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くじ引き特賞:無双ハーレム権 作者:三木なずな

シラクーザ王国編

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102.裏切り

 砦の中、当てもなくぶらぶら歩き回る。

「カケル」

 奴隷兵の格好をした女がおれの元にやってきた。

 見かけない顔だ。

 おれの前に立って、魔法を唱えた。

 顔が変わった。変装の魔法だ。

 変装をといた後に出てきたのはメリッサの顔だった。

 不死の聖女メリッサ。ソロン教でも高い地位にいる彼女は奴隷兵と同じ格好をしてる。

「お前は大丈夫か?」

「うん、大丈夫! というか普段よりもずっと平気」

「そうか?」

「だって怪我の一つもしなかったもん、カケルのおかげで」

「リカに魔法が直撃したけど?」

「あれはデコピンくらい痛かった」

「流石だなお前は」

「で、あたしはこれからどうするの? また第一小隊の所にこっそり戻ればいいの?」

 メリッサは今第一小隊にこっそりつけてる。

 あの、おれのために命を投げ出しかねない第一小隊だ。

 鍛え直すまでの間、メリッサにこっそり守ってもらってる。

「いや、もうしばらくヘレネー達三人を頼む」

「全員まもっちゃおうか?」

「それじゃお前の負担が大きいだろ?」

「大丈夫大丈夫。それにあたし、カケルのために何かしたいから」

 メリッサを見る、顔が生き生きしてる。

 元々開けっぴろげな性格をしてるけど、ここ最近はさらに性格が変わってきた。

 聖女とはかけ離れた、年頃の少女って感じのイメージを受ける。

「本当にいいのか? やってもらってる事が全然違うぞ。ヘレネーたちと第一小隊とは」

「女王達が完全介護で、奴隷兵たちは致命傷だけ守るんだよね」

「ああ」

 ある意味奴隷兵の方が完全介護だが。

「お前の力は信用してる。二十人から二十三人になったところで大した違いはない」

「カケル……」

 メリッサは赤面して喜んだ。

「だが違うことをやるとなったら話が違ってくる。全力と手加減を同時にやれってことだ。おれの感覚じゃ左手で四角を、右手で円を同時に描くくらい難しいことだと思うんだが」

「あっ、カケルのその例え上手い」

 メリッサは感心した。

 ってか、やっぱりそれくらいの難易度があるんだな。

「大体そんな感じだよ。でも大丈夫、無理じゃないから」

「ふむ。わかった、なら頼む」

「うん!」

「終わった後にたっぷり可愛がってやる」

「……うんっ!」

 メリッサが変装の魔法を使ってから、立ち去った。

(すっかり乙女だな)

「そうだな。印象がだいぶ変わった」

(我は昔の聖女殿の方が好みだったんだがな)

「へえ? それは意外だ」

(あっちの方が心につけいる隙があるのだからな)

 エレノアはクククと笑った。それにデコピンをした。

「今までの奴らはそういう人間だったのか?」

(うむ。特に英雄と呼ばれる人種は。心は光にあふれているが、決まって奥底に凝縮された闇があった。それが美味だったよ)

 またククク。

「趣味悪!」

(そういう意味ではきさまはつまらん。それほどの力をもっているのにハーレムを作り女を抱くことにしか興味がないのはどうなんだ? もっと闇を作れ。乗っ取り甲斐がない)

