第139話:『盈虚の過去』と『月輪の友好』
どことなく哀愁を感じさせるというか時が止まっているような部屋でした。
とても物持ちのよい面がある舞人は家具などを買い換えることも滅多にないために、長期間使われるそれらは独特な味わい深さを持っていて、部屋に訪れた人々を安らかに歓迎し、古くからの自然に包み込まれているような優しさを抱かせます。
舞人や惟花さんが先ほどまでいた部屋の近くの“魔法書を攻究するための場所”に奏大くんやレイシアはいたのですが、相変わらず謙虚な心でレイシアは舞人や惟花さんに接してくれたあとに、彼は2人に対して教えてくれました。“異端者たちはもちろん瑞葉くんの信徒たちの一部にも教会や寺院と手を繋ぐことに反発していて、彼らと共に戦うことを拒否している人たちがいる人がいったいどれほどいるのか?”という舞人たちが昨日から調べてみる事をお願いしていたことの結果を。
でもそれはある意味で予想通りのものでした。
多くの人が現実に困惑している一方で“友好的にすべき”と考えていたのですが、一部の人々はそのような“歩み寄り”に反発してしまっているというものです。
「……まぁでもだから正直にいってそう簡単ではないだろうね。いくら状況が状況だっていっても、それぞれの事情や前々からの想いはあるんだろうしさ。……でもどんな事情や想いがあったとしてもさ、この世界に敵がいて嬉しい人なんていないんだから、相手を疑う“かもしれない”よりも、相手を信じる“もしかしたら”で世界が包まれてくれる事を、今のぼくたちは信じるしかないのかもね……」
惟花さんは舞人にの心にささやいてくれました。
このような自身の思いを。
だから舞人は奏大くんとレイシアに対して語ってあげました。
そのような彼女の思いを。
どこまでいっても舞人たちは信じるしかないのでしょう。
それぞれが信じたい“もしかしたら”を。