第14話:『世界を失った歌姫』と『歌姫の架け橋』 ②
もしも舞人だって“自分にとって惟花さんとはどんな存在なのか?”と問いかけられれば、それはさすがに悩んでしまったのでしょうが、それでも舞人が惟花さんに対して“もしかしたら惟花さんはこの世界の誰よりも才色兼備な女性なのでは?”という敬意を抱いていたということは確かだったのかもしれません。
でもだからこそ神々も見過ごすようなことはなかったのでしょうか?
舞人と始めて出会った時から惟花さんは“五感と声帯を失っていた”のです。
「この世界でも惟花様だけですよ。お兄様との再会にもこんなにも喜んでくれる女性は。お怪我はもちろん何か困った事などもございませんでしたか惟花様?」
『う~ん。それはさ相変わらず舞人くんがお馬鹿なこととかでもいいの?』
「残念ながらそれはすでに殿堂入りでしょうねぇ。一種の不治の病でしょうから」
惟花さんと桜雪ちゃんが微笑ましいようないちゃつきをする中で、惟花さんの妹である美夢ちゃんはそんな惟花さんと桜雪ちゃんをじ~っと見詰めていました。
舞人はそんな美夢ちゃんの様子に思わず頬を緩めてしまいながらも――、
「でもさ惟花さん? 冗談抜きで惟花さんに会ったらずっと聞きたいことがあったんだけど、やっぱり惟花さんならぼくに何が起こっているかも気付いてる?」
舞人にとって惟花さんは女神のような存在でした。希望はあります。でも――、
『……もしかしてなんだか少し髪伸びたんでしょ舞人くん?』
『……それぼくも思ったんだけどさなんか惟花さん少しぽっちゃりなされた?』