教会
ある日二人はいつものように散歩でた。河側を歩き橋を渡る。船から人が手を振っている姿が見えた。青年はアリスの手を取って手を振り替えした。いくつかの橋を越えたところでかすかに歌声が聞こえる。アリスはそれを聞きミィッシェルに頼んだ。
「あの歌が聞きたい。」
アリスにはわからなかったが青年は嫌な顔をした。
「お願いあそこに連れていって。」
「どうしてもそこに行きたいのかい?」
「うん」
青年は渋々手を引いて歩きはじめた。目の前に高くそびえるような建物が建っていた。たくさんの彫刻と大きく飾られた窓は教会であった。何人ものがそこに足を向けている。ちょうどミサの時間らしく信者の子供達による讃美歌が歌われていた。青年はそこに入る事をためらったがアリスの姿を見て中に入って行った。中では湿った空気のなかステンドグラスからこぼれる光とロウソクの光が神聖さを盛り上げる。沈黙のなか歌声が建物に響きわたっていた。アリスは歌に聞きいっていたが青年は妙に懐かしい雰囲気と逃げ出したい気持ちの中で揺れていた。しばらくはジッとしていたミィッシェルだが急に何かを思いだしたように気分が悪いと言い出した。
「今日は帰ろうアリス。」
「もう帰るの?」
「今日は疲れ気味なんだ。」
「わかった。また連れて来てね。」
言葉が終わるか終らない間に二人は外へ出た。急いで部屋に帰るとアリスが少し遠慮しながら尋ねた。
「具合は大丈夫?」
「何だかミィッシェルは教会が嫌いみたいだね。」「そんな事は無いさ」
「今日は調子が悪かっただけだよ。」
アリスはほっとしたような顔して言った。
「ミィッシェルお願いがあるの。」
「何だい」
「私ね。教会で歌いたい。」
「あんな聖歌団に入ってみたいの。」
「だからお願い。しばらくあの教会に連れていって欲しいの。」青年はおどろいた。控え目な少女がこんな風に頼むのは初めてであった。それだけでは無い。また教会に行かなくてはならなくなった事にだった。