「勝手な事をいう」

 砦の中を歩いて回った。

 ナナの指揮の下で、投降した敵兵の後処理をしたり、占拠をすすめたりしてる。

「カケル様」

 しっとりした声が聞こえる。

 振り向くとヘレネーがいた。

 戦いやすい軽装のヘレネーは普段とイメージが少し違ってて、それもかわいい。

「どうした」

「今そこに使者が。デルフィナの手の者だとか」

「デルフィナ?」

 なんでここに? って思った。

「わかった会おう」

 ヘレネーについていった。

 砦の入り口あたりに戻ってくる、一人の男がいて、それを二人の奴隷兵が警戒してる。

 二人は第一小隊の女だった。「ごくろう」って言って、キスして下がらせた。

 男に向き直る。

「デルフィナの部下か」

「はい。アドニスって言います」

「用件は?」

「デルフィナ様から伝言です――テオが裏切った、と」

 そう言って、一枚の封筒を差し出してきた。

「……デルフィナにわかったと伝えてくれ」

     ☆

 砦の中央にある一番牢固な建物。

 司令官用の部屋の中に、おれはナナを呼びつけた。

 デルフィナからもらった封筒――テオが裏切った証拠が入ってる封筒を彼女に見せた。

 紙は二枚、一枚はデルフィナの手紙で、状況を説明したもの。

 もう一枚はテオが蛮族軍にあてる直筆の手紙だ。

 内容は――もうすぐ王女の二人が見つかるから、すぐに首を送るってものだ。

「テオ・コストマス。まさか裏切っていたとは」

「ああ、まさかだ。シラクーザ残党軍をあの時点でまとめてたんだから、最後まで徹底抗戦して散ってくタイプだと思ってた」

「わたしもだ」

「あの時点で残党軍にいるメリットは皆無のはず。つまりあの時点では白だったはずだ」

「その後だということになるのか、裏切ったのは。……主の脅威を知った蛮族軍が内部から切り崩しをはかった、という所か」

「なるほど」

 ナナの分析はうなずける所があった。

 おれの参戦で勢いを盛り返したシラクーザ軍に、蛮族軍が搦め手を使ってきた。

「今にして思えば心当たりがあるな。例の夜襲、すんなりと襲われすぎだし、あいつが連れて行った追撃の手勢もすんなり負けすぎた」

「……たしかに」

 ナナが重々しく頷いた。

「この手紙の最後に『公爵の地位を約束された』とあるが……これが決め手ということなのか」

「公爵か」

「富貴栄華を約束されたのだろうな。しかし、この手紙は本当なのだろうか」

 ナナはテオの手紙を見つめながら言った。

「デルフィナはおれに嘘はつかない。本当か、デルフィナも騙されてるるかのどっちかしかない」

「あの女は騙されない」

 ナナは断言した。

「情報の真偽を見分ける目は天下一品のはずだ。でなければあそこまで稼げない」

「同感だ」

 つまり、この手紙は本当の事だと言うことになる。

 デルフィナが何らかの形で捕まえた本物の情報だ。

「……主、わたしに命を」

「命?」

「主をコケにしたヤツは許せん。四半日でここにヤツの首を並べてやる」

 微かに憤慨するナナ。

 普段は冷静沈着な武人って事を考えれば、もはや激怒って言っていいレベルだ。

「いや、いい」

「許すのか」

「そうじゃない。お前はこの砦を守っててくれ。安心して兵を任せられるのはお前しかいない」

「……」

 ナナは複雑な顔をした。

「任せた、いいな」

「承知した」

 頷くナナにキスをしてやった。

 きょとんとするナナ。

「よく怒ってくれた。気持ちはもらっていく」

 ワープの羽を取り出す。

「ヤツは、おれが直々に成敗する」

     ☆

 チグリスの町、領主の舘。

 訪ねたおれはテオの元にまっすぐ通された。

「おお男爵様、探しておりましたぞ」

「おれを?」

「さよう。実は兵の再編が完成したのだ。近いうちに反攻に出るのだが、その前に王女殿下に激励をして頂きたい」

「……」

「何しろ我々は残党軍、そして再編した兵どもは玉顔を知らない。ここは一つ兵に王女殿下たちから直々に激励をして頂きたい。さすれば士気もあがり、勝利は揺るぎないものになる」

「……」

「王女殿下はいまいずこにおられるか」

「その前に一つ聞きたい」

「なんだろうか」

「これの事だ」

 テオに手紙を突きつけた。デルフィナが入手した手紙だ。

 それを見た瞬間。

「そ、それをどこで――」

(自白したようなものだな)

