第141話:『霖雨の漆黒』と『焦眉の四季』
不吉な色の曇り空が天空を支配し、凍えるような寒さが空間の支配者でした。
12月22日。
それはある意味で“人の運命”を決するにはもっとも罪深き日付なのでしょう。
宇都宮市へと天災のように“死を呼ぶ漆黒の軍勢”が流れ込んで来ました。
それはうそのような恐怖感とともに舞人たちの世界を壊していってしまいます。
即座に大聖堂の屋上へと転移した舞人の息が凍る中で、地上に広がった信徒たちにも、“……本当に来ちゃったんだ……”という暗鬱が重々しく染みていました。
大聖堂を守るように北方に舞人で東方に祈梨ちゃんで、西方にレミナちゃんで南方に大湊氏でしたが、それぞれが統制する予定の人々はあくまでも“自分たちの信徒たちを中心とした集団”であり、全てが自分たちの信徒ではありません。
それぞれが昨日までの戦いで失ってしまった部分を補うように、舞人でいえば“祈梨ちゃんやレミナちゃんや大湊氏たち”から信徒を譲り受けていたからです。
それでも今回の負なる者の総数は“数百万”という単位に跳ね上がっているせいで、前回を遥かに超える絶望感ですが、今は舞人たちにも瑞葉くんの魔法でした。
今回その魔法陣を発動するために中心的な役割を果たしてくれるのは――、
“でもそれはわたししかやれる人がいないんでしょ、舞人とお母さん?”
と嬉しいことに自発的に申してくれた智夏ちゃんです。
舞人たちの使命はそんな智夏ちゃんのためにも一時的な”黒の堤防”を作ることなので、それぞれの信徒たちが協力して宇都宮市を城砦化していましたが――、
『でもここで“まさか”の展開は起きてくれそうですか、お兄様と惟花様?』
『……まぁ確かに予想してた以上には効果はありそうだけど――』
舞人たちの目の前に白昼夢のように広がってくれている“大聖堂の1キロメートル四方”では、《世界を氷点下で染める数千の“氷の薔薇》や、《触れた負なる者を傀儡として従える“闇色の糸”》や、《内部に閉じ込めたものを弱体化させられながら圧縮する“真紅の立体魔法陣”》や《槍や砲弾に変形する“純白の建物”》や、《地獄を具現化させる“黒い霧”》があり、想像以上に負なる者とも拮抗でき――、
……もしかしたらこのまま……。
と多くの信徒たちに不明瞭な希望を抱かせてしまったのかもしれませんが――、
『いま起こる“まさか”は、やっぱりこっちの“まさか”になっちゃうよね?』
“天地の全てを漆黒で染めるような勢い”で侵攻する負なる者たちは自分たちの損害なんて気にも止めずに絶望的なまでの破壊力で攻めてくるので、“舞人たちの方はどこか一部に不具合が生まれると、そこを修復するために今まで万全だった箇所にも綻びが生まれ、結局はその綻びがさらに”……と雪崩式に逆境が生じ、舞人たちにみえた希望の光りも負なる者の前では、“1匹の蛍の光”の儚さでした。