は民の心をつかめていない。

 多分不満に思われてる。

 それが巡り巡って、シラクーザゆかりのフィオナ姉妹への歓迎に繋がった。

 その歓迎はしかしフィオナとマリにとってプレッシャーだ。

「フィオナ様バンザイ!」

「マリ様バンザイ!!」

 あっちこっちから二人を称える声が上がる。

 それでますます、二人が緊張して萎縮する結果になる。

 神輿の横を歩いてるおれは二人を見あげて、いった。

「フィオナ、マリ。気楽に構えてていいぞ」

「カケルさん……」

「なんかあってもおれがいる」

 フィオナがハッとした。

「お姉ちゃん、しっかりして」

 マリがさっきとまったく同じ言葉を繰り返した、が、口調はまるで違う。

 そこにあるのは緊張じゃなくて興奮。

 傷口の舐めあいじゃない、強い語気で姉を叱咤激励する口調だ。

「カケルさんに恥をかかせたらダメだよ。ほら、みんなが見てる」

 マリはそう言って、神輿の反対側を見た。

 みんなってのが民の事なのかと思ったが、マリが見たのはそうじゃない。

 神輿の横を歩く、ヘレネー、リカ、アウラの三人だ。

 三カ国の首脳、変装しておれの部隊に混ざって行軍してる彼女達。

 その三人を見つめながらマリが言う。

「ここでわたし達がおどおどしたら失望されちゃう」

「……そうだよね。うん、キョドっちゃダメだよね」

「うん!」

 持ち直すフィオナ、姉の返事にはっきりと頷くマリ。

 今の話でなんでヘレネーら三人に関わってくるのかわからない。

(愛されてるな)

 エレノアが言った。からかい半分の口調だ。

「どういうことだ?」

(ヘレネーもリカもアウラも、王族としてのつとめを立派に果たしてる者だ。同時に貴様の女として恥ずかしくない振る舞いを心がけてる)

「そうだな」

 何となくそんな感じはする。

 公私ともに頑張らなきゃって意気込みは感じる。

(姉妹は、その三人に負けるわけにはいかんと言ってるのだ。王族でありながら貴様の女。比較対象があの三人なのだよ)

「ああ、なるほど」

 納得した。

 確かにフィオナとマリはあの三人と立場がまったく一緒だ。

 自分達と照らし合わせて比較するのは当然の流れ。

 正直そんなのはどうでもいい、どっちにしろフィオナもマリもおれの女だ。

 だが、そうこうしてるうちに二人が落ち着いた。

 神輿の上で、衣装に負けないくらい王族っぽい振る舞いをした。

 ならそれでいいのかもしれないとおれは思った。

     ☆

 伝統的にシラクーザの王は北側、王妃は南側に宮殿を構える。

 王都がまさにその作りだ。

 ならば女王はどうなのかというと――おれはユフラテスの北側にある屋敷に入った。

 その屋敷に謁見の間を急ごしらえで作ってもらって、フィオナとマリの玉座を並べた。

 左にフィオナ、右にマリ。

 おれが二人の斜め前――いわゆる大臣ポジションに立っている。

「ムラト・フェリスと申します。両殿下にお目にかかれたことを光栄に思います」

 鎧姿の男が跪き、恭しく二人に挨拶した。

「ユウキ閣下にもお会いできて光栄です」

 一応シラクーザ男爵のおれにも挨拶をした。

「あなたがこの町の責任者なの?」

 フィオナがフランクな口調でムラトに聞いた。

「いえ、責任者というか、ユフラテスは万戸将軍様――おっとと、タナシが治めてました。わたしはその副官でございます。なのでまあ今は一応責任者といえば責任者ですがちょっと前まではそうではなく」

「副官?」

 首をかしげるマリ。

 ムラトが大急ぎに補足説明する。

「はい。いやあ、あいつはひどいヤツでした。わたしも何度も止めようとしたんですが、人の話を聞く様な輩ではありませんでした。もう独断専行、全部あいつのやったことですはい」

 ムラトは最初から早口でまくし立ててる。

 口に泡して、ツバを飛ばしてる。

 いろんな意味で不快になる相手だ。

(くくく、全力で責任回避をしてるな)

 ついでにフィオナとマリに取り入ろうとしてるな。

 まあ、わかる。やりたいことと気持ちはわかる。

 人間としてはあれだが、この際よしとする。

 テオのような、なんで裏切ったのかわからないのより、こういうやつの方が扱いやすい。

 寄らば大樹、こっちは大樹でいればいい。

(貴様も言うようになったではないか)

 言ってないけどな。

 心のなかでエレノアと会話を続ける。

 その間、ムラトのくちゃべりは続いていた。

「というわけではい、ヒデケルはわたくしめにお任せ下され。あそこにいるヤツとは古くからの付き合いで、説得すれば」

「ヒデケル?」

 おれが話に割り込んだ。

「ヤルコン西にある砦の名前でございます。チグリスとユフラテスの間、という事になりますな。本来はにらみを利かせるのにいい場所にあるのですが、現状はむしろ孤立しているというわけですな」

「なるほど」

 ユフラテスに入ったおかげで勢力圏が寸断されたってことなのか。

「ですので、かるーく説得すれば」

 その言い方だと本当にかるーく聞こえてくる。

「説得かあ」

「どうする、お姉ちゃん」

 二人は悩んだ、悩んだ末おれに救いを求めるかのように視線を向けて来た。

 おれは咳払いして、いった。

「陛下達がなさりたいように」

 まっすぐ二人を見つめて、言う。

 暗に好きにしろ、何があってもおれがケツもってやる、と匂わせる。

 それは……正しく伝わった。

 フィオナとマリはムラトを見た。

「じゃあ説得をお願い」

「お任せあれ!」

 ムラトは胸を叩いて言った。

 満面の笑顔、女王に重用された喜びってとこか。

「ダメだった時は、カケルさん、お願い」

 マリの追加の一言で、ちょっとかわいそうになるくらいしょげてしまうのだった。

     ☆

 謁見の間を出て、廊下を歩く。

 フィオナとマリの護衛はナナに任せてきた。

 そうして廊下を歩いてると、向こうから一人の女が使用人に案内されてやってきた。

 黒いシルクの帽子に背中を大きく露出させたドレス。

 王侯貴族の上品さとは、別の種類の色気を自然と放つ女。

 デルフィナ・ホメーロス・ラマンリ。

 財産が一国に匹敵するとまで言われてる商人の女だ。

「ご無沙汰しておりますわ、カケル様」

「ああ」

 立ち止まって話すおれとデルフィナ。

 彼女を案内したきた使用人はそっと壁際に移動して、おれ達の邪魔にならない様に離れた。

「来てたのか」

「ええ、たったいま」

「どうだ? 儲かったか?」

「ええ、とても」

 デルフィナは婉然と笑った。

「そうか、それはよかった」

 おれはそう言ってデルフィナの腰に手を回して抱き寄せた。

 不意打ち、反応できてない彼女はおれの腕の中に収まった。

 そのまま――キスをする。

 甘い香りの唇を吸う。

 見た目とは違って、おれの腕の中に収まってしまうと途端に少女っぽくなる彼女の唇を楽しんだ。

 たっぷり味わったあと、解放してやった。

「……いきなりなんですか」

「儲かったんだろ? おれのおかげで。分け前だ」

「ずるい事をおっしゃいますのね」

 デルフィナの拗ねた顔。腕の中から解放してやったのに、まだかわいかった。

 綺麗と言うよりかわいかった。

 彼女は一度深呼吸して、表情を引き締めた。

 そして、おれに言う。

「カケル様。一つ許可をいただきたいですが」

「なんだ、許可って」

「実は物資だけではなく、情報を売りたい儲けたいと考えておりますの」

「情報?」

 なんの情報だ?

 一瞬テオの事を思い出して眉が動いた。

「勘違いなさらないで。売りたいのはカケル様の情報と魔剣の情報ですわ。本物の魔剣であることと、新たに出現した魔剣、それを使いこなす魔剣使いであること。この三つを売りたいと考えてますの」

「……それでお前が儲かるのか?」

 おれはちょっと考えたが、わからなかった。

 それは金になるのか?

「売り方次第、とだけ」

「そうか」

 何もわからないが、デルフィナがそう言うからにはそれで儲かるんだろうな。

 なら、それでいい。

「許可してもいいが、一つだけ条件がある」

「分け前ですか?」

 悪戯っぽく言われた。それを無視した。

「ひかりが人間になれるのは内緒だ。あくまで――魔剣ひかり」

「ええ、心得てますわ」

 もちろんだと言わんばかりの顔で言われた。

「ならいい」

 それさえ守ってくれれば問題ない。

(親ばかだな)

 いつも通りのエレノアのからかいを無視する。

 そして、デルフィナの肩を抱いて歩き出す。

 デルフィナも、彼女を案内してきた使用人も驚いた。

「カケル様?」

「この後の用事は?」

「陛下がたにご挨拶が――」

「ないなら付き合え」

 フィオナとマリならおれが後で言っとけば大丈夫だ。

 そうして、一番近くにある部屋にデルフィナを引き込んだ。

 部屋の中にベッドがある。ビンゴだ。

 彼女を連れ込んで、慌てる使用人を閉め出した。

 そのまま、キスをする。

 今日二回目のキス。

 しばらくキスをした後、解放してやる。

「いきなりどうしたんですか」

「分け前をもらうぞ」

「え? それはいらないと」

「いらないとは一言も言ってない」

「そ、それは確かに……」

「いやか?」

「……」

 デルフィナは拗ね顔をした。

「……ずるい方」

 おれはデルフィナを抱いた。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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