人型機動兵器アサルト・ストライカー
月明かりのない闇夜の空。
上空6万フィートで秘密作戦が行われようとしてた。
「降下開始!!」
大型輸送機の後部ハッチから滑るように降下を開始する巨大兵器。
AS人型機動兵器。この兵器の登場により、既存の陸戦兵機は全て過去のものになったと言っても過言ではない。いわば陸戦兵機のドレッドノートである
今回の彼らのミッションは敵性組織の拠点破壊と兵力を削ぐことである。
「オペレーター。こちらシークル。予定高度到達これより攻撃を開始する。」
シークルの駆るASの肩部レールキャノンが火花を散らしながら砲弾を打ち出していく。
「シークル。さすがね。弾着を確認したわ。初撃で敵の発電施設、及び指令施設を破壊できたみたいね。完全なパニック状態よ。この調子でガンガンやっちゃって。」
興奮気味に指示にならない指示を出してくるオペレーター。
「ガンガンって…。簡単に言うな。それにこれは俺のだけの…。手柄じゃないさ。」
心のなかで機体の調整を完ぺきにこなしてくれているスタッフに感謝をしつつ、確実に目標設備を撃破していく。
「警報!?ロックオンされたか!!」
いくら混乱状態とはいえ、敵も組織。思いの外指揮系統のダメージは小さかったようで早くも立て直し反撃に打って出てきた。
地上からの対空砲火と、空対地ミサイルにさらされる。
「甘いな。この程度。」
シークルはチャフとフレアを展開しつつ、篠崎重工ご自慢の高次元スラスターの超機動で敵の攻撃をいとも容易くかわしていく。
その間にもシークルはレールキャノンで着々と目標を撃破していく。
『衝撃』
突然の衝撃にさらされる。一瞬。シークルには何が起こったのか分からなかった。
「シークル!大丈夫!?きりもみ状態になって、すごい速度で落下してる!!どうしたの!?」
敵弾直撃の影響で、警告音が鳴り響く
『Pull up.Pull up.Pull up.Pull up.Pull up....』
オペレーターの言葉と警告音で現状をやっと理解したシークル。
敵の徹甲弾が直撃したのだ。シークルの装甲を抜くことはかなわなかったが、降下中に想定以上の力がかかったために、高度の維持が困難になり急速落下したのだろう。
操縦桿を引き上げ、出力を上げていく。
地上に無事着地。損害は肩の装甲に多少傷がついたことぐらいだ。
「クソ…。俺としたことが…。オペレーター聞こえるか?付近のマップを直ぐさま転送してくれ。地上から目標を破壊していく。」
「了解。今転送したわ。地上からだと添付したデータのルートで行けば効率的に破壊目標を破壊できるわ。」
送られてきたデータに目を通し、オペレーターの仕事の良さに感心する。
「仕事が早いな。助かる。」
「いいえ。コンピュータが全部やってくれるんですもの私は何も」
「そうか、まぁ良い。いつも助かる。また何かあれば連絡する。」
「そう言って貰えると嬉しいわね。こちらからも何かあれば連絡するわ。」
オペレーターはコンピューターの扱いは苦手だ。
そのためこういう作業は実は事前に、やっておいてくれている事を知っている。
自分でやるべきなのだろうが…。
「俺も甘え過ぎかな…。」
そう言いながら、メイン武器の右腕ライフルと左腕近接用ブレードを起動し
鎧袖一触、次々と防衛施設、設備を破壊していく。
敵はついに反撃の手段を完全に失い白旗を上げた。
「すまんな…。これも仕事なんだ。」
降参し投降するために出てきた敵戦闘兵を焼き払っていく。
これもミッションのうちなのだ…。すまん。心のなかで念じながら、
ダース単位で敵兵を殺していく。
あらゆるセンサーで動態反応も検知できなくなり、彼は任務を終えた。
「こういう任務は出来れば避けたいんだがな…。」
そう思っていると。
「気をつけて、6時の方向から高熱源体接近、この速度と熱量…。恐らくASよ!任務は終えているわ早く撤退を…」
「いや、奴も撃破する。ここで戦わなくても、世界のASの数を見れば…。近々どこかでぶつかるだろう。だったら今、ここでそいつを叩く。」
「無茶を言わないで!ミッション終了して、残弾だってそんなに残っていないのよ!補給も無しなんて!とにかく…。」
彼は、心のなかですまんな。と言いながら通信を切った。
レーダーに反応。遠距離からの砲撃。だが明後日の方向に着弾。
「新人か?とにかく、敵さんのお出ましか…。」
残弾の少ないレールガンで応戦しながら距離を詰める。
「おかしい?いくらなんでも敵の射撃がとにかくメチャクチャだ。」
当てる気がないような、だが何かしら意図があるような…。
気持ちの悪い射撃である。
そんな中警告音と電子音声のメッセージ
『ケンブ、レールガン、ザンダン0、パージシマス』
「言わなくてもわかってるよ!」
主兵装のライフルで応戦しながら、尚も距離を詰める。
相手の懐に入り込み、シークルご自慢のレーザーブレードで敵を真っ二つにする算段だ。
実のところ、ASの装甲を抜ける遠距離兵器というのはあまりにも少ないのだ。理由はコストの問題が大きい。なので、レーザーブレードのような近接兵器で格闘戦を行うのが主流なのである。
ところがである
ガキィーーーーン…バチン!!
