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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter4:Kiss to story , because Kiss to dream.
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第147話:『偶発の幻想』と『安堵の信実』

 人は悲しめ合うために生まれてきたのではないでしょう。人は笑い合うために生まれてきたはずなのです。もしも悲しい運命を認めてしまったら人が何のために生きているのかわからなくなりそうで。でもそんな事実は愛鈴がとても悲しくて。


『……たぶんだけどね愛鈴くん。わたしも大好きだよ。愛鈴くんのことは……』


 でもこんなにも悲劇に染まってしまった世界にも愛鈴たち以外の生存者はいたのです。色なき者たちとは違う彼らとはこんな世界でも助け合える存在でしょう。


 今も愛鈴たちは崩壊した市街区で数百人の生存者たちと邂逅していました。


 瑞葉くんが生存者たちを転移させるための魔法陣を生み出してくれている中で、愛鈴は“瑞葉くんたちの守護”を行ってあげていたのですが、そんな愛鈴に美歌を奏でてくれていたのは、“なぜかその姿を愛鈴にしか認識されず、その姿を唯一認められる愛鈴に至ってもその美しさが信じられないために良くも悪くも幻想的な美少女”だったのですが、今の愛鈴にとってはそんな美少女から向けられた言葉にまったく聞き覚えがなく“えっ。どういうこと?”という瞳を向けてしまうと――、


『……もしかしてさっきの言葉は冗談だったの愛鈴くん……?』


 ユフィリアは悲しげな表情でした。悲しき表情を紡いでいるユフィリア本人よりもよほど愛鈴のほうが心悲しくなってしまうほどに。だから愛鈴も戸惑うと――、


「ねぇ。本当に愛鈴くんはなんともないの? やっぱり少し変だよ? だって突然脈絡もなくあんな風にいわれてもさ結局はそんな風に納得をしちゃうんだもん」


 ユフィリアは不満げでした。“異界の瞳を宿らせながら黒き太刀を振るってきた色なき者”を消し去った愛鈴の白き弓を放つ手が狂ってしまっていたほどには。


「……なんか怒ってるの?」


「別に」


 どう考えてもユフィリアは機嫌を損ねていました。愛鈴の罰が悪くなるほどに。


 愛鈴たちが対処できる色なき者には明らかに限りがある一方で、色なき者たちには増援が訪れる一方なので、時が立てば立つほど愛鈴たちが窮地に陥るのは一種の自然の摂理なのかもしれませんが、このままでは決定的な一打もみえないため、愛鈴が単独で彼らの中心戦力へと急襲を仕掛ける必要性さえも考慮し始めると――、


 ……もう帰って来ないかと思ったけど、まだ無事に生きてたのかよあいつ……。


 今は瑞葉くんたちを守れさえすればとりあえずはそれでいい。そんな1つの覚悟を決めていた愛鈴の表情が綻びました。待ち望んでいた“彼”の帰りを喜んで。

 

 でもそんな瑞葉くんたちを守護していた“透明の幾何学模様の壁”が酷く揺らぎました。愛鈴たちの反撃から逃れていた“離れ”から一斉砲撃でも届いたように。


 成すすべもなく立ち竦んだ舞人の脳裏には最悪の展開までよぎる中で――、


「今まで何をしてたんだよお前は。愛鈴の方からの攻撃が圧倒的に酷いんだが」


 まるで1つの芸術作品のようでした。“双子の長銃”を両手に携えた青年が宙を舞いそれらを乱射している様は。放たれる弾丸は敵対者たちへと集撃していきます。


「それは逆だろ奈季。ぼくが一番目立っているから敵からの攻撃も多いんだから」


 仮にも指導者的な立場にいるはずの瑞葉くんがこのような危機的状態時には誰よりもパニック状態に陥ってしまい、もうどんな想いを届けようとしてくれているのかすらも上手く聞き取れないほどに大騒ぎをするのは今更なので誰も気にかけませんが、もちろん瑞葉くんは誰かを非難しているわけでなく愛鈴が無事なのかを心配してくれているようなので、その点は愛鈴も嬉しさを覚えながらも――、


「救世主か厄介者かわからないな。こんな時にあちらさんたちと帰ってきても」 


 愛鈴は驚きました。まだ自分しか気付いていなかった“友秋くんの帰り”にも怜志くんは気付いていましたから。やはり怜志くんは愛鈴の弟なのかもしれません。


「今は祈るばかりだね。厄介者のほうに間違えられて奈季に誤射されないことを」

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