第161話:『済世の夢幻』と『片恋の寵愛』
ここはいったいどこなのでしょう。天国なのでしょうか。地獄なのでしょうか。
今までずっと舞人の人生を縛り続けていたのに全ての始まりが空白だったもの。
それはどうして舞人が”自分なんて誰にも愛される事のない人間なんだ”という悲しい思いに精神の大切な領域を支配されてしまっていたのかという疑問でした。
終わりなき夢の中で舞人は瑞葉くんや奈季くんはもちろん、友秋くんや罪なき人々や空統くんや惟花さんに嫌われた過去をみていました。まるで誰もが舞人がこの世界に生まれたことを否定して、生きている事実なんて望んでいなかったように。
そしてそんな中で少年は再び舞人に問いかけます。
それでも本当に舞人はこんな世界で生きようとするのかと。
慈しむような少年の声といつかの少女の慰めるような声もなぜか重なりました。
もういいでしょ舞人。わたしと一緒にこんな世界から逃げてしまいましょうと。
もしかしたら舞人も疲れていたのかもしれません。
誰かに嫌われないようにばかり生きて、偽りで彩った生命で紡いできた人生に。
舞人が少年と少女の姿が融合した者の誘いを拒まずに、身を委ねた瞬間に――、