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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter3:Kiss to you , because Kiss to me.
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第130話:『揺籃の両親』と『鼎座の双子』

 まるで絵画の世界のようにお洒落な智夏ちゃんの部屋をなんとも楽しげに定時の巡回するお日様ちゃんの尻尾に、冬音はなんとも熱心な視線を注いでいました。


 ……あんなに楽しそうに私と智夏を守ってくれるお日様ちゃんはとてもすごいです!


 大好きな舞人と惟花にお日様ちゃんの観察日記をみせてあげようとしている冬音は、智夏ちゃんの寝台に座りながらお日様ちゃんの様子を色鉛筆で記す中で――、


「??? もしかして智夏は疲れて寝ちゃっているのですか?」


 瑞葉くんや奈季くんから謝罪の手紙をもらっても冬音は《別に気にしないでください瑞葉お兄ちゃんと奈季くん。わたしはぜんぜん怒っていませんから。でも瑞葉お兄ちゃんと奈季くんは今日の晩御飯何を食べましたか?》とメールでも送るようにとても気安く、いつ訪ねてくれるかわからない月葉ちゃんに手紙の伝達役を頼もうとしていたのですが、“あいつら本当に反省してるの?”と対する智夏ちゃんは見事な疑惑の目つきで、2人からの謝罪の手紙を見下ろしていたのですが、そんな智夏ちゃんが先ほどから固まっていたので冬音は顔を覗いてみました。


「……別に寝てなんてないわよ。少し考え事をしていたの」


「? 何を考えていたんですか?」


「冬音には教えてあげない」


 智夏ちゃんは相変わらずの素っ気のなさでした。


 さすがの冬音ちゃんもがーんという気持ちになってしまいます。


 でもそんな中で冬音と智夏ちゃんのやり取りを立ち止まって眺めていたお日様ちゃんがわんっと可愛らしく鳴くので、冬音も真似してわんっと鳴いてみました。


 すると智夏ちゃんはなんだか馬鹿らしくなったのか”想い”を教えてくれます。


「……はぁ。なんかあなたにはいいたくなかったのよ。だってあなたは舞人とお母さんの事が大好きでしょ? ……もちろんわたしも2人の事は嫌いではないつもりだけど、あなたも色々と思ったりはしないの? ……もちろん全部が全部舞人とお母さんのせいではないはずだけど、今回の件だってわたしたちはお互いに大変な思いはしているでしょ? そういうのはさすがの冬音だってすごく嫌じゃない?」


「……じゃあ智夏はお父様とお母様のことが嫌いなのですか……?」


「……それはわからないけど、そもそもあなたは本当によかったと思うの? もともとわたしたちは人間じゃなくて人形なんだからある意味ではこの世界に生まれてくる必要はなかったはずだし、もしわたしたちが別の世界に生まれていたりしたらもっと別の道が開けていた可能性もあるのよ? わたしたちの場合はさ?」


 なんだかんだいっても冬音だからこそ本音を吐露してくれる智夏ちゃんにも色々と葛藤はあるようなので、決して舞人や惟花さんへの非難がみられるわけではなく、どちらかといえば申し訳なさを抱いているような感じだったでしょうか?


「それはそうですね。たぶん智夏のいうとおりです。そもそもわたしと智夏はお人形ですもん。お父様とお母様の都合がいいから作られたのは間違いありません」


「……あなた本気でいってるの?」


「本気ですよ。わたしはずっと前から気付いていましたもん。わたしと智夏が辛い思いをしているのも全てお父様とお母様のせいでしょう。もしもわたしと智夏が別のところに生まれていたら――もっと違う未来だってあったはずですから」


「……そんな考えは間違ってるでしょ?」


「何が間違ってるんですか?」


「全部間違ってるわよ!!」


 舞人と惟花の事が誰よりも大好きだった冬音による意外な言動に最初は驚いてしまっていた智夏ちゃんも、あまりにもな言葉を続ける冬音にはさすがに思うところがあったのか、あの智夏ちゃんでさえも始めてみせるような勢いで怒ってしまうと感情のままにそっぽを向いてしまい、“もう冬音となんて一生口を聞いてあげないからね!”という雰囲気を背中で語ってきたので、冬音は満面に微笑みました。


「智夏智夏。智夏もお父様とお母様に意地悪をいわれると怒るんですね? でも怒るっていう事は智夏もお父様とお母様が大好きだからですよ? そんな風に思わせてくれるのもお父様やお母様がわたしたちの事が大好きだからなんですし、ただわたしたちはお父様とお母様と一緒にいれれば何も心配なんていりませんよ、智夏!」


 冬音からは気安く黒髪に手を置かれて、お日様ちゃんからは自慢のもふもふの尻尾で右ふくらはぎを叩かれる中で、先ほどのまでの冬音の思いにさすがに気付いた智夏ちゃんは“冬音に一本取られてしまった恥ずかしさ”と“舞人と惟花への思いを知られた恥ずかしさ”のせいで顔を真っ赤にしたまま沈黙してしまいました。


 冬音はそんな智夏ちゃんを可愛がるようにいい子いい子してあげる中で――、


「??? もしかして智夏は頭が痛いのですか?」


「冬音が馬鹿だからね」


「……。……。……」


「なんともないわよ冬音。別に心配しなくても大丈夫よ」


「本当のことをいってください智夏。わたしは智夏の味方です」


 冬音も智夏ちゃんの事はなんでも知っていました。


 だから簡単に引き下がりません。


 すると智夏ちゃんは――、


「……冬音なら誰にもいわない……?」


 いつもは愛想なき瞳をとても色っぽいものにして艶かしくみつめてくれます。


 智夏ちゃんの瞳に心を覗かれた冬音が意識を緩慢とさせてしまう中で――、


「冗談よ冬音。あなたも簡単に騙されるのね。でもこれはさっきのお返しよ?」


 いつの間にか智夏ちゃんの瞳がとても弾んだものに変化してしまっていました。


「本当の本当に智夏はなんともないのですか?」


「……本当の本当に智夏はなんともないですけど?」


「じゃあ智夏は嘘をついたらクリスマスプレゼントにパンティーをくれますか?」


「生々しいわねぇ」


「脱ぎ立てですか!?」


「あなたの発想がよ!!」

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