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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter3:Kiss to you , because Kiss to me.
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第77話:『富豪の精華』と『猪突の眷顧』

 お父さんとお母さんの交友関係が広いおかげで冬音ちゃんは、自分が何かしら困っている時に助けてくれる少女たちが、一国のお姫様並みにいました。

 

 大聖堂の中を歩いているだけでも、「冬音ちゃ~ん!」や「冬ちゃ~ん!」や「冬姉~!」と元気に挨拶をしてもらえて、みんなたくさん優しくしてくれます。


 冬音ちゃんも冬音ちゃんで、挨拶をしてくれたみんなに律儀に話し返し、さらには大好きなお喋りを自分からもしていくので、いつも隣にいる智夏ちゃんが――、


「これじゃあ、いつになっても目的地につかないじゃないの~~~!」


 と怒るのは、珍しく正論でした。

 

 そしてそんな冬音ちゃんの面倒を、両親以外でよくみてくれたのは――、

 

 舞人の妹である桜雪ちゃんと、瑞葉くんの妹である風歌ちゃんでしょうか?

 

 その頃から活発的だった桜雪ちゃんは2人にとって武道の師匠で、桜雪ちゃんとは対照的に本の虫さんだった風歌ちゃんは、勉学の先生になってくれました。


 ちなみにですが舞人と瑞葉くんと奈季くんは、冬音ちゃんや智夏ちゃんのアホの子の面を増長させた張本人でありますので、筆舌することにも値しません。

 

 しかしお馬鹿だった人形姉妹にも桜雪ちゃんたちは、舞人と惟花さん並みに根気よく接してくれたので、冬音ちゃんと智夏ちゃんにも、愛情は伝達していました。

 

 だから冬音ちゃんは、瑞葉お兄ちゃんや風歌お姉ちゃんのお顔が一日みれないだけで、暗鬱とします。奈季くんのことは舞人から、化け物だよと教えられていたので、さほど心配ではないのですが、お兄ちゃんとお姉ちゃんは心配です。


 それにみんなが去ってしまった理由が本当に舞人にあるなら、余計に仲良くしてもらいたいのです。冬音ちゃんは舞人が悪い人だとは、考えていませんから。

 

 ……でもあの不思議な黒い人たちがいる中で、瑞葉お兄ちゃんや風歌お姉ちゃんや――お化けの奈季くんだって、本当になんともないんでしょうか……。


 ……なんだかとても不安なような気がします……。

 

 これらは冬音ちゃんにとって、水晶のように綺麗な感情でしたが――、


「大丈夫ですよ、冬音ちゃん。そもそも瑞葉さんや奈季さんは、1人でもまったく問題ありませんし――風歌お姉ちゃんには、瑞葉さんが付いてくれていますからね? 確かに瑞葉さんは馬鹿なことばかりやっていますけど、いざという時は頼りになりますし、そんな瑞葉さんなら風歌お姉ちゃんも必ず守ってくれますよ」


 英才で信服する桜雪ちゃんにこう言明してもらえれば、安心はできましたが。


 今の冬音ちゃんはお風呂から上がっていて、寝台の上に座っていました。


 桜雪ちゃんが抱っこをしてくれたので、冬音ちゃんも猫のように甘えます。

 

 時計の針はまだ10時前後なので、さほど眠気に襲われるわけでもありません。

 

 だから冬音ちゃんもこうしてお布団の中には入っていなかったのですが、急に頭の中にもたげてしまっていた心配事が消えると、本を読むことにしました。料理屋の子供たちから面白いよと勧められた、サンタクロースが出てくる絵本です。

 

 冬音ちゃんは、世界で一番尊敬する舞人から――、


『本は速く読んだりせずに、ほかの人に内容を語れるぐらいに、じっくりと読む』


 と教わっていました。


 だから決して飛びし読みはせずに、丁寧に読んでいきます。


 読めない文字はさすがにありませんが、時たま出てくる絵本の中の光景で「???」と思う部分は桜雪ちゃんに尋ね、しっかりと理解を深めていきました。


 そして時間をかけて絵本を読んだ桜雪ちゃんは涙を流します。感動したのです。


「桜雪ちゃん。『おっちょこちょいなサンタクロース』はとても感動的です。サンタクロースのお兄さんの子供たちに夢を届けようとする熱意と、それを支えるサンタクロースの美人なお姉さん、そしてクリスマスを壊そうとしている『可愛そうな王様』のやり取りがとても素敵です。――わたしも将来はサンタクロースになろうと思いました。ロザリアにお願いをして、サンタクロースのなり方を教えてもらいます。そしてわたしもみんなにおしっこじゃなくて――夢を届けます!」


「そうですか。それは偉いですね、冬音ちゃん? 冬音ちゃんがサンタクロースになってくれたら喜ぶ子供たちがたくさんいてくれるはずですよ? ――でもサンタクロースになったからって、美人なお姉さんに出会えるとは限りませんからね?」


「! それはどうしてですか桜雪ちゃん!? この絵本はうそつきなんですか?」


「うそつきではありませんけど――サンタクロースさんだってたくさんいますから、中には舞人くんみたいな男の子のサンタさんもいるよということです」


「……そうでした。確かにそれは桜雪ちゃんの言うとおりです。――でもわたしはそれぐらいでは諦めませんよ桜雪ちゃん! クリスマスプレゼントを楽しみにしてくれている子供たちがどこかにいるなら、わたしはサンタクロースになります!」


 舞人も涙してしまうでしょう。


 自分と同じく無職状態の冬音ちゃんが、立派な職種に就くというのですから。


 でも舞人だからこそ――、


「お父さんは冬音ちゃんがお外で働くことなんて、絶対に認めません!!!」


 と無職仲間がいなくなるのを恐れて、愛嬢を束縛する姿が想像できましたが。


 我が兄ながら恥ずかしい限りです。


 冬音ちゃんにとっての鹿さん役は、例の犬さんが担ってくれるようです。


 一緒に絵本を読んでいた彼女も冬音ちゃんと同じく感動をしたらしく、まるで鹿さんになったように冬音ちゃんの前で走り回っていましたから。彼女は冬音ちゃんから、太陽の匂いがするから「お日様ちゃん!」と名付けられていました。


 そしてそんな冬音ちゃんは、予備がなくなった飲み物を下階の貯蔵庫へと取りにいった智夏ちゃんを驚かせようとして、うんちの玩具を用意していました。それを布団の中に入れておいて、智夏ちゃんのことを驚かそうとしているのです。


 びっくりした彼女の顔を想像したら、冬音ちゃんはいまから面白くなりました。


 どさくさに紛れれば智夏ちゃんのおっぱいも触れるので、嬉しい事だらけです。


 冬音ちゃんは能天気なので、全て上手くいくだろうと、根拠なく確信していました。まさか自分が智夏ちゃんにお説教をされてしまうなんて考えていません。

 

 でもこんな冬音ちゃんなので、あと4日で世界が滅ぶといわれても、いまいちぴんっと来ないのです。クリスマスをみんなと過ごすことだけで、頭が一杯でした。


 あの《黒い人たち》が大変な存在だという事はさすがに理解できていますが、お父様とお母様ならなんとかしてくれるだろうと、冬音ちゃんは考えていたのです。

 

 根っからの楽天家なのかもしれません。


 両足の自由がきかなくなっても、舞人ならすぐに治してくれて、その間はむしろ舞人に甘えられるからラッキーぐらいにしか考えていなかったのですから。

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