徹甲弾が装甲を抜く音。それに電気系統のショートする音。
「一体何が起きたんだ!?コンピュータ!」
「ミギ・ケンブ破損。」
「なんだと…。クソっ。ダメージコントロール!!破損部へのエネルギー供給はカットだ!!」
「リョウカイデス」
ASの装甲を抜ける遠距離兵器はあまりにも少ない。しかし存在しないわけではない。
ある程度の経済力を持っているものであれば別の話なのである。
「このリッチマン!急に射撃も正確になってきた…。俺が有効射程内に入るまで遊んでやがったな…。このトリガーハッピーめ!!」
敵の攻撃を何とか躱しながら距離を詰める。…が詰められない。
射撃の精度がましたことでこれ以上近づけなくなったのである。
敵に近づけず戦況が膠着状態になる
その時、アナログの救難メッセージ受信用スピーカーから音声が。
「聞こえているか?貴様…。」
突然のことに驚く。この回線につないでくる奴は大概、遭難者だ。
だが今回は違う。
「そう驚くな。それにしても、貴様面白いな。通信を切って単独任務か?シルエットと武装からASの名前はシークル。パイロットはグエン・ライカーだな?私の名前はイアン・スペンサー。ASの名前はヴァルチャーだ。まぁよくも、私のカワイイ部下たちと重要な施設をメチャクチャにしてくれた…。私の今の気持ち、貴様には分からんだろうな。まぁ良い。…とにかくだ、貴様にはここで死んでもらうぞ」
通信が途切れる。敵の猛攻。彼、グエンは判断に迫られる。
「クソ…。ここで敵の攻撃に耐え、弾切れになった所を近接で叩くか。あるいはリロードの隙を突き、突撃するか…。」
グエンの本音はここで突撃をしたい。先の任務で疲弊している。敵もかなりの手練である。故に早急にこの敵を倒したい。だが、それが自殺行為なのは明らかだ。無策に飛び込めば、敵の放つ凶弾に倒れることになるだろう。今の通信も、早く攻撃を仕掛けてくるようにとプレッシャーを掛けるためのものだろう。
しかし、相手の武器の残弾を把握できていないのも事実、持久戦になれば明らかに殺られる。
「相手の手数が減るのを待って踏み込むしかないか…。」
そう考えた所で、敵、ヴァルチャーの猛攻が止む。
「弾切れか!もらっ…。」
両者一定の距離でにらみ合い。
グエンは自分が誘い込まれているのではないかと、戦いの刹那の中で疑念を抱いてしまった。
故に飛び込めなかったのである。
「グエンか面白いやつだ…。私の誘いに乗って来ないとはな…。」
イアンのヴァルチャーには残弾が残っていた、だが絶対命中距離ギリギリでシークルが静止。
この微妙な距離に、動くに動けなくなってしまった。
初撃は完全に相手が油断していた。適当な射撃。ASを抜ける遠距離兵器がないという油断。それに、直線的に動いていたから当てられた。
今回はそうもいかない。相手は神経を研ぎ澄ませている。外せば自分が真っ二つにされる。
グエンとイアンの二人を。この戦場を。いやな雰囲気が包んでいく。
両者、固まっている間にイアンはシークルのブレードのおおよその最大射程距離を、戦闘エリアに入る前に受け取っていたデータから推測。砲撃を躱されてしまった場合のシミュレーションをコンピュータで行った。そこから、シークルが突撃の際の踏み込みで最短で斬りかかるとしたら、2ステップ必要になる事を突き止めた。
斬りかかられる前に2射目を射つことが出来る。
ニヤリとほくそ笑むイアン。
先に動いたのはイアン、ヴァルチャーの方だった。
「消えろ!」
撃ちだされる砲弾。
ギリギリで交わす、シークル。
「この距離で外すだと!?だがこ…。」
シークルのレーザーの刃がイアンごと、ヴァルチャーを切り裂く。
そして爆散するヴァルチャー。
同時に、シークルのレーザーブレードが爆発する。
膠着状態でイアンが思考をフル回転させている。
グエンも黙ってやられる訳にはいかない。黙々と思考し活路を見出そうとしていた。
「クソ…。最大射程距離がネックに。1発目を避ける自信はある…。だが2射目が…。どうやっても躱せそうにない。どうすれば。」
その時コンピューターからの警告音
「エネルギー キョウキュウ シュツリョク フアンテイ。キケンデス。」
「そうか…。エネルギー過多になっているのか…。いや、ということは右腕分全部まるまるエネルギー供給過多ってことか?って事は…。コンピューター。余剰エネルギーを全てブレードに回せるか?」
「カノウデスガ キケンデス」
「可能なんだな!!」
「コンデンサーヨウリョウ ナドノ ジョウタイカラ 10秒ホド キョウキュウカノウデス」
「10秒もあれば行ける…。射程を伸ばせるぞ…。」
そう、グエンは破壊された右腕を逆手に取ったのである。
「何とか勝てたな…。今後は遠距離からのAS兵器も念頭に入れないと…。完全にミッションは終了。本部に通信を入れないと…。」
通信装置の電源をつけた瞬間、怒鳴り声。
「一体、あなた何無茶してるのよ!!」
「クッソ…。耳が…。」
「あっ、ごめんなさい…。じゃなくて、こっちは衛生でそちらの動きを全て把握していたのよ!もっと的確なオペレーションだって組むことだって可能だったのに!!ちゃんと聞いてんでしょうね?グエ…。」
グエンはおもむろに通信装置の電源に手を伸ばし、プツン
「はぁ…。彼女にだけは…。絶対に勝てないな。」
ため息を付きながら回収ポイントに向かうのであった。
END
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文字を書くのはほんとうに難しい。
もっと色んな本を読まないとなぁ…。