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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter3:Kiss to you , because Kiss to me.
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第137話:『流星の魔王』と『想到の夜空』

 どうやら魔王とは“世界を征服する存在”のようでした。

 

 だからアイスを食べてにこにこしているのなんてまさしく論外なのでしょう。

 

 でもロザリアにだって言い分はありました。


“勝手に魔王様として生んでおいてなんでいちいち魔王としての当然に従わなくちゃいけないの。アイスを食べてにこにこして生きようが別に私の勝手でしょ?”


 でもロザリアが生まれて初めての正論をいったところで、みんなロザリアのほうがおかしいと思っているからか、誰かに同情をしてもらえるわけではなく――、


「ははーん! もうわかった! いい加減に私だって超怒ったわ! 今さらあなたたちがやっぱりごめんねって謝っても、もうアイスは分けてあげないからね!」


 とカルシウム過剰摂取だろうロザリアが生まれて始めてぶちきれたのですが、どう考えても負け馬であるロザリアからあっさりとシェルファちゃんは逃げて大勢派に付こうとしたので、ロザリアはそんなシェルファちゃんの首根っこを掴み“魔王たち”のもとを去ったのですが――ここぞとばかりにみんなから意地悪され、いつの間にか“知らない世界”に飛ばされていたというのが悲しい真実でした。


 これにはロザリアも号泣です。


 でも知っての通りにロザリアは能天気ですし、自分の唯一のお友達のシェルファちゃんもとりあえずは一緒だったので、異世界に飛ばされた数時間後には――、


「!!! この世界は超美味しいアイスが一杯あるから、超最高の世界だわ!」


 と切り替えていて、自分が魔王様という事実さえもすっかり忘れてただアイスを食べ歩いていたのですが、ある時にロザリアは舞人たちや奈季くんと出会って心を刺激され、ロザリアも“自分なりの魔王様”をみつけたということでした。


 でもすごく恐いイメージがある故郷のみんなに――、


“余はお友達たちと超仲良くしたいわ!”


 なんていったら本当に絶縁されそうですが、すごく困っているらしい舞人たちにへっぽこロザリアが出来る事といったら、今の自分の思いをみんなに伝え――、


“余のお友達たちが超大変だから助けて頂戴よ、みんな!”


 と他力本願することぐらいなのです。


 ちゃんと確認してもらっているのかさえも不明ですが一応はロザリアも近況報告として定期的に“絵日記”を自分の世界に送っていたので、今回はそれに乗せて“思い”を伝えようとしましたが、仕上げに必要な色鉛筆がみつかりません。


「超大変だわシェルファちゃん! あの色鉛筆がなかったら最後のサインが――」


 ロザリアが編んであげた赤色のセーターをもふもふの羽毛の上に被せるペンギンシェルファちゃんは、「これ?」という感じで緑色の鉛筆をみせてくれました。


「ありがとうよシェルファちゃん。でも悪戯ばかりしちゃダメよお馬鹿ちゃん」


 と意外にもあっさりと真実にたどり着いたロザリアはペンギンシェルファちゃんの頭をぺちんっと叩きながらも、最後に自分のフルネームである“ロザリア・ネイリル・クリスティア”という横書きを魔法紙の右下にゆっくりとサインをして、その魔法紙を紙飛行機の形に折り――星々が煌く夜空へと投げ飛ばしました。


 ロザリアとしても自分の想いがみんなとの決定的な亀裂を作ってしまうのではという不安はありましたが、“魔王様としての自分の想い”をはっきりと伝えたことで、ほんの少しだけみんなの仲間入り出来た気がしていたのも確かな事実でした。


「シェルファちゃん! もしお姉ちゃんたちが来てくれて今までの絵日記分のお金もくれたら、シェルファちゃんの欲しい物をクリスマスには買ってあげるわよ!」


《えぇ!? なんでもいいの!?》


「シェルファちゃんは超可愛いからもちろんなんでもオッケイ!」


《じゃあ馬鹿ロザリアと離れられて、みんなと一緒に帰れるチケットが欲しい!》


「はいっ! シェルファちゃんは今年のクリスマスプレゼント無し!」


 ロザリアとシェルファちゃんはいつも通りの漫才のようなやり取りをしていましたが、そんな2人の穏やかな空気を壊してしまうようにして――ロザリアとシェルファちゃんが座る木箱が置かれた路地に、たった1つの足音が反響してきました。


 ロザリアがそちらへと瞳を向けると――、


「……??? ……あれは余……?」


 金髪の少女が笑いました。


 なぜかいまここにいるロザリアよりも数歳ほど大人びたロザリアが。


 そして“優しい魔王様”は“悪い魔王様”によって殺されてしまいました。

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