続き
沢山の人々が目の前を通り過ぎる。視線を感じながらも遠くを見つめる。市場の活気、順序良く並べられた果物や野菜が原色を放って輝いている。店と客とのやりとりが聞こえないためかケンカのようでおかしくもある。そんな中に静かな安らぎを感じていた。今までの生活にはなかったものを見つけたような気がした。ポケットから小銭を取り出すとテーブルに投げまた青年は歩き出した。
細い路地を曲がりくねりながら少し高台に上がると少し空気が変わった。吊された洗濯物、化粧途中の女性、いかつい男たち。どうやら低級層の住む場所だった。丁度突き当たりになると
「空き部屋」
の張り紙を見つけた。入り口で掃除をしている移民のような老婆に声をかけた。
「叔母さん管理人かですか?良かったら部屋を見せてもらえませんか?」
老婆は舐めるように睨みつけ手をこまねいて見せた。
「屋根裏だから日はあたらないよ」
怒るような声には何故か愛着を感じる。窓を開けて見ると下の通りが見えた。
「叔母さん気に入りました。借ります。」
「物好きだねぇ〜あんた」
「いくらですか?」
必要最小限の言葉で契約をするとベットに寝そべって深い眠りに着いた。「お前は何故戒律を破ってここをさる?」
「私はこんな偽善の生活は嫌だ。」
「何故が不満なのだ?ここには苦しみもない。花は咲き乱れ青い空が続きここに住む者はみんな幸せそうではないか?」
「わからない。引き止めないで下さい」
青年は目が覚めた。額に流れるような汗がヒンヤリ体を冷やしている。今起こったような夢は青年を不機嫌にした。