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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter5:Kiss to freedom , because Kiss to love.
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第165話:『数奇の純愛』と『黒海の月輪』

 桜雪と静空ちゃんとしては“冬音ちゃんを危ないところには連れて行かない”という想いで一致していたはずでも、もしも冬音ちゃん本人から“智夏のことを探しに行きたいです!”と手を握られながらお願いなんてされてしまったら、冬音ちゃんに返すことが出来る答えなんて最初から1つしかなかったのかもしれません。


「このまま大聖堂の大通りをずっと南側へと進んでいけばいいんでしょ冬音?」


「その通りです静空ちゃんと桜雪ちゃん! 智夏は絶対にこっちにいますよ!」


 やっぱり桜雪と静空ちゃんも冬音ちゃんの純粋さには負けてしまったのです。

 

 冬音ちゃんが智夏ちゃんを大切に想う気持ちはよく伝わってきましたし、冬音ちゃんは舞人と惟花さんとの約束通りに大人しくしていないといけないことはわかっている一方で、桜雪と静空ちゃんを信頼して智夏ちゃんを助けに行きたいとお願いしてくれているようなのに、そんな冬音ちゃんの2人を信じる気持ちと智夏ちゃんへの優しさを無いものにしたらそれはそれで大きな罪なのでしょうから。


 それに桜雪と静空ちゃんの決意を決める大きな一手となったのはやはり、“危ないことはしちゃダメなのよ?”と伝えるように首を振るお日様ちゃんに「お日様ちゃん! お願いですからお日様ちゃんもわたしに力を貸してください! お日様ちゃんの力もあれば絶対に智夏のことを助けられると想うんです!」と珍しく真剣なお願いをする冬音ちゃんにとても困ってしまっているお日様ちゃんの一方で、静空ちゃんから被せてもらった“赤と白の毛糸が混色した帽子”をとても気に入りながらなんとも楽しそうにクリスマスソングを歌って部屋中を飛び廻っていた大福ちゃんは「ねぇねぇ! 舞人のお友達の冬音ちゃん! 大福ならね舞人のお友達の冬音ちゃんにはいっぱい力を貸してあげるよ!」と舞人と冬音ちゃんの続柄をこんな時もお友達であると勘違いしている大福ちゃんがとても楽しそうに冬音ちゃんの周りを飛び回ると、お日様ちゃんのことも巻き込みながら無邪気に喜んでいる冬音ちゃんの様子をみせられたら、もしもこの場に舞人と惟花さんがいたとしても、あの2人ならこんな冬音ちゃんたちの様子をみてしまったら結局は冬音ちゃんのお願いに負けてしまい、冬音ちゃんのことも連れて行きながら智夏ちゃんのことを外の世界へと一緒に探しに行く場面がとても簡単に想像できてしまって、桜雪と静空ちゃんも微笑んでしまったからかもしれません。


「でも冬音ちゃん? サンタクロースのお姉さんは世界がとても大変な時にも大好きな智夏ちゃんのために一生懸命な冬音ちゃんの事をみてくれたら、お願いを叶えてくれるだけでなく、何か冬音ちゃんにはご褒美までくれるかもしれませんよ?」


 でもこうして冬音ちゃんを外の世界へと連れ出すことに決めたのならその責任を取らないといけないのは桜雪と静空ちゃんなのですが、今まで桜雪ちゃんが本来の力を使わずに“図書館から運んで来た魔法書”と静空ちゃんの“3メートル以内の空間を支配できる”魔法を組み合わせていたのも、桜雪ちゃんの本来の能力である“相手にとって未知なる力を使用できる”というものが黒き影の軍勢に完全に分析されてしまうのも防ぐためだったので、桜雪ちゃんの本当の力と静空ちゃんの力を組み合わせれば最低でも数分間は最高峰の守勢が完成したはずです。


 でもどれほど強力な護りを誇ることが出来たとしてもそれだけで突破できるほど黒き影に染まってしまった世界も甘くはないはずなので問題は攻勢面でしたが、母親譲りの用意周到さを持っている冬音ちゃんは自らの能力である“白き箱の錬金術”によってお日様ちゃんと大福ちゃんをそれぞれ、“白き翼と太刀を背負った天犬”と“大砲を背中に装備した威風堂々とした鳳凰”へと進化させることが出来たようなので、“こんなお日様ちゃんと大福のことをみたら怜志だったら絶対に感激をするわね”と静空ちゃんが笑顔になるように火力方面も完成はしました。


 こうなれば理論上は闇色の都へと飛び出しても相手方の都合だけではなくこちら側の都合も押し通せるはずでしたが、それでも唯一大聖堂を離れる不安は、大聖堂から離れれば離れてしまうほど歌い子たちとの距離も遠くなるために、おそらく大聖堂周辺で混戦している歌い子たちから響く歌声も必然的に減少する一方であるのに、大聖堂を離れるほどに黒き歌い子たちによる干渉も予想できたため、聖なる歌い子たちからの逐次的な魔力の供給をほとんど望めないことでした。


「!! それは本当ですか桜雪ちゃん!?」


「冬音ちゃんはとてもいい子さんですからね?」


「それじゃあ桜雪ちゃん! わたしはサンタクロースのお姉さんが何かご褒美をあげるよって言ってくれたら、サンタクロースのお姉さんのおパンティーを――」


「くれるはずがないでしょう? いくら好感度が高くても初対面なんですよ?」


「でも桜雪ちゃん! 実はそれはカモフラージュなんですよ!」


「サンタクロースのお姉さんのお家をみつけるための?」


 だから今の桜雪たちはある意味で“酸素ボンベなしで深海の数千メートルへと潜海していくような状況”だったのかもしれませんが、それでも3人の会話が普段と変わらない雰囲気でいるのは、どんな時もとても元気で楽しそうである冬音ちゃんはどうあれですが、桜雪と静空ちゃんにはちゃんとした理由がありました。


 そしてそれは――。

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