第170話:『通底の生命』と『永遠の封緘』
どうして彼に綺麗事をいえるのでしょう。君がこの世界に生まれた意味は素晴らしいものだよなんて。誰もがこの世界の神様でもなければ、誰もがよくわかっていないままなのに。どうして自分がこの世界に生まれたのかなんていうことは。
でもたとえいつかは散ってしまうことが花の運命なんだとしても、咲けば大地に嵐を起こしてしまうことが運命の花なんだとしても、咲くことを恐れて土の中に眠っていたり、ほかの花と自分は違うために造花のように咲いてしまうのは、彼という花が咲くことで大地に嵐を起こしてしまうことよりも悲しいことのはずです。
「たぶん笑うかな。舞人が舞人らしく生きてみた結果がそれならそれで面白くて」
この世界に生まれた意味を大切にして彼には彼らしく咲いていてもらいたい。
そんな風に想っている人はおそらく彼が思っているよりも多いはずなのに。
この世界には咲かなくていい花なんてないのでしょう。
自分という花を咲かせたならばいつかは誰かがその花をみて笑顔になってくれたり、そんな彼の傍で絆を咲かせてくれようとする花たちだっているはずだから。
「でもだから俺も嫌いになれないんだけどね。舞人がこの世界に生まれた意味は」
雪降る聖夜の空飛ぶ城で金髪の青年と金髪の少女はヤドカリと笑ったのでした。