復讐
ミィッシェルはアリスをソッと床に寝かすと背中の羽を大きく拡げ羽ばたき始めた。すると体は中に浮かび中年女の所までいっきに鳶上がった。
「何故だ。何故ささいな幸せを奪う。」
積め寄りながら怒りをぶつけた。中年女は言葉もでずに息を飲んだ。青年が手を高く上げ振り下ろすと風が舞いカマイタチのように中年女の体を裂いた。血が吹き出てくる。その血が青年にかかり真っ白な羽を鈍く赤く汚した。怒りで目は充血し震える腕は首を狙って迫ってくる。
そのまま掴んだ手は簡単に体を持ち上げた。
明日が地に付かず足をバタバタさせ中年女は息が止まった。そのまま投げ棄てるように手を離すとアリスの元へと急いだ。小さい体を持ち上げると顔を埋めるように大声で泣きだした。まだ暖かい体は今にも動き出しそうで何度もそう願った。体をそのまま持ち上げ彼は歩き始めた。大聖堂に青年の足音が響く。出口に近付くと鏡に写る自分の姿が見えた。くたびれてドス黒くなった羽、血走った目、怒りと悲しみで引きつった顔。その全てが彼を悪魔に見せた。青年はその姿を見て現実に戻った。そして呪った。自分が居なけれ少女を殺される事はなかったろう。この子は自分が殺したと同じだ。表に出るとそのまま飛び去った。部屋まで少女を運ぶと汚れた体を綺麗に拭きとってあげるとベットへ寝かせて有りったけのロウソクに火をつけその場にひざまつきながら祈り始めた。そして空に向かって話始めたのだった。