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“Kiss to Freedom”  ~世界で最後の聖夜に、自由への口付けを~  作者: 夏空海美
Chapter 1:Kiss to memory, because Kiss to lost.
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第8話:『3分』と『激昂の鬼』

 確かに惟花さんは風歌ちゃんを自分の妹のように可愛がっていたはずでした。

 

 それなのにこの風歌ちゃんの反応はいったいどんな事実を意味するのでしょう。

 

 疑問ばかりが増える中で風歌ちゃんの右後ろの少女の携帯が鳴り響きました。


 “電話に出てもいい風歌?”という視線が風歌ちゃんへと向けられます。


 優しげに風歌ちゃんは頷きました。


 そして風歌ちゃん自身は左耳のイヤリングから電話の内容を同時に受け取る中でまず1つ目に伝えられていたこと。それは純白の結界のことでした。例の純白の結界も耐えてあと3分のようです。龍人や歌い子の全快は非現実的でしょう。


 そして2つ目に伝えられていたこと。それは瑞葉くんに関する事でした。瑞葉くんの調査を願われていた7人全員が消えたようです。旧東京都内に入ってから。


 そして最後には今の風歌ちゃんでさえも瞳を瞑るような報告が行われました。


 舞人も風歌ちゃんのそんな表情までは見逃しませんが発言までは聞き逃します。

 

 歩みを進めようとする風歌ちゃんのことを舞人は優しく右手で止めました。


「ねぇ風歌。この中にはさすがに負なる者あちらさんたちもいないんでしょ?」


「……えぇ。礼拝堂の内部まではなんともないはずですが――」


「じゃあ状況は予想以上に深刻かな。冬音と智夏は外に音を漏らさないように! 桜雪と風歌はみんなに歌って! 静空しずくたちはその場に伏せておいてね!」


 指示を出しながらもすでに舞人は風になっていました。


 3本ほど右斜め奥の柱の影から黒き刃が5つほど投げ飛ばされてきます。


 舞人は一筋の残像になりました。左斜め前へと回避行動を行うことによって。


 1拍後には爆発音と破壊音が舞人の背中を叩き付けます。

 

 投擲されたのはただの刃ではなく爆発作用があるものだったのかもしれません。


 やってしまったという自責の念。そしてそれ以上の苛立ちが心に芽生えました。


 黒の侵入者はそんな舞人に触発されたようにして新たなる刃を投擲してきます。

 

 舞人は全ての刃を右肩で受け止めました。


 ブロック塀で殴られたような衝撃が5回ほど連続で襲ってきます。


 右肩が脱臼しました。


 脱臼した右腕は爆散します。


 舞人の左手に握られていた白き刀は“黒き影の首”を斬り飛ばしていました。


「あんなんでも瑞葉は幸運の置物か何かだったのかよ。こんな不運続きではさ」


 風歌ちゃんにとってもさすがに予想外でしょう。結界の内部が彼らによって穢されているのは百歩譲って想定内でも、結界の外部にまで溢れ始めて来ているのは。


「……舞人くん。念のために惟花さんたちのもとに急いであげてもらえますか? 本来は瑞葉くんのお仕事を舞人くんばかりにお願いして申し訳ないのですが……」


 舞人が愛する少女と彼女の妹である美夢ちゃんの名前も覚え易かったでしょう。


だ1つの花は美しい夢』を紡ぎだすということで。


「気にしないでよ風歌。ぼくは風歌のためなら悪魔にも天使にもなれるからさ」


 舞人は風歌ちゃんの黒髪を撫でると大聖堂の中央部を目指していきました。


 歌い子としては桜雪ちゃんが付いて来てくれます。


「……ということなのでみなさん。大聖堂の全域にまですでに彼らが生じてしまっているのかもしれませんので、愛歌ちゃんは北で月華ちゃんは北西で、詩穂ちゃんは北東で沙織ちゃんは南西で、そして冬音ちゃんはここで――彼らを封じ込めてもらえますか? 万が一にも街中にまで許してしまえば私たちも終わりかもしれません。動揺が広がれば敗北は決定的ですから。――お願いできますよね?」


 風歌ちゃんは自らの姉妹たちと信愛する龍人たちへと瞳を送りました。

 

 瞳を受けた少女たちは“十字架があしらわれた武具”を胸へと捧げ上げます。


「……また智夏ちゃんと静空さんは――」


 そして風歌ちゃんが残った2人に大聖堂の防衛以外の何かを願う中で――、


「さすがに君たちも土足が過ぎるだろ。いくらこの大聖堂がおんぼろでもさ」


 舞人の瞳も確かな決意に満ちていました。

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