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みなそこの夢  作者: 幹まなと
【第一章】大陸一の審神者 華陀
7/10

希望という名の惑星

 “彼ら”シュバウル人は、かつて科学技術・医療・精神分野と、ほぼすべての分野において大いに進化し、繁栄を遂げた。人々は争うこともなく、すべてを皆で分かちあい共有していた。

 また、シュバウル人は医療分野の発展により驚異的な寿命を手に入れたという。ありあまる人生を営むなかで、彼らの多くは精神的に成長することを目指し、実際に悲願を達成した者もいるらしい。彼らの悲願とは、肉体から離れ、魂だけの存在として生きることだと云われている。

 しかし、そのように進化を極めて、果てしなく繁栄したシュバウルの星だったが、すでに星の寿命を迎えた今は遥か遠い追憶の存在となっている。この宇宙に存在するすべての物質に始まりがあるならば、終わりがあるのも必然のことわりである。それは、どれだけ進化を遂げようとも避けられない運命だ。シュバウルの星は自転する速度が少しずつ衰え、それにより星の生態系は大きく変わっていった。やがて生命体が住み続けるには困難をきたす環境となり、シュバウル人たちは星を離れる決断をしなければならなかった。その先のシュバウルは、星ごと粉々に散りゆく運命を待つのみだったからだ。


挿絵(By みてみん)


 そしてシュバウルの星を発ったのちに、たどり着いたのがこの惑星「パムゥ」である。

 草木が茂り、豊富な水に恵まれたこの星は、かつての故郷・シュバウルと少し似た景色であったという。だが、彼らがこの星に降り立つのは容易ではなかった。

 まず、すでに生態系ができつつあったこの星の動植物にとって、シュバウル人が体内に宿している細菌や病毒は非常に有害だった。仮に、シュバウル人がこの星の中を自由自在に歩き回ろうものなら、数年と経たないうちにこの星の生態系は乱れ、原住の動植物は絶滅の道をたどる危険があった。そうであったなら、惑星パムゥは早々に「死の星」と化してしまったことだろう。

 さらに、シュバウル人にとって惑星パムゥの酸素濃度は少々高かった。かつてこの星には酸素がほとんどなく、窒素と二酸化炭素が主な大気成分だったという。ところが光合成ができる微生物の誕生によって、惑星パムゥの酸素濃度は急激に上昇した。微生物の作る酸素と豊富な二酸化炭素、そしてラーヨウの光によって植物は大きく、また盛大に繁った。かつては皆無に等しかったこの星の酸素濃度は、酸素を作る微生物と盛大に繁る植物によって著しく増えた結果、今では高濃度となっている。

 そして、惑星パムゥにおける先住の動物がかなり巨大であることも、シュバウル人の移住を阻む要因であったことは間違いないだろう。これは豊富な酸素に加え、重力が比較的小さかったせいで、かくも巨大化した生物が現れたのだろうと推測される。

 そのままでは、この星に住むことができないとシュバウル人たちは判断した。そこで、この星の上空に停泊した宇宙船の中で、新しく生まれる子孫らの遺伝子を数百年の時をかけて少しずつ改良していった。シュバウル人は長い進化の末、すでに永遠ともいえる寿命を可能にしていたが、新しく産まれた子孫たちの寿命は、本来の長さのままであったらしい。急な遺伝子変化は多くの欠損を生んでしまうため、一世代で安易に大きく変えることはできない。そうかといって、一人ひとりの寿命を長くしてしまえば、限られた広さしかない宇宙船があっという間にいっぱいになってしまうからだろう。収容できる人数は有限なのだ。



 そして、ようやく降り立った地が、この大陸「パムゥ」である。その少し前までは、海底だった土地だ。この星にはほかにもいくつか大陸があるが、この大陸が選ばれたことには理由があった。

 最大の魅力は巨大生物、特に獰猛どうもうな肉食の類が比較的少なかったことだ。巨大生物が少ないのは、寒冷氷期が始まり、海洋の水位が下がったために新しく現れた大陸であったことが一番の理由のようである。

 しかし、元が海底であったため大地は固く、さらに海抜が低いために、決して住むのに適した土地とはいえない。なぜなら、数千年後に寒冷氷期が終わりを迎えれば、この大陸自体また水底に沈んでしまう可能性が高いからだ。しかし、増え続ける宇宙船の住民をいつまでも囲っておくわけにもいかず、最初の住処としてひとまず降り立たせることにしたのだという。

 以上のように捨て去れない懸念材料がありながらも、遠浅の海に囲まれたこの大陸は、寒冷氷期の時代にありながら暖かく、豊かな緑が広がる希望そのものであったに違いない。

 シュバウル人がこの星に移住すると決めた際、シュバウルの古い言葉で「希望」を意味する「パムゥ」を名前として星に与え、それはそのまま、シュバウル人の子孫が降り立ったこの大陸の名前となっている。


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