 エレノアがくくくと笑った。

 いつにもまして楽しそうなのが腹立つ。

「い、いや待ってくれ、それは誤解だ」

「誤解?」

「そう誤解だ。そうだ、向こうについてフリをしてやったのだ。内通したフリをすれば隙を見せるかもしれないからな」

「それでどれだけの兵を犠牲にした?」

「うっ」

 テオは言葉をつまらせた。

 そして、徐々に表情が変わる。

 焦りから、怒りへ。

 おれを睨むようになって、やがて嘲笑に。

「ふ、ふふふふふ」

「なにがおかしい」

「予想外の事で予定が狂ったが、まあいい。ここに貴様が一人でやってきたのなら、それはそれで好都合だ」

「なんだと?」

「貴様さえいなければ、後はどうとでもなると言うことだ!」

 テオが言った瞬間、おれの足元に魔法陣が広がった。

 あらゆる光を吸い込む()黒の魔法陣。

 それが広がっておれの全身を包む。

「さらばだ。虚無の空間で生涯さまようがいい」

 勝ち誇ったテオの顔を最後に、おれは純黒に包まれた。

 何もない空間。

 上下左右もない、立ってるのか寝てるのか、浮いてるのかどうかもさえわからない空間。

(やられたな)

「なんだこれは」

(禁呪の一種だ。主に処刑に使われた)

「処刑?」

(これ自体に害はない。ただとらえたものを隔離するだけだ。ただし生きてるうちは出られない。そして捕らわれたものは餓死か発狂死をとげた後に、空間は解除される。発動すれば相手をとらえ、しかる後に対象の死骸を吐き出すという便利な呪文だよ)

「エグいな」

(これをフィオナとマリに使うつもりなのだろう。とらえてしまえば確実に死体が手に入るのだからな)

「なるほどな。で? 出るにはどうすればいい」

(死ねば出られるぞ)

「死なないで出る方法を」

(ないな)

「嘘つけ。本当にそうならひかりにあえなくなったお前がそこまで落ち着いてるはずがない」

(痛いところをピンポイントでついてくるなきさまは)

「いいから話せ」

(はあ……。この空間全体が壁だと言えばわかるか?)

「空間全体が壁?」

 おれが感じてるのは、ここは何もない闇の空間だ。

 それが全部「壁」なのか。

 ならば――とエレノアを握った。

「全力でたたきつければいいんだな」

(そういうことだ)

 答えるエレノア、どこか楽しそうだ。

「いくぞ。うおおおおお!」

 全力で――レッドドラゴンを倒した時以上の全力でエレノアをたたきつけた。

 777倍の力、追加攻撃100%つきの攻撃。

 闇が――砕け散った。

「なっ!」

 テオの驚愕する顔がみえた。

「ば、馬鹿な! あれから戻ってくる人間がいるなんて!」

「……言い残すことはあるか?」

 エレノアを握ったまま、テオに近づく。

「ま、待ってくれ。話を――ちゃんと話せばわかる」

「話してみろ」

 冷徹に聞き返す。

「そうだ。向こうに掛け合おう。お前を今の男爵から侯爵にあげてもらえるようにする。おれならできる、だから、な」

「……」

「か、金が欲しいのか。わかった、金貨で――」

「ふう」

「わかった領地だな! 話をつける、なるべく中央に――」

「もういい」

 エレノアを横薙ぎに振った。テオの首が飛んだ。

 一呼吸遅れて、ゴロンって声がして、首の切断面から血が噴き出して、崩れ落ちていった。

(優しいな、貴様)

「痛めつける価値もないからな」

(くくく、それもそうだ)

 楽しげに笑うエレノア。

 こいつは今日楽しいばっかだな。ちょっと腹立つ。

 が、これで。

 今度こそシラクーザの反攻が開始するはずだ。
■ドラマCD試聴サンプル公開
活動報告、もしくはyoutubeに「くじ引き特賞」で検索してみてください。

【タイトル】くじ引き特賞:温泉ハーレム権
【キャスト】
カケル :石川界人さん
ひかり :山下七海さん
ヘレネー:佳村はるかさん
ナナ  :諏訪彩花さん
イオ  :三森すずこさん
+注意+
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