表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter2:Kiss to hell,because Kiss to heaven.
63/187

第53話:『虚偽なき友好』と『聖夜の色』

 舞人たちが今いる建物は大聖堂内でも中心部の、「王の間」という所です。


 王の間の2階の最東端に、「会食の間」と呼ばれている空間はありました。

 

 もともと「会食の間」は、他宗教の幹部と瑞葉くんや風歌ちゃんが食事をする時だけに使うものなので、部屋の広さ自体はそれほどのものではありません。


 最大収容人数としては、18人ほどでしょうか?


 常識的な用途を考えれば、これでも広いぐらいなのかもしれません。


 とはいえ今回は特例中の特例です。収容人数が悲鳴をあげました。


 教皇や天人、老師や枢機卿で合計で14人もいて、舞人の従者として付いてきてくれた惟花さんと桜雪ちゃんと怜志くんで、ぴったりと18人だからです。


 会食の間の新緑しんりょく色の扉の前には、旭法神域に仕える少女たちが2人いました。


 2人は頭を下げてくれるので、舞人からはぽんぽんと肩を叩いておきます。


 執務室からここまで案内してくれた少女の促しに従って、中には入りました。


 お互いに下の名前で呼び合う、その少女からは――、


「舞人くんとの食事を求めた人は、すでに会食の間に集まっているようですよ?」


 という趣旨の言葉を伺っていました。


 だから、不遜と侮蔑の塊の彼らが先に会食の間にいても、驚きはありません。


 舞人のことを待たせないように思慮した上での行動なら嬉しいところですが、彼らに限ってそんなことはありえないだろうなとは、重々承知していました。


 大湊氏や光梨ちゃんはもちろん、枢機卿や老師たちとも、舞人は顔見知りです。


 今さら人見知りのようなものはありません。


 ただ兄と顔を合わせることが、気まずいだけです。


 しかし彼だって子供ではありません。変に根に持ったりすることはありません。


 部屋の中の光景は、舞人が脳内で思い浮かべたものと、完全一致していました。


 彼らが1つの食事机を囲むように座っているのはもちろん、何よりもその態度です。大湊氏はもちろんですが枢機卿や老師の連中までもさも我が物顔で、椅子に腰かけていました。今にも足を組みそうなほどに、リラックスしています。


 敵陣ともいえる本拠地で、こうも図々しくなれる神経がなければ、弱き人々をなぶり、自分の私腹を肥やすことなんて出来ないということなのでしょうか?


 この場で唯一、賓客らしい態度を取ってくれていたのは幼馴染の少女だけです。


 舞人と同世代から20歳ほどまでの紳士と淑女が、ここにはいました。


 思想的にはどうあれ個人的に舞人に敵意を向ける人は、彼らの中にはいません。


『舞人は自分たちの仲間』という認識が、未だに彼らにはあるようでした。

 

 もともと舞人だって期待はしていませんが、入り口に背を向けて座る大湊氏は舞人に顔を向けることもなく、メニュー表とにらめっこをしていました。彼の左隣に座る祈梨ちゃんが舞人に顔を向けてくれるので、無礼さが際立ちます。

 

 あいつ舐めやがってと心中では思いながらも、顔には出しません。惟花さんがぎゅっと舞人の右手を握り、余計な動きをしないように束縛していたからです。


「――桜雪ちゃんと怜志も来たのか。でもそれが懸命だな。惟花だけに舞人の面倒みさせると、何するかわからないし。でもさすがに刀は置いてきたんだろ舞人?」


「置いてきたよ。お前たちのことぐらいはナイフさえあれば、瞬殺できるからな」

 

 旧友のように舞人に声をかけてくれたのは、神水しんすい寺院の司教の青年でした。


 食事机の右列の3番目の椅子に、彼は着座しています。


 年の頃でいったら、20歳前後でしょうか? 


 野性味があるというよりは、気品のある容貌をしていました。服装も清潔感がある空色のローブを羽織っていて、耳もとには同色のピアスをつけています。


 ちなみにですが舞人は、肩が張るからと魔術師ローブを脱いで、赤色のカットーソーと真っ白のデニムを堂々と身につけていました。髪は真っ白で瞳は真紅なので、1人でクリスマス気分なのかもしれません。楽しそうで何よりです。


 惟花さんも舞人が1人で恥ずかしくないようにと、私服に着替えてくれていました。淡い赤色のロングスカートに、真っ白のカーディガンを羽織っています。

 

 神水寺院の司教をする彼に、もっとも深く根付いている思想としては、『誰かを不幸にしなければ、自分が幸せになることはできない』というものでしょうか?


 だからこそ彼は、自分にとって有効な得物がいれば、地元である神奈川県から遠征を行いそこまで侵略して、自らの「神の愛」を増やしているわけです。


 舞人と彼の考えは、思想的には全面対立をしていました。


 しかしだからといってここで喧嘩を吹っかければ、舞人の負けでしょう。


 先ほどお化け青年が諭してくれたことが、なんだったのとなりますから。


 入り口の扉から考えて一番遠くに、舞人たちに用意された席はあるようです。


 少なからずは、舞人の好みを反映してくれたのでしょうか?


 しかしそこまで向かうとなると、食事机の左側面へと並んでいる寺院側か、食机の右側面へと並んでいる教会側の背中のどちらかを、通る必要がありました。


 左側に進めば兄から視線を受けて、右側に進めば兄のすぐ後ろの通過です。


 どちらに進もうと貧乏くじでした。


 もういっそのこと舞人は思い切り、兄のすぐ後ろを通っていくことにします。


 大湊氏からみてもっとも近い右斜めの席に、彼は座っていました。


 しかし舞人がすぐ後ろを通ったぐらいでは、さすがに何も起きません。


 ちらりと大湊氏が、2人の関わり合いを覗いていたぐらいでしょうか?


 舞人は冷温な態度を貫いて、右手に握る惟花さんと一緒に歩みを進めます。


 食事机を東西南北で捉えると、北部側に座っているのが大湊氏と祈梨ちゃんで、東部側に座っているのが教会側で、西部側に座っているのが寺院側で、南部側に座るのが舞人たちでした。否が応でも舞人は、大湊氏と対面が求められるのです。


 しかし舞人としても大湊氏の正面なんかよりも、祈梨ちゃんの目線の先を好みましたが、だからといって惟花さんを大湊氏の前に座らせるのは論外です。


 祈梨ちゃんの目の前に惟花さんで、大湊氏の前に自分をで、満場一致でした。


 そんな舞人のすぐ後ろを、「地獄から暗殺を命じられてきた使者」のように付いていた桜雪ちゃんは舞人の左前の席に、そして反対側の寺院側の列では、阿弥陀のような慈しみで足を進めていた怜志くんが、惟花さんの右前へと着席します。


 老師や枢機卿の視線がある中でも2人は、目を見張ってしまうほどに堂々としていますが、決してアホの類ではないので、肝っ玉が太いだけなんでしょう。


 大湊氏なんかのほうに視線を向けたら舞人としては、気分が悪いの一言に尽きるので視線を逸らしたいのですが、それはそれで敗北を認めたようで忌々しいです。


 そんな舞人を武装化させてくれたのは、この場の給仕役を担う少女でした。


 基本的に瑞葉くんは自由な服装というものを推奨していたので、メイド服のようなものを強いることはありませんが、さすがに今回のような場合は違います。


 旭法神域内で食事係りを担当してくれている少女のためにと、メイド服をモチーフにした、教会衣装を着衣していました。赤のワンピースと白のエプロンが中心的な衣装です。カチューシャやパニエやブーツも、赤と白が基本配色でした。


 舞人はこのメイド少女とも知り合いです。下ネタを話し合うぐらいの仲でした。


 居候だった舞人は、惟花さんや桜雪ちゃんや冬音ちゃんにご飯の面倒をみてもらってましたが、その食材を調達するのが舞人の数少ない仕事だったからです。


 ここにいる面子は、決まった物を食べさせられるコース料理なんて親の仇のように憎むので、メニュー表から好きな物を選んでもらう形式にしたようでした。


 舞人としても、それは朗報です。


 コース料理なんかを食べ、無駄に食事の時間が長引くことを恐れましたから。


 舞人と惟花さんは何をする時も一緒なので、2人でメニューをみていると――、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