第168話:『笑顔の重奏』と『彩雲の未来』
本当に舞人や惟花や桜雪や静空ちゃんだけだったのでしょうか? この聖夜の日に冬音ちゃんの事が大好きで助けてあげたいと願っていたサンタクロースたちは。
「はぁ。貴方はこんな時も道に迷っていたのですか。驚くような役立たずですね」
「貴女の居場所はもちろんわかっていましたが、これだけの干渉はやはり厄介で」
「厄介なのはこちらでしょう。なぜに貴方は私の居場所を把握しているのですか」
冬音ちゃんが桜雪たちを導いてくれた“異空間への幻想の街並み”。そこがあとわずかのところで崩れ去ってしまう時に、桜雪たちに手を貸してくれたのは――、
「“なんか大福でかくない?”じゃないのよ怜志。奏大たちの事はどうしたの?」
「なんていうか俺もやっぱり静空さんたちのことが心配で助けに来ちゃった」
「そんな言い訳はもう舞人だって許してもらえないのに、あなた本当に馬鹿ねぇ」
お化け青年と怜志くんでした。
「! 怜志くんとお父様のお友達の不思議な帽子のお兄さん! やっぱり怜志くんと不思議な帽子のお兄さんもギャグキャラだったんですか、ギャグキャラ!?」
冬音ちゃんはお化け青年と怜志くんの登場にも大喜びのようでしたが、溜息気分である桜雪と静空ちゃんはそれぞれそういうわけにはいかなかったようです。
でもこうして冬音ちゃんの笑顔を守ってくれる怜志くんやお化け青年が冬音ちゃんにとって優しいサンタクロースなら、怜志くんを送り出してくれた奏大くんたちも冬音ちゃんにとってはやっぱり優しいサンタクロースなのかもしれません。
「でも俺達はさみんなこんな冬音に魅了されたサンタクロースなんでしょ静空?」
「まぁもしかしたらそういうところも冬音の不思議な力の1つなのかもね?」
桜雪たちが誘われた幻想街。そこでは終わるべき世界へと最後を招いているような黒き霧が包んで、無限の黒き影たちが生み出されているようでしたが――、
「でも貴方も律儀な方ですね。最後まで怪しい道化のままこの世界にいたなんて」
「私にとっての舞人様や惟花様は貴女にとっての風歌様のような存在ですからね」
冬音ちゃんのお願いを叶えてあげたいお友達サンタクロースたちの活躍はもちろん、どこかでは“本物の絵本サンタクロースさんのお姉さんたち”も微笑んでくれているのか、黒き霧の世界でも止まることなく光を探し続けられましたが――、
「!!! 桜雪ちゃんと不思議な帽子のお兄さんと、静空ちゃんと怜志くんと、お日様ちゃんと大福ちゃん! やっとギャグキャラの本領領揮ですよ!」
「「「「「「?」」」」」」
「あのすごく恐そうな嵐にもとりあえず突っ込みましょう!」
優美なる滅びの世界を描いているような幻想街に相応しく”数千の魔法の破片を燃やしているような焔の大嵐”が行く手を遮りましたが、”おそらくこのままでは終わらないんだろう”と、誰もがこの先の驚くような展開を信じた中で――。