第11話:『地雷原』と『白き十字架』
警戒心ばかり先行したせいで舞人は未知の気配に白き刀を振るおうとします。
でもその瞬間に――、
「……そちらに踏み入れるのは危険だと思いますよ。地雷原がありますから……」
黒き気配に染まってない白き少女と瞳があったので舞人の刀も止まりました。
どこか大人しげな少女が羽織るのは黒色のローブではなく白色のローブです。
もしかしたら教会の関係者なのかもしれません。
おそらくこの少女は黒き結界と同化することで生きながらえていたのでしょう。
弱々しい感じで倒れ掛かってくるので舞人は少女の事を抱きかかえてあげます。
でもこの場にいるのはこの少女だけでした。
歌い子までは近くにいないようです。
黒き濁流は轟音を立ててすぐ背後まで迫ってきています。
舞人は分かれ道へと入りました。
桜雪ちゃんのことは右手に抱えたまま、新たに少女のことを左手に抱えて。
「大切な事を教えてくれてありがとう。君がいなかったらぼくたちも危なかったよ。聖国教会側から来てくれていたっていう惟花さんや美夢の守り人さんかな?」
地雷原があると教えてくれたのにわざわざ廊下を踏むようなまねはしません。
白き血を糸状にしたものを廊下のシャンデリアに巻きつけて移動しました。
舞人は両手が空いていないので負なる者の事は桜雪ちゃんが相手してくれます。
白き弓矢でした。
白き矢に射られた所から大地がひび割れるように肉体が張り裂けていたのです。
「まぁでも変に謝らないでよ。今は君が生きてくれていた事だけで十分だからさ」
舞人たちも無事に3階の廊下部分へと到着できました。
やはりここも心臓のように鼓動する黒き結晶によって支配されています。
「……でもやっぱりここら辺ももう誰も残っていない感じなのかな?」
負なる者は上階に向かえば向かうほど姿があるのに教会側の龍人や歌い子とは誰一人とも出会えません。無残に床に落ち崩れた死体が瞳に入り込むばかりです。
そしてそんな時になぜか舞人は胸がざわめくような感覚を覚えてしまいました。
「……。……。……。……うそでしょ……。……。……。……」
“白雪の結晶と十字架のネックレス”です。
“白雪の結晶と十字架のネックレス”が派手に飛散した死体の中に落ちています。
赤黒い血肉で汚れたあれは舞人が首元にかけているものと同じ装飾品でした。
右横にあるドアがけたたましく開きます。
「「「……!!!」」」
化け物としか呼べない“何か”が扉の入り口を壊しながら肉薄してきました。