第167話:『光焔の円環』と『生命の相承』
「もう僕たちも騙されたりはしないよ。忘れたくなかった大切なことも思い出せているからさ。確かに僕たちは悲しくて辛い運命を変えることなんてできないのかもしれないけど、だからこそ本当は僕たちも誰かのために傷つけ合うんじゃなくて、僕たちは僕たちのために助け合ったり愛し合えたはずなんじゃないのかな」
もしも運命を言葉で定義付けたなら、それは複雑で単純な円環なのでしょう。
でもだから自らの運命を愛せて信じれる存在は運命の輪に導かれ、この世界に自分がいるからこそ笑顔にできる人や幸せにできる人と廻り合えていくのです。
「まさかだからあなたたちはあの白き青年を助けてあげようとでもいうの?」
「もしかしたらそれが僕たちがこの世界に生まれた意味なのかもしれないからさ」
まるで彼らは“灰色の世界で愛を謳うことは愚かなんかではなく、自分たちは灰色の世界だからこそ愛を謳うことが出来るんだ”とでも謳っているようでした。
灰色の羊たちを惑わせて彼らの運命を壊そうとしていた幻影の王女は笑います。
「本当にいつだって呆れてしまうほどに愚かな子たちね。貴方たちのような悲運の定めに囚われている人たちが人々の悪意や疑心暗鬼から逃げることなんて夢物語でしかないのに。白き青年に惑わされた一時の気の過ちで世界の流れに背いたりしたら一生後悔をすることになるのよ。貴方たちのような取るに足らないような運命なんて、そもそも誇りにようなものでもわざわざ守るものでもないのだから」
灰色の翼を背負った人々が彼らを包んだ黒き幻影から解き放たれていきました。
「それでもその灰色の翼が誰かを幸せに出来るのなら証明はできるんでしょ?」
彼らが導き出した答えが痛みなく終われないものなら、黒き幻影の王女は“数千万の闇”を支配するゆえの力尽くによって彼らの運命を奪おうとしたのです。
それでも灰色の天使たちから笑顔が消えるようなことはありません。
「ならまずはお望み通りに貴女の運命と私達の運命を重ね合わせてみましょうか」
微笑む天使たちの背後からはとても大人びた金髪の少女が現われ、そんな少女の右隣にはまるで彼女が送った手紙に応えてくれたように、彼女の姉が率いる――。