4、変装大作戦は大成功
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
昨日は全然、眠れなかった。
顔色も悪い。
でも、ご飯は一緒に食べなきゃ。
今まで通りにしていれば私は彼の妻で、いられるはず。
「おはようございます」
ちゃんと笑って言えた。
大丈夫。
やっていける。
「おはよう」
彼も、いつも通りに返してくれた。
すると使用人さんが彼に、おじいさんのお葬式の話をしていた。
「私もお葬式に参列しなきゃいけませんよね?」
「いやっ。君は行かなくて大丈夫だ」
「えっ」
おじいさんは見たことないし、知らないけど妻として参列してもいいのでは?
やっぱり私はいらないのね?
「俺も参列はしない」
「えっ、どうして?」
「太ったおじさんが出るからだよ」
「なんで? あなたは、おじいさんには会いたくないの?」
「俺は行けないんだよ」
「行けない? そんなの知らないわよ。お世話になったんでしょう?」
イライラする。
お世話になった人に最後に挨拶もしないなんて、信じられない。
「落ち着け。分かったから」
「私は、落ち着いています!」
私は朝食を食べる。
何も言わない。
だって彼に、また色々と言いそうだったから。
「後で俺の部屋へ来い」
彼は、そう言うと部屋へ戻っていった。
今日はおじいさんが亡くなったから、仕事は休みだと使用人さんが教えてくれた。
私は彼の部屋へ向かった。
彼の部屋のドアをノックすると彼が出てきて、私をソファへ座らせた。
彼は私の向かいに座った。
「まずは、昨日はすまなかった」
「謝るようなことをしたのですか?」
「えっ、だって君は泣いていたし、怒っていただろう?」
「目にゴミが入ってイライラしていただけですよ」
「でも、、、」
「昨日のことは無かったことにしましょう」
「分かった」
空気が重くなった。
「それで、お話はなんですか?」
「祖父の葬儀のことなんだが、俺が行けば混乱が起きるんだ」
「どうしてですか? あなたがおじいさんのお孫さんだと知っている人って、どのくらいいるのですか?」
「どうだろう? ほとんどの人が知らないのかもしれない」
「それなら顔を出しても混乱は起きないです」
「それだけじゃないんだ」
彼は呆れ顔で言った。
何も知らない私が何もできないと思っている。
「他に何かあるのですか?」
「うん。俺が会社を引き継ぐんだ。それを良く思わない親戚の奴らが何をしてくるか分からない。だから太ったおじさんにもボディーガードがつくんだ」
「それなら変装しましょうよ」
「変装?」
そして私達は変装をするために準備をした。
私は自分で持っていたから、実家から持ってきた。
彼は急いで、お店から買ってきた。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です。誰も気付かないですよ。友達にもお願いをしたので成功しますよ。ボディーガードさんも若い方に同じ変装をしてもらいますからね」
「あっ、うん」
私、彼と普通に話せてる。
良かった。
私と彼の関係は、このくらいの距離でいいのよ。
次の日、私は変装をして部屋を出た。
なんだか懐かしい服装。
朝食を食べにリビングへ向かう。
彼は先に来ていた。
彼の服装に違和感はない。
いつも通りに見える。
「おはようございます」
「おっ、おはよう」
彼は私をチラッと見てから、新聞へ視線を戻す。
反応は無し?
可愛いとか似合ってるとか言ってくれないの?
私はムッとしながら朝食を食べる。
なによ、彼はいつも通りカッコいいわよ。
それなのに私は、いつも通り可愛くないんでしょう?
「少し時間があるから、食べたら俺の部屋へ来い」
「は~い」
私は手をヒラヒラとさせて部屋へ戻る彼に手を振った。
そして朝食を食べた後、彼の部屋へ向かった。
彼の部屋へ入りソファに座った。
「本当に、これで大丈夫なのか?」
「大丈夫です。お葬式の会場近くに友達を待たせているので合流しましょう」
「しかし君を見ると、君は本当に若いんだな」
「他に言うことはないんですか? こんなに可愛い娘がいるのに」
「君は可愛い。いつ見ても可愛い」
「褒めすぎです。褒めすぎて嘘っぽく聞こえます」
「本当に可愛いんだ」
彼は頷きながら、そう言って私の頬に触れた。
「この服は大人に見えちゃダメなんですよ。あなたには少し子供っぽさを出してもらわなきゃバレますよ」
「子供っぽさ?」
「そうですね。少し着崩しましょうか? 首元のボタンを開けて、カーディガンは萌え袖にしましょう」
そして私はセットされた彼の髪の毛をボサボサにする。
その後、整えた。
「マッシュ?」
「そうですよ。今、若い男の子に大人気のマッシュヘアーです」
「おっさんが、してもいい髪型なのか?」
「カッコいいですよ」
「そっ、そうか。それなら行くか?」
「はいっ!」
「子供だな」
「今日は子供でいいんですよ」
それから私と彼は私の友達と合流し、歩いて葬儀会場へ向かった。
友達が友達を呼んでくれて三十人くらい集まった。
葬儀会場へ着くと、私達は目立ってしまう。
それは想定済み。
だから彼も、ボディーガードの方もバレないようになりきってもらわなきゃ。
「あんなに高校生が来るなんて、会長は顔が広かったんだろうね」
参列者のヒソヒソ声が聞こえてきた。
良かった。
みんな騙されているみたいね。
私達の学生服へ変装大作戦は大成功だよ。
学生として行けば、みんな同じ顔に見えるでしょう?
制服も髪型も大勢が同じだと見分けがつかないでしょう?
「おじいさんの所へ行って、お顔を見ましょう」
「そうだな」
私と彼はおじいさんの顔を見に行く。
私は、おじいさんの顔を見て驚いた。
おじいさんを私は知っている。
「嘘。おじい、、、さん」
「ごめん。言わなくて」
「えっ、知ってたのですか?」
「ごめん。帰ったら全てを話すよ」
「はい」
私は、おじいさんを知っている。
お母さんの会社の常連さんだった。
おじいさんは優しくて私とも遊んでくれた。
だから私とお母さんは、おじいさんとご飯を一緒に食べたり、たまに家に泊めたりしていた。
大好きだったおじいさん。
私の目の前で眠っている。
最後に会えてよかった。
「おじいさん。ありがとうございました」
私が、そう言うと彼が私の頭を撫でてくれた。
おじいさんにも撫でられたことを思い出す。
私の涙は止まらない。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